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第5話
報告を聞いた瞬間、ヘラレスの胸に冷たい刃が突き刺さった。
「皇太子が……死んだ?」
声は震えていた。
だが、次の瞬間、彼の瞳に宿ったのは恐怖ではなく、怒りだった。
「待っていても、俺は死ぬ」
彼はゆっくりと立ち上がり、窓の外を見た。
荒れ果てた辺境、飢えた民、帝国の腐敗。
「帝国は俺を切り捨てる。責任を押し付け、処刑するだろう」
彼の拳が震えた。
「ならば……俺が生きる道は一つだ」
剣を抜き、鋼の音が部屋に響く。
「反旗だ。腐った帝国を焼き尽くす」
彼は救助隊長に命じた。
「ウィスを殺せ。証拠を消せ。俺たちはもう帝国の犬じゃない」
その夜、辺境の城に炎が灯った。
それは反乱の狼煙だった。
「待っていても死ならば、戦って死ぬ」
ヘラレスの声は、城壁に反響し、兵士たちの胸を震わせた。
帝都では、皇帝ヒトレルが何も知らずに笑っていた。
だが、地方では反乱の炎が上がり、帝国の威光は崩れ始める。
魔の森での皇太子の死は、帝国崩壊の序章に過ぎなかった。
――シラクサ帝国は、長い動乱の時を迎える。
それはまた、別のお話。




