校外活動
じりじりと照りつく太陽。熱い砂浜。たくさんの人波……そして、海と美少女。
夏休みが始まり、数日。ハーレム部員たちは、校外活動と題して海水浴場に来ていた。
「だれが一番乗りか競争ね!」
「あー!ずる~い!」
「うふふ、待ってください」
砂浜に足跡を残して、海に向かって駆けていく水着姿のハーレム部員たち。その胸は一部の者たちをのぞいて激しく揺れている。それは、周囲の男性客の視線を釘付けにするには十分な効果を発揮したのだった。
水着姿のシソジロウはパラソルの下、例の運転手にうちわで扇がれながらその様子を眺めていた。
「いやぁ、お嬢さん方はやっぱり目立ちますねぇ」
美少女たちのグループは、一人いるだけでも目を惹くというのに五人も揃えばすさまじい存在感と華やかさを放っていたのだった。シソジロウはかけているサングラスを上げると目を細めた。
「当たり前だ。俺のハーレムだからな」
◆◆◆
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砂のお城を作る炉々子と港。炉々子はにこやかにみりえるの人形を城の側に置く。
「よーし、完成っ。みりえるちゃん、やったね。お城が出来たよ」
そんな炉々子を港は微笑ましげに見つめる。
「そのお人形、お気に入りですね」
「うん!ずーっと、大事にしてるんだよ!わたしの宝物なの!」
ずっとと言ってもせいぜい十日ほどなのだが。作りがやけに精巧なその人形は、今は砂だらけだがおままごとにもちいるというよりも観賞用にするのが正しく思えた。炉々子は子供用のバケツを持つと立ち上がる。
「水くんでくるね!みりえるちゃん持ってて!」
そう言われ、人形を渡される港。去って行く炉々子を眺めた後、興味深げに人形の腕を動かす。
「良く出来てるなぁ」
その時だった。
ぽろり、と人形の腕が外れる。
「――――――!?」
声もなく悲鳴を上げる港。慌てふためきながら、周囲を見回す。
「せっ、接着剤!接着剤!?」
そんなもの、海にあるはずがないのだが。
すると、そこにバケツを持った炉々子が帰ってくる。
「ただいま~」
「ろ、炉々子先輩!?お、おかえりなさい!!」
さっと背後に人形を隠すと叫ぶ港。炉々子はきょとんとして港を見る。港は冷や汗を滝のように流していた。
「港ちゃん、どうしたの?汗びっしょりだよ?」
「あ、暑いから!暑いからです!」
「そうなんだぁ。夏だもんねぇ」
と、炉々子は笑顔で港に手を差しのばす。
「みりえるちゃん、ちょうだい」
「そ、そ……の……」
「?」
港にとっては万事休すだった。
すると、その場に明るい声が降ってくる。
「ただいま~買ってきたよ」
そこにいたのは海の家で買ったかき氷などを持った雪花たちだった。「かき氷!」瞬間、炉々子は砂のお城など目もくれずにかき氷めがけて走って行く。
港はほっと息をついたのだった。
「はい、ろろっちゃん。宇治金時ね」
「わ~い!ありがとう!」
「やっぱり、海といえば鍋焼きうどんですね」
「そんな連想をするのはイカれた人間くらいよ」
美少女たちがわきあいあいとしていた時だった。
「うっわ~可愛いなぁ!」
突然、声がかけられたのだった。そちらを向く鍋焼きうどんを持ったゆらぎと天。そこにいたのは、今風のチャラチャラとした水着姿の青年四人と……同じくどこかすかした雰囲気を持った小学生男児だった。青年は美少女たちに近づくと自信をにじませて言う。
「ねぇ、俺らと遊ばない?」
美少女たちはまたか、と言った風に肩をすくめる。美少女たちはこの海でもう何十回となく様々な男性に声をかけられていたのだった。
美少女たちが断ろうと口を開きかけたその時だった。
全員の背後から不遜な声がした。
「俺の女たちになにか用か?」
そこに立っていたのはシソジロウだった。美少女たちはシソジロウの登場に安心したように微笑んでいる。青年たちは、シソジロウの発した言葉の意味を掴みあぐねている様子だった。
「俺の女たちって、どういう意味だ?まさか、彼女たち全員と付き合ってるわけじゃないだろ?」
「そのまさかだ」
「この美少女、五人全員と付き合ってるだって!?う、嘘だろう!?」
青年たちは唖然とした表情でうろたえる。シソジロウはふっと笑うと言った。
「嘘か本当かはお前らの目で判断するんだな」
そういうと美少女たちはシソジロウの身体にこれ見よがしに抱きつく。……その様子はまさに王者の風格がただよっていた。
「コイツラは、俺のハーレムの一員だ。ナンパなら、よそでするんだな」
シソジロウは余裕綽々に言い放つと美少女たちとその場をあとにする。
青年たちは羨望と怨恨のこもった目をシソジロウの背中に向けるのだった。
……そして、移動中のこと。
「ゆらぎ先輩……少し、胸をシソジロウ先輩に押しつけすぎではありませんか?」
「港さんこそ……どさくさに紛れて手を繋ぐなんてずるいです」
普段は控え目だがここぞという時には大胆な港と、おっとりとしながらもそこそこしたたかなゆらぎ。
シソジロウの右腕でばちばちと火花を散らすのだった。
そして反対側では。
「ろろっちゃん、なにしてるのかな~?」
「シソジロウにぎゅっとしてるだけだよ?」
「この幼児は……恥じらいというものがないのかしら」
前からシソジロウに抱きつき水着で密着する炉々子に雪花と天が不快感を表していたのだった。炉々子の行為は、無邪気さからの行動だからこそとてもじゃないが真似することの出来ない二人は羨ましさと苛立ちがつのるのだった。その雰囲気は非常にギスギスとしている。
シソジロウはため息をつくと呟いた。
「ふー、やれやれだぜ」




