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心配


 放課後のハーレム部、部室。壁にはロックのポスターや子猫のカレンダーが張られており、また棚には手作りであるウサギのぬいぐるみや少年漫画などが並んでいた。部屋の中央には長方形のテーブルがあり、部員分のパイプ椅子がにぶく光っている。小さな食器棚には、紅茶のセットが置かれており、小型テーブルの上にはポットがある。三人掛けのソファーもあり、ここは本当に部室なのか?という風情である。

 港が引き戸を開け入ってきたところ、そこにはソファーに寝転がり教科書を読むシソジロウの姿があった。港はぺこりとシソジロウに向かって、頭を下げた。シソジロウは教科書を向いたまま、返事だけを返す。


「あの、他の皆さんは」


 炉々子はコンビニまで菓子を買いに行き、天は教室を出たきり消息不明。ゆらぎは風邪で学校を休んでいる。というわけで、今部室にいるのはシソジロウと港だけだった。港は眉をひそめると、雪花について尋ねる。


「雪花は休みだ。たぶん、弟の看病だろうな」


 雪花には入院中の弟がいた。そして、今は病状が良くないらしく、雪花は週に一~二回、学校を休んで弟の看病をしに行っているのだった。それ以外の日も、ハーレム部に顔を出してもすぐに帰ってしまうことが多かった。雪花はハーレム部の仲間たちに心配をかけまいとしているのか、聞いてもはぐらかしたりしてばかりいるが、きっと弟の見舞いに行っているのだろう。港は深刻そうにうつむいた。


「雪花先輩……弟さん、大丈夫かな」


 その上、今は中間テスト前だというのに雪花は身体を壊したりしないだろうか。心配そうにする港にシソジロウは言った。


「テストなら、俺が対策ノートを作ったし。アイツはなんだかんだ要領が良いから問題ないだろう」


 そういうシソジロウだったが、どこか冴えない顔だ。港はシソジロウに紅茶を淹れるか尋ねた。シソジロウはうなずく。窓の外の空は鈍色に曇っていた。

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