パンツ
「下着の色で性格が分かるんだ」
ハーレム部、部室。長方形のテーブルに向かったシソジロウがそういうと、ハーレム部員たちはそれぞれの反応を示した。感心するもの、小馬鹿にした表情のもの、顔を赤面させるもの……そんな中、炉々子はわくわくとした声で言う。
「わたし、くまさん!」
「素直で人懐っこい性格だな」
「わぁ~すごい!よくそーだって、言われる!シソジロウ、超能力者みたい!」
天は毒づいた「たしかに詐欺師といった意味では似ているわね」シソジロウはとぼけた顔をすると、笑う。
「そういう天はどうなんだ?」
「知りたかったらミミズのように地面を這いつくばって見たら?社会的に、その後の一生をミミズ以下の存在として終えることになるでしょうけど」
ごそごそと机の下から音がする。天がそちらを見ると、這いつくばった炉々子が机から出てくるところだった。炉々子はニコニコと笑うと叫んだ。
「あのね、天ちゃんは黒だった!」
「!」
天はさっと赤くなるとスカートの間をおさえる。
「黒は向上心のあるエリートだな」
「ッ!この変態……!」
そんな中、ゆらぎがトレイに紅茶を乗せてやってきた。炉々子は目を輝かせるとゆらぎに突進していく。不思議そうに炉々子をみやるゆらぎ「?炉々子さん?」炉々子はゆらぎの背後に回り込むと、そのスカートをたくし上げた。
「……あら、あらあら……」
ゆらぎは赤面しながらもしっかりとトレイを手に持っている。たしかに、今暴れたりすれば、紅茶が周囲に飛び散る危険があるが大した胆力だ。
そして、パンツの色は上品なブラウンだった。
「母性的でおっとりとした性格。ふっ、ゆらぎにぴったりだな」
炉々子はゆらぎに注意を受けている。
「炉々子さん、熱い物を持っている時に暴れては危ないですよ」
「そっかぁ、ごめんね。ゆらぎちゃん」
「ふふ、いいんですよ」
注意するところはそこなのかと天は眉間にしわを寄せた。
港はうわずった声をあげながら、シソジロウに自己申告する。
「ボ、ボクのは水玉です……!」
「繊細な気遣い屋だ。意外な才能があるかもな?」
騒がしい部室内で、一人、ぼんやりとパイプ椅子に座る雪花。雪花は一週間ぶりに部活に出てきたのだが、あまり口数が多くない。そんな雪花におかまいなく、いつもと変わらない様子で質問する炉々子。
「雪花ちゃんは何色のパンツ?」
「んー今日は履いてない」
「!?」
ぽかんとする炉々子。シソジロウはくっくっと笑う。
「それは流石の俺も判断できないな」
雪花はあいまいな微笑みを浮かべると、再び遠い目をする。いつもの世話焼きで活動的な彼女らしからぬ態度だ。ハーレム部員たちはそんな雪花をそっとしておくことにした。シソジロウは時計を見た。不思議そうにシソジロウに尋ねる港。
「今日は予定でもあるんですか?」
「まぁな」
そういうとちらりと雪花を横目で見るシソジロウ。港はきょとんとしていた。
この日のハーレム部員たちはやることもなくまったりとしていた。そんな中、シソジロウは新しい遊びを考案する。……それは、とてもシンプルなものだった。
端的に言えば、履いているパンツを取り合うという遊びだ。大抵はとっくみあいになるだろうが、どんな手段をこうじても良し。まるでどこかの伝統スポーツのような潔さを感じさせるものであった。
「変態にしかできない発想というものかしら……驚きだわ」
天からの感想は辛辣だった。他のハーレム部員たちもやや困り顔をしている。
そんな中、シソジロウは景品を発表した。
「最後まで残ったヤツには今度の休みに下着を買いに連れて行ってやる。朝から晩まで一緒にいてやろう」
つまるところシソジロウとのデートだ。そして、朝から晩まで一緒にいるということは……シソジロウとの仲を進展させることが出来るチャンスがあるということだった。とはいえ、パンツの取り合いなどというハードな行いをやすやすと出来るものはそうそういないだろう。皆が二の足を踏んでいた……のだが。
その時、天が動いた。炉々子をソファーまで引っ張っていくと、押し倒したのだ。
「っ、天ちゃん!?」
天は炉々子の身体を押さえつけると、パンツを引き抜いた。天の手には、くまさんパンツが握られている。炉々子の顔は羞恥に染まった。
「そ、そんな、ひどいよぉ!」
「勝ちは勝ちよ」
シソジロウは楽しげに言う。
「天、一ポイントだな」
「えっ、えっ?」
事態が飲み込めていない港はパイプ椅子から立ち上がり、きょろきょろとあたりを見回すだけだ。そんな時、柔らかな声が港にかかる。
「港さん」
「は、はい……えっ」
気付けば、港のパンツは足まで下げられていた。水玉の女性物のパンツである。背後ではゆらぎが優しげな笑顔をしている。港は驚きと恥ずかしさで床にすっ転んだ。
「ふふ、ごめんなさいね」
そういうと港からパンツを取り上げるゆらぎ。港はぱくぱくと口を金魚のように動かしていた。雪花は自己申告だが、履いていないらしいので狙われることはない。
そうして、二人がこの場に残った。
「さっさと諦めたらどうかしら……?」
「ふふ、そういうわけにはいきません」
天とゆらぎは床に取っ組み合うと、壮大なレスリングを始める。様々なものが見えているのだが、美少女たちはパンツを奪い合うことに夢中で気にする様子もない。
シソジロウは献上されたパンツを眺めながら、ふっと笑うと呟いた。
「ふー、やれやれだぜ」




