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夏休みの課題

 夏休み。それと切っては切れないものがある。


 蝉がけたたましく鳴く、真夏の昼さがり。八月に入って幾日が過ぎたある日。


 某マンション。某階、某号室。某美少女の部屋。

 扇風機の回る熱気がむんむんとした部屋の中で、美少女たちとシソジロウはいた。四人がけのローテーブルに向かい、頭を抱えながら課題と格闘する雪花。隣に座る港は毎日こつこつと課題をこなしていたので困ることはあまりないのだった。とはいえ、難しい問題は出る。課題の前でうなる雪花と港に救いの手がさしのべられた。


「わからないところがあったら私に言ってくださいね」


 おっとりと微笑むゆらぎ。その微笑みには癒やし効果がある様だ。

 雪花たちは自然と笑顔になると、ゆらぎに尋ねるのだった。


 天は学習机の椅子に腰掛けて本を読んでいる。課題は夏休みが始まって数日で終わらせてしまったらしい。

 炉々子はベットに寝転んで、おもちゃで遊んでいる。本人は夏休みが始まって以来、課題のことなどすっかり頭から抜け落ちている様子であった。

 ローテーブルの前であぐらをかいたシソジロウは炉々子を見やる。


「炉々子。課題はやらなくていいのか」

「うーん、やるぅ」


 そういってベッドから降りた炉々子だったが、ふと嬉しげな声を出す。


「そうだ!ぷるピアのお菓子があったんだった!とってくるね!」


 そういい、部屋から出て行く炉々子。シソジロウたちはそんな炉々子を見送ると苦笑した。その訳はというとこの部屋にある。ここは炉々子の部屋なのだが、見渡す限り、部屋の中はおもちゃであふれかえっていたのだ。これには流石のハーレム部員たちも困惑する。


「炉々子先輩の部屋って、すごいんですね」


 初めて炉々子の部屋に訪れた港は圧巻といった風に呟いた。天はじっとおもちゃを眺めながら何でもなさげに言う。


「……私たちが以前遊びに来たときはこんなおかしな部屋じゃなかったわ」

「ろろっちゃん、いいなぁ。冬にもこーゆーの買ってあげたいよ」


 可愛らしいぬいぐるみにピカピカと光るおもちゃに精巧な人形。この部屋を占拠するおもちゃの数々は女児ならば大喜びするであろうものばかりであった。

 ゆらぎはこの部屋にあるおもちゃは、ゆらぎの妹も見ているぷるピアというアニメ番組の商品なのではないかと言った。

 シソジロウはそれらをうさんくさげな目つきで眺めていた。

 そこに、ダンボールを抱えた炉々子がやってくる。


「うんしょ。うんしょ。はい、これ!ぷるピアのお菓子!」


 ダンボールの中にはわんさかとスナック菓子が入っていた。箱買いというやつだろう。炉々子は全員にスナック菓子を手渡すと、満足げに笑った。


「いっぱいあるから欲しかったら言ってね!ふー、暑い!」


 シソジロウはうっすらと笑いながら、そんな炉々子を眺めていた。


「暑いなら、ちょうど良いゲームがあるぞ」


◆◆◆

◆◆◆


 カーテンの閉まった部屋。ろうそくが灯る薄暗い室内で淡々とした声色で語る天。


「……男の足には手のアザがくっきりと残っていたそうよ。それも、ちょうど子供の手の大きさのが無数にね」

「ひぃいッ!」

「こ、こわいよぉお~……」


 港は悲鳴を上げるとベットのシーツに頭からすっぽりとくるまる。

 シソジロウの発案した涼しくなる真夏の遊びといえば、決まっている。これは怪談ゲームだった。

 丸まる港の隣では炉々子がガタガタと震えながら、ゆらぎに抱きついていた。

 ゆらぎはくすりと微笑むと炉々子を抱きしめる。


「炉々子さん。大丈夫ですよ」

「ゆらぎちゃん……!」


 優しい言葉に安心しかけた炉々子だったが。


「次、ゆらぎの番だぞ」

「あれは私が学校帰り、駅のホームに立っていた時のことでした……」


 瞬間、人が変わったように冷たく低い口調で話し出すゆらぎ。炉々子は悲鳴を上げるのだった。

 港は涙目になりながらシソジロウの肩を揺する。


「し、シソジロウ先輩!!もうこんなの無理です!!止めさせてください~!!」

「そうだよ~!!シソジロウ~!!」


 シソジロウは阿鼻叫喚の炉々子と港に肩を揺すられながら、小さく笑うと呟いた。


「ふー、やれやれだぜ」



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