第2話
天空を裂き、悠然と舞う影――古代竜エリオット。
その翼は雲海を割り、 陽光を反射して銀の稲光を放つ。
遥か下に広がる魔の森は、緑の海のように うねり、その中心に異様な輝きがあった。
「……あれが、神域結界か。」
低く呟いた声は、雷鳴のように重い。
「人の手で張れるものではない。竜族の魔力を束ねても、あれほどの規模は不可能だ。」
彼の瞳は深い蒼。そこに映るのは、黒竜族の若き竜が霧散した光景。
誇り高き一族が、 音もなく消えた。
「愚かだな、ソートレス……力で世界をねじ伏せる時代は終わったというのに。」
背後で翼を畳む白竜クローザが、静かに言った。
「王よ、竜族の誇りが彼らを盲目にしたのでしょう。」
「誇りか……それは毒にもなる。」
エリオットは雲を裂き、森を見下ろす。
「竜族は長きにわたり覇を唱えてきた。黒竜は力、紅竜は野心、白竜は知恵。だが――」
彼の声が低くなる。
「この結界は、我らの理を超えている。竜族の未来を守るため、手を出すな。徹底せよ。」
「御意。」
クローザは頭を垂れたが、その瞳に不安が宿る。
「しかし、紅竜族が黙っているとは思えません。」
「……だろうな。」
エリオットは深く息を吐いた。
「覇権を求める愚か者は、必ず動く。だが、その代償は――死だ。」
彼の視線は、結界の輝きに釘付けだった。
これは、神の領域だ。竜族の興亡は、ここで決まる。決して手を出すなぁ」




