表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にんじゃ(笑)  作者: むらべ むらさき
2 初めての、ダンジョン探索!全然思うように、いかないんですけど!?
7/14

7 小鬼を退治!

「ゲヒヒ、ギヒヒヒッ!」


 相変わらず黒蜜のことを嘲り笑う小鬼に、黒蜜は半ばやけになって、苛立ちのままに殴りかかった!

 しかし左フックを繰り出そうにも右ストレートを繰り出そうにも、小鬼は黒蜜のロール『にんじゃ(笑)』の効果により、フワリフワリと回避を続ける。

 誰の味方なんだ、『にんじゃ(笑)』!


 良い加減頭に血が上った黒蜜は、乱暴に右足を振りあげ、蹴りを放った。


 『にんじゃ(笑)』は黒蜜に徒手空拳での戦闘を許さないので、この蹴りも攻撃にはなり得ない。

 小鬼は拳での攻撃と同じく、フワリとした挙動で後退した。


 しかしこの時、アクシデントが起こる。

 黒蜜愛用の運動靴が......蹴りの勢いのあまり、すっぽ抜けたのだ!


 すると......その時だ!


「グギャッ!?」


 黒蜜の足を離れた運動靴が、不自然に高速回転を開始!

 そして風をまといながら......小鬼の腹に、直撃した!




「グギギャーーーーーーッ!?」




 そして......明らかに、ステータス補正の乗った......大ダメージを、小鬼に与えたのだ!

 至近距離からまるで砲弾のような勢いで飛んできた運動靴を小鬼は回避することができず、直撃の衝撃で洞窟の壁面まで吹き飛ばされ、強かにその背中を打ちつける!


「グゲヘ、ギギ......」


 洞窟壁際で痛みに悶える小鬼を見つめながら、黒蜜は再度呆然とした。

 そして困惑しながらも......その思考は推測を積み重ねる!


 まさか『にんじゃ(笑)』の適正武器は、運動靴?


 さすがにそんな訳は、ないと思う。

 “運動靴”には『にんじゃ(笑)』と、関係する要素などどこにもない。

 でも......!


 黒蜜は意を決して......もう片方の運動靴も脱ぎ、それを右手に掴んだ。

 そして痛みを堪えて立ちあがろうとする小鬼へと駆け寄り......その運動靴でもって、小鬼の頭を殴った!


「ギギャーーーッ!?」


 すると、やはりその打撃も、効いたのだ!

 小鬼は血の代わりに赤色の魔力の靄を噴き出しながら、まるで金づちで殴られたかのような悲鳴をあげた!




 おそらく!




 おそらく、ではあるが!




 『にんじゃ(笑)』は......それを装備した姿が間抜けで滑稽であれば......その道具を武器として認め、ダメージに補正を乗せる!

 今回の場合は、それが運動靴なのだ!




 何故だかわからないが......その推測を真実であると確信した黒蜜は、近くに転がっていたもう片方の運動靴もひっ掴み、二刀流ならぬ二靴流で、小鬼に対する攻撃を開始した!


 右手の靴で、小鬼の左頬を殴り!

 左手の靴で、小鬼の右頬を殴る!

 そしてそのままの勢いで、くるりと左回転した黒蜜は......その回転にねじりを加え左腕の靴先で地面をこすり砂煙を巻きあげながら、よろめきたたらを踏む小鬼の顎目がけて......靴アッパーを繰り出した!


 その勢いたるや凄まじく、小鬼の体はその衝撃のあまり宙を舞う!


 突然の猛攻撃に訳が分からず、空中で目を見開く小鬼と、それを睨みつける黒蜜。

 お互いに主観的時間の速度が極度に遅延した二人の、視線が交差する。


 そして。


 黒蜜はそんな小鬼に......右手に持った靴を......思いきり投げつけた!

 風まとう砲弾と化した黒蜜の運動靴は狙い過たず小鬼の腹を直撃し、そして!


「グギギャーーーーーーッ!?」


 小鬼の体をさらに打ち上げ、洞窟の天井へと叩きつけたのだ!




「グ、ゲヒ......」


 その後、天井から落ちて来た小鬼は、もはや満身創痍の状態だった。

 小鬼は一言二言、うめき声をあげた後。

 その全身を赤い魔力の靄と“魔石”に変じて、姿を消した。




 ダンジョンに出現する魔物はそのほぼ全てが“魔構生命体”と呼ばれる存在であり、討伐後は魔石と呼ばれる核を残して、消滅するのだ。

 今、黒蜜がおもむろに拾い上げた真っ赤な宝石が、魔石である。

 小鬼程度の魔物であればそのサイズは小指の先よりも小さいが......強力な魔物であればある程その魔石のサイズは巨大化し、価値も高くなる。

 魔石は様々な魔道具等の動力源となるため高価であり、それ故に探索者の主な収入源となるわけだ。


 さらには、小鬼の遺骸が姿を変じた赤い靄も、探索者にとっては重要な成果物である。

 この靄は、純粋な魔力の一形態であると言われている。

 探索者はこの魔力を魂に取りこむことで、その位階をあげることができる。

 端的に言えば、レベルアップして強くなるのだ。


 今も。


 小鬼であった赤い靄が黒蜜の全身にまとわりつき、その肌から吸収されている。

 それは、時間にして数秒程の出来事であり......小鬼の魔力を残さず吸いつくした黒蜜は。


 己の魂に、明確な成長が生じたことを、直感で理解した。

 レベルアップしたのだ!


 そしてさらに、黒蜜は言葉では表現のできない、謎の違和感を覚える。

 慌ててステータス画面を開くと、そこには......。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


氏 名:影山 黒蜜


レベル:2


ロール:にんじゃ(笑)


スキル:フトンの術(1/1)


ランク:F


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 【フトンの術】という、見覚えのないスキルが表示されていたのだ!




 ......え、“フトン”?


 “カトン”じゃなくて?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ