第3話
「な、なぜだ……なぜ俺がこんな目に……」
デミウルゴス神は、神界の建設現場で膝をついていた。
目の前には、魔の森の 中心に広がる広大な敷地。
そして、その中央にそびえる巨大な建屋の骨組み。
――いや、骨組みどころか、ほぼ完成している。
なぜなら、彼はここ数億年分の神力を注ぎ込み続けているからだ。
「おい、デミ公! 手が止まってんぞ!」
怒号とともに、背中に衝撃が走った。振り返ると、そこには現場監督
――大国主大神が仁王立ちしていた。
手には、なぜか木製の張り手棒。
「ひっ……! 大国主大神様、これは、その……」
「言い訳すんな! お前の神力、まだ残ってるだろうが!」
デミ神は涙目で叫ぶ。
「でも、もう神力が……枯渇寸前で……」
「甘えんな! ほら、これ飲め!」
大国主大神が投げてよこしたのは、怪しげな瓶。ラベルにはこう書かれていた。
『強制神の基』――飲むと気分は最悪、神力は全快!
「……これ、絶対ヤバいやつじゃ……」
「ゴチャゴチャ言ってねぇで飲めぇぇぇぇ!!」
デミ神は震える手で瓶を開け、一気に飲み干した。
――うわ、まずっ! 胃が燃える! でも……力が……戻ってくる……!
その瞬間、大国主大神の張り手が飛んできた。
「よし、回復したな! じゃあ、次は結界だ! 侵入者の攻撃を十倍にして
跳ね返す“反射結界”を張れ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
デミ神は泣きながら神力を注ぎ込む。
時間は加速し、数億年分の労働が一瞬で過ぎ去る。
――いや、体感は地獄のように長いんだけどな!
「おーし、いいぞデミ公! やればできるじゃねぇか!」
「……はぁ……はぁ……これで終わり、ですよね……?」
「バカ言え! まだ尊本人への反射結界と建屋の内装が残ってんだよ!
電気・ガス・ネット環境完備だ!」
「ネット環境って何だよぉぉぉぉぉ!!」
デミ神の悲鳴が神界に響き渡った。
そして、数十億年後(※神界時間換算)、ついに神域は完成した。
魔の森の中心に広がる、広大な敷地と堅牢な反射結界。
その中央には、現代日本の豪邸を凌駕する建物がそびえ立っていた。
「ふぅ……終わった……これで、やっと……」
「終わりじゃねぇよ、デミ公」
「……え?」
振り返ると、大国主大神がニヤリと笑っていた。
「和解条件の第5項、忘れてねぇだろうな?」
「……第5項?」
「お前、これから日ノ本でバイト三昧だ。年間一千万稼いで、尊に送金しろ」
「な……何で俺が……」
「何でじゃねぇ! お前がやらかしたんだろうが! ほら、行くぞ!」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
デミ神の絶叫が、再び神界に木霊した。




