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テスト勉強


 ハーレム部、部室。この日の部室はいつものわきあいあいとした空気から一転し、静かにペンの音だけが響いていた。

 期末テストが迫っているためだ。この日のハーレム部員たちは二手に別れて、勉強会が行われていた。


「そこ。さっきと同じミスね」

「ひっ……すみません」

「何度同じ間違いをくりかえせば気がすむのかしら?それに問題を解くのが遅い」

「すみません……気をつけます」


 港は涙目になりながら、天の指導を受けている。その気がない人間にとってはただのスパルタ教育だが、マゾにはたまらない口責めではある。おそらく港はマゾではないだろう。

 ちなみに天のテスト順位は入学してから不動の学年一位だ。とはいえ、教え方は非常に高圧的であり、教わる方……特に港は萎縮し切ってしまうのだった。

 そして、港はというと十人並みで平々凡々の成績である。


「ぷるぷる~ピアピア~二人は親友~」


 歌を歌いながらノートに落書きをする炉々子。その様子はどう見ても小学生そのものだった。炉々子の成績はむらっ気があり、良い時は良いが、悪いときはとことん悪いのがいつものことだった。天は目元を鋭くすると、炉々子に冷たい視線を向ける。


「ご機嫌なのね?おちびさん」

「ぶぅ。おちびさんじゃないよ。天ちゃん」

「口ずさむなら歴史の年表になさい。その空っぽな頭にならよく収まるでしょう」

「空っぽじゃないもん!えーっと、いちごぱんつの織田信長!」

「炉々子先輩……ぱんつなんて叫ばないでください」


 一方、テーブルの反対側。ゆらぎと雪花は顔をつきあわせながら、教科書に向かっていた。ゆらぎは学年の五本指に入るほどの秀才であり、よくクラスメイトたちに教えをこわれているので人に教えることに慣れているのだった。一方の雪花は……お察しであるが、唯一数学だけは得意としている。


「~というのは、古人は草木や花など些細なものにも心を尽くして愛でたことを現しているんですね」

「へ~物知りなんだねぇ、ゆらっちゃん」

「ふふ、先輩ですからね」

「いやいや。あたし、先輩だけどみなっちゃんに教えられる自信ないよ?」

「じゃあ、先輩らしくなるために頑張って覚えましょうね」

「は~い」


 ふと、天とゆらぎの視線がかち合う。……二人の目線にはバチバチと火花が散っている。二人は静かに争っていたのだった。

 ところで、何故この勉強会が二グループに別れているか。それは、シソジロウのいつもの遊戯によるものだった。

 まずは指導者を決める。今回は天とゆらぎである。そして、指導者のもとに生徒になるハーレム部員たちが勉強を教わるのだ。


 題して『どれだけテストを頑張れるか』ゲームである。


 順位を上げ、頑張ったと見なしたグループには、シソジロウがツーショット写真を撮るというのだ。これには各ハーレム部員たちは燃え上がった。シソジロウとのツーショット写真を手元に置いておけること……それはハーレム部員たちにとっては非常に嬉しいことであった。ちなみに指導者の順位は今回のゲームの加点には含まれない。

 そんなこんな、ハーレム部員たちは必死に勉強にいそしんでいたのだった。


 そんな中、ガラリと部室の扉が開く。


「よぉ、頑張ってるか?」


 シソジロウである。ビニール袋をぶら下げ、ハーレム部員たちに笑いかける。雪花はホッとしたように笑うと伸びをした。港もほっとしたように息をつく。


「あ~良かった。休憩だぁ」


 シソジロウはテーブルの上に六本の缶飲料を置いた。


「しそっちゃん。今回のゲームはかなりキツいよ?」

「そうですね。ボク、もう折れそうです」

「はは、そういうなよ。ご褒美はちゃんとあるんだからさ。それより、飲み物買ってきたから好きなの飲んで良いぞ」

「気が利くなぁ。しそっちゃん。それじゃあ、しゅわっとしたの飲もうかな」


 そうして、ハーレム部員たちがそれぞれに缶を取る。皆、缶のプルトップに爪をかけて開けた……瞬間だった。


「えっ!?わわわっ!?」


 雪花の缶ジュースが噴水のようにわき上がり、雪花の身体をびしょ濡れにしてしまったのだった。胸元はすけすけになってうっすらと下着が透けている。雪花は赤面し困り顔になりながら胸元を隠し、シソジロウを見た。


「ちょっと、しそっちゃん。この缶、振ったでしょ」

「ああ。ロシアンルーレットだ。雪花は当たりだったな」

「当たってないから!も~、しそっちゃん、最低だよ」

「ふ……ふふふ……」

「?てっちゃん、なに笑ってるの?」

「……だって、その缶、見るからに膨らんでたのに。開けてしまうだなんて、とんでもない間抜けだと思って……あはは!」


 天は珍しく大笑いをしている。そんな天を見て雪花は笑顔のまま眉をひそめ、声のトーンを落とした。


「へぇ~、てっちゃんは気付いてたんだぁ?」

「ふふふ……!!開けた時のあなたの慌てっぷりったら。最高だったわ!いつもの余裕ぶった仮面がはがれたわね――わぷっ!」


 言い終わる前に雪花は天に向かって、缶ジュースをかけていたのだった。雪花は笑顔で天に言う。


「あはは!ごめんねぇ?手がすべっちゃった!」


 天はジュースをしたたらせながら、真顔で雪花を見ている。その胸元の下着は見事に透けていた。そして、天はすくっと立ち上がると雪花に向かって、缶ジュースをかける。


「!いけません」


 雪花を庇うように立ちふさがるゆらぎ。雪花の代わりにジュースにかかり……またしても胸元の下着が透けたのだった。

 天は、仕返しをして溜飲を下げたのか炉々子と港に言うと扉に向かって歩き出す。


「あなたたちは勉強の続きをしてなさい」


 その言葉を聞いたゆらぎと雪花は瞳をきらりと光らせるとつぶやく。


「そういうわけには……」「いかないよね」


 そういうなり、缶ジュースを炉々子と港にかけるゆらぎと雪花。こちらのチームに損害が出た以上、向こうのチームを無傷で返すわけにはいかないのだ。


「ひゃあ!?」

「冷たい!?」


 そんなこんな二人の胸元は透けた。炉々子は頬を膨らませると缶ジュースを手に持ち、思い切り振り回しながら言う。


「やったな~!え~い!」


 ……そのジュースはハーレム部員全員にかかったのだった。ハーレム部員たちは吹き出すと、笑顔になりどこぞの優勝祝賀会の様にお互いにジュースをかけあう。その様子は非常に楽しげだった。

 シソジロウはどこから持ってきていたのか、傘でジュースをガードしながら、目を細めて呟いた。


「ふー、やれやれだぜ」



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