#1-58:違和感の正体
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【前話のあらすじ:ついに、魯国との国境、龍牙関に到着した衛国軍。開戦の結果は思わぬものに....】
衛国が誇る十五万という大軍勢が、魯国の国境線たる黒龍河を越えた。
眼前にそびえる武威城は、城壁が低く、守るに難く、攻めるに易き城であった。
衛国軍は背に黒龍河を据え、左右に鬱蒼と茂る森を捉えて、武威城の眼前の平地に布陣していた。
十五万。
その威は、今や、武威城の落城を確実なものにしているように思えた。
衛国軍は、維寿の中央軍を境に、左方に志文が率いる左軍、右方に韓忠が率いる右軍が布陣した。
「伝令!」
そう声を張り上げた伝令兵は、維寿からの命令を、志文に運んできていた。
「命を伝える。敵の練度および士気をはかるため、左軍は計三千で突撃をかけよ」
「拝命しました...」志文はそう言って、伝令兵に頭を下げた。
伝令兵が去り、葉旋や杜箭は志文の指示を待っていた。
「志文様!」宋燕だった。
「いくつだ?」「二万です」
宋燕の答えに、志文は少し違和感を感じていた。
「杜箭将軍、葉旋殿、二万という数が私にはどうにも解せませぬ...」
「確かに、「捨てる」とも取れるが、「守る」とも取れる微妙な数だな...」杜箭が口ひげをなでながら、少し唸った。
志文は言った。
「少なくとも、罠があることに間違いはないでしょう....でなければ、このような微妙な数を配するはずがありませんから...」
志文の言葉に杜箭と葉旋は頷いた。
「気をつけろ....」
出陣する葉旋に、志文はそう、声を掛けた。
葉旋ならば、万一の時も、うまく撤退できると踏んでいたが、それでもなお、嫌な予感がした。
葉旋は軽く笑って、出陣していった。
「突撃せよぉ!」 維寿の号令が響き渡ると同時に、三軍から三千ずつ、総勢、九千の兵が武威城に突撃を敢行した。
大地が唸り、気は震えていた。
武威城の守備兵は精強であった。
士気も練度も高く、城壁から、次々と衛国兵が叩き落とされていく。
至る所から、衛国兵の叫び声が聞こえていた。
(強いな....) 志文はそう思った。
そして、それと同時に、武威城に罠があることを確信した。
今や、武威城の城壁の低さゆえに、数人の衛国兵たちが城壁を登りきっては、中に入り込んでいた。
しかし、それゆえに、志文は罠があると確信したのであった。
(もし、捨て石にする気ならば、二万の兵にあそこまでの士気と練度は持たせないはずだ...逆に守り切るつもりならば、そもそも、二万より多くの守備兵を城壁に配するはずだ....)
志文は自身の懸念を杜箭と葉旋に知らせるように伝えた。
「伝令!」
伝令兵の内容を要約すると、維寿が武威城を落とせると踏んだため、更に左軍から七千の兵を援軍として向かわせるという内容であった。
志文は林業を呼んだ。
林業の知略は、羅清にも劣らないものであり、武威城の攻略が「容易である」という甘い空気に包まれた戦場において、志文と同じ冷たい違和感を共有している数少ない一人であった。
「林業……命を伝える。維寿将軍より、左軍から追加で七千の兵を援軍として城壁下へ向かわせよとの沙汰が下った」
志文の言葉は、氷の塊を吐き出すように硬かった。
林業の瞳には、一切の困惑も、あるいは盲目的な忠誠もなかった。
ただ、主君である志文が置かれている、軍法と直感の板挟みになった苦境を即座に察したようだった。
「七千……。承知いたしました」
林業は短く応じた。
志文は、林業の肩に強く手を置いた。
その手の震えは、恐怖ではなく、部下を死地へ送らねばならぬ将としての慟哭であった。
志文は、周囲に潜む維寿の目付たちの耳を避け、林業の耳元で囁くように、しかし断固とした響きを込めて告げた。
「……林業、いいか。突撃は形式だ。現場へ着けば、お前の判断で『うまくやれ』」
林業はその一言で、すべてを理解したようだった。
林業にとって、「うまくやれ」という曖昧な指示は、志文が彼に与えた最大級の特権――すなわち「独断による撤退の許可」であることを即座に理解したのである。
維寿の命令という絶対の軛から、志文は自らの責任において林業を解き放ったのであった。なにより、林業自身、この武威城が放つ「罠」の匂いを、その肌で明確に感じ取っていた。
林業は、ただ深く一礼すると、翻って馬に跨り、中央軍と右軍の各七千の援軍に続いて、七千の将兵を率いて猛然と前線へ向けて駆け出していった。
その背中を見送りながら、志文は胸が締め付けられるような予感に襲われた。葉旋を送り出した時のあの「嫌な予感」が、今や確信となって、彼の全身を蝕んでいた。
「突撃ィ! 続け、続けえぇ!」
維寿の、狂気じみた歓喜に満ちた号令が平原に木霊する。
三軍から繰り出された計二万一千の増援が、すでに満員に近い城壁下の狭隘な平地へと雪崩れ込んだ。
大地は悲鳴を上げていた。
十五万という巨大な機構が、知略という名の目に見えぬ糸に操られ、自ら絞首台の輪の中に首を突っ込んでいく。
武威城の守備兵は、城壁の上で依然として高い練度を見せつけていた。
彼らは、城壁に手をかけた衛国兵を機械的な正確さで突き落とし、あるいは城内へ入り込んだ者を確実に「処理」していた。
志文の懸念通り、彼らは負けているのではない。
城壁が低いという「弱点」を最大限に利用して、衛国軍の戦力を一箇所に惹きつけ、密集させ、機動力を奪うための「楔」となっていたのである。
(……。間もなく、この罠の『蓋』が閉まるだろう....林業、葉旋、生きて戻れ...)
志文は自身の視界が、急激に狭まったように感じられた。
その瞬間であった。
突如として、戦場を包んでいた喧騒が、一段高い地鳴りに上書きされた。
左右の鬱蒼とした森。
太陽の光さえ拒絶していたあの深い緑の帳から躍り出たのは、魯国の精鋭騎兵、計一万であった。
彼らは計算し尽くされた軌道で、密集する衛国軍の「退路」を文字通り薙ぎ払うように突進してきた。
「なっ……伏兵か! 後ろから来やがった!」 兵士たちの叫びが絶望に染まる。
しかし、それだけではなかった。
武威城の巨大な城門が、まるで獲物を飲み込む怪物の顎のように、重々しく、しかし滑らかに跳ね上がった。
そこから溢れ出したのは、鈍い黒光りを放つ重装騎兵二万。
「門から……二万だと!?」
前線にいた将兵の誰しもが、自らの目を疑った。
攻略しているはずの城内から、防衛のための歩兵ではなく、殲滅のための膨大な騎兵が現れたのだ。
城内に二万、森に一万、そして城門から二万。
志文が感じていた違和感の正体は、最初からこの平原で衛国軍を屠るために、合計六万という、予想を遥かに超える兵力をこの一帯に潜伏させていたのである。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついに武威城の将が判明します!!
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そっと一言:「更新が少し空いてしまいました.....すみません。.....実は、維寿は、猛将ではなく、智将の設定なのですが、それでも智将ゆえに、早く落とせば、後が楽になると思ったようです!!筆者も、さらにストックを貯めて、後を楽にしたいです(笑)」
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