最終章 エンディング1
魔の森の中心地――かつては魔獣が跋扈し、死地と恐れられた場所。
今、その地は静謐に包まれ、畑の緑が風に揺れていた。
尊の屋敷は、異世界の理を覆す結界に守られ、穏やかな日常を刻んでいる。
だが、その静けさは、もう完全な孤独ではなかった。
引っ切り無しの訪問者 最初に訪れたのは、竜王エリオットだった。
五体投地の謝罪を経て、尊と和解した彼は、時折土産を携えて屋敷を訪れるようになった。
「神域の主よ、今日は干し肉と……例の酒だ。」
尊は笑って迎える。
「また来たのか。……まあ、座れ。」
やがて、その訪問は一人ではなくなった。白竜クローザ、青竜の戦士たち、竜族の従者が列をなし、
天空から舞い降りる。
彼らは尊の屋敷を「竜族外交の場」と呼び、時に宴を開き、時に農作業を手伝った。
そして、もう一組の常連がいた。
S級パーティー『剣と盾』――アクセル、エキドナ、タイガー、マリリン。
彼らは最初の訪問とは違い、魔の森の中心地へ向かう道中で、無駄な戦闘を避け、最短距離を駆け抜ける術を身につけていた。
「戦うより、食う方が大事だ。」
アクセルの言葉に、仲間たちは笑った。
ある日、屋敷の広間で、竜王エリオットとアクセルたちが同席した。
「お前たちが、あの森を踏破した人属か。」
エリオットの声は重く響く。
「そういうあんたが、竜族の王様か。」
アクセルが肩をすくめる。
視線が交錯し、次の瞬間、笑い声が弾けた。
「……まあ、飲もうぜ。」
「異議なし。」
杯が交わされ、言葉が交わされる。
戦士と王、異世界の人間と竜族――立場を超えた友情が芽生える瞬間だった。
訪問者たちは、ただ酒を酌み交わすだけではなかった。
「この畑、面白いな。」
タイガーが鍬を握り、土を耕す。
「魔力で雑草を焼き払うのは反則よ。」
エキドナが呆れながらも笑う。
竜族も負けてはいない。
「この作物……竜炎で熟成させれば、甘みが増す。」
クローザが真顔で提案し、尊が即座に却下する。
「やめろ、畑が炭になる。」
こうして、屋敷は笑いと活気に満ちていった。
尊は縁側に腰を下ろし、その光景を眺める。
――ここでの生活も、悪くないな。
残りの人生、気の合う飲み友達と過ごす。それも悪くない。




