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第三章

 朝、生徒たちが校舎に入る中、僕は靴箱の前で立ち止まり、手にしたピンクの封筒を見つめた。顔をつねって、夢じゃないことを確認した。


 封筒の封は桜の花びらのシールで、誰も気づいていないのを確認してから開けると、中には桜色の便箋が一枚。


「放課後、話したいことがあるから、桜の木の下に来てね。」署名はなかった。


 その一行を見つめ、心臓が速く打ち始めた。周りに気づかれないように確認し、急いで教室に戻った。


 教室に入ると、千姫が他の女の子たちと話していた。


 僕が入ると彼女は微笑んでくれて、またすぐに会話を続けた。その態度が、逆にわからなくさせた。


 その後、一日中、言葉を交わすことも目を合わせることもなかった。


 約束した通り三日間彼氏役を演じることになっているのに、なぜ千姫が僕に手紙を送ったのか疑問に思った。もし他に僕を好きな人がいるのなら、記憶がない僕にはどうしたらいいかわからない。


 放課後、千姫がちっとも動かなかったが。こっちは急いで荷物をまとめて教室を出た。


 桜の木の下で、風が吹き、ピンクの花びらが舞い落ちていた。僕はその木の下に立ち、心臓が自然に高鳴った。遠くから、見覚えのある姿がゆっくりと近づいてきた。それは千姫だった。


 彼女は制服姿で、白いシャツと紺色のスカート、髪は軽くまとめられていて、顔には少し恥ずかしそうな赤みが浮かんでいた。彼女は僕の前に立ち、顔を下げ、手を不安そうに絡ませていた。


「来てくれたんだ。」彼女の柔らかな声が風の中に溶けていった。


 僕はぼんやりとうなずいた。「誰がこんな手紙をくれたのか、ずっと考えてたんだ。まさか千姫とは思ってなかったよ」


 彼女は深く息を吸い、まるで勇気を出したかのように、僕の手を取って静かに言った。


「実は、ずっと伝えたかったことがあるの。あなたが記憶を失って、私たちのことを覚えていなくても、私にとってあなたは欠かせない存在なの。たった三日間の彼氏役で終わりたくない。もし神様が許してくれるなら、ずっと一緒にいたい。」


 彼女の声はわずかに震えていて、瞳の中には期待と不安が入り混じっていた。


 僕はその場で立ち尽くし、何も言えなかった。だって、僕たちは元々カップルだったんだ。記憶を失ったからと言って、関係が終わるわけがない。


 その時、僕が何かを言おうとした瞬間、千姫はふっと笑って、僕の手を放し、まるで先ほどの期待と不安が演技のように思えた。


「告白みたいなこと、やりたかったの。だって、昔は惠君が私に告白してくれたから。私も惠君に告白してみたいなあ。三日間の彼氏役してもらうからね、あまり深く考えないで」


 そう言って、彼女は僕の顔を軽くつついて、ポケットからはハート型のチョコレートを取り出した。


「これ、バレンタインのプレゼントだよ。遅くなっちゃったけど、もらってくれる?」


 僕は呆然としながら「ありがとう」としか言えなかった。


「でも、惠君、本当に変わってないね、むしろもっと純粋になった。女の子の演技にこんなに簡単に騙されちゃなんて~」


 彼女は手を背中に回し、ぐるっと一周してから僕に笑って見せた。


「こんな美少女に騙されても、構わないけどね。」


「も~う、女の子に軽々しく言っちゃダメだからね~」


 こうやって冗談交えながら、お互いは桜の木の下で笑いあった。

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