第10話
グレタ王国王城、重厚な扉が閉じられた謁見の間に、緊張が漂
っていた。
探索者ギルドのグランドマスターが深々と頭を下げ、報告を始
める。
「陛下、魔の森の奥で異常が確認されました。S級パーティー
『剣と盾』が調査に赴き、帰還しましたが……中心部には、結
界が張られ、魔獣が排除されていたとのことです。」
国王は眉をひそめ、宰相がすぐさま問い返す。
「結界? 誰が張ったのだ?」
「不明です。ただ、彼らの話では、そこに一人の人間が住んで
いると……」
「人間?」
宰相の声が鋭くなる。
「魔の森の中心に、単独で?」
グランドマスターは頷いた。
「はい。彼は異質な存在で、魔獣を排除する力を持ち、結界を
維持しているようです。パーティーは敵意を示さず接したとこ
ろ、むしろ歓待を受けたと。」
謁見の間に沈黙が落ちる。
国王は玉座に深く腰を下ろし、重く言った。
「……魔の森は、我が国の防衛線だ。異変は脅威であると同時
に、均衡を崩す要因だ。」
宰相が進言する。
「陛下、方針を定めねばなりません。無闇に手を出せば、未知
の力を敵に回すことになります。」
国王は頷き、決断を下した。
「魔の森は従来通り扱う。周辺は警戒を強化し、ハイデル辺境
伯には国軍を派遣する。当面、防衛を最優先とせよ。」
宰相が筆を走らせる。
「探索は?」
「S級以外、奥地への立ち入りを禁ずる。中心部の情報は極秘
とし、漏洩すれば国家反逆と見なす。」
宰相の手が止まる。
国王はさらに低く言った。
「ハイデル辺境伯には真実を伝えよ。だが、何があっても中心
部の主に手を出すな。……そして、他言無用だ。」
宰相は深く頭を垂れた。
「御意。」
国王は最後に呟いた。
「均衡を守る。それが王の務めだ。」
こうして、王城の決断は静かに下された。




