盆終わり、肩の痛み
面白い話ではありませんが、練習で書いてみました。
盆休みの最終日、階段をのぼる音で俺は目を覚ました。時計を見ると、すでに昼の12時を回っていた。
おそらく階段の音の正体は父親だろう。お墓に祖父たちを送るため、俺を起こしに来たに違いない。
今日は日が昇るまで寝付けず、スマートフォンを触っていたのでまだ眠い。しかし、父親はしつこく俺を起こし続けるに違いない。
布団を顔まで被ると、案の定父親が部屋に入ってくる。
「墓行くぞ。起きろ。」
大きな声そういうと、俺は今起きたような演技をし、まだ眠いと言って再び布団に入る。
「いいから行くぞ。」
父はベットの上に座り、寝ている俺にプロレス技をかけてくる。
耐えられずにタップし体を起こすと、寝不足のためかだるさが襲ってくる。
もう一度寝たい。だが、墓に行かない限りまた父は起こしてくる。仕方なく俺は一階に降り、墓に行く準備をした。
祖母たちは着々と準備をしている。しかし、俺は眠気のためソファーに腰掛けていた。
すると、ふと仏壇が目に入った。その中上に飾られている写真が気になる。それは、俺が生まれる前に亡くなった祖父の写真であった。頑固で生真面目な人だとよく祖母は聞かせてくれた。
そんな祖父の写真と目が合った気がした。
「だらしない。情けない。」
そんなふうに言われてる気がして、俺は落ち着かなかった。
さあ、行こうと軽トラックに祖母と父が乗る。俺は玄関で靴を履いている時、ふと肩がやたらと痛いことに気がついた。
寝起きのプロレスのせいか?そんなことを考えていると、ふと先程祖父の写真と目が合ったことを思い出す。
それが無性に気になったのか、そのまま早足で軽トラックの荷台に乗り込んだ。
田舎道を走り、山の中にある墓についた。俺は水の入ったペットボトルとライター、線香を持って、猪対策の電柵を乗り越える。
すでに俺の家以外の墓には綺麗な花が供えられており、自分たちが最後とわかる。
祖母は花の長さを揃えるために茎を折り、色合いを考え、丁寧に供える。
俺は、父が火をつけた線香の束をもらい、墓に線香を供えた。
「じいちゃん、孫がきたよ。」
祖母は嬉しそうに墓に向かってそう言った。
「この下に、そのまま人骨が入ってたんだぜ。」
父は俺を揶揄っているのかそんなことを言い出した。
「そのままは入ってないよ。」
祖母が怒り気味に言う。
俺はふと、墓の下の石板に目を向ける。
しかしすぐに目を背け、ペットボトルの水を墓石にかけてやる。
鳥の鳴き声、風の音、虫の声で墓は賑やかであった。
「じいちゃん喜んでるよ。」
祖母は俺にそう言って笑った。
「そうかな。」
そう言うと、俺はそのまま荷物をまとめて墓を出る。そのとき、あることに気がついた。
墓に行く前に痛かった肩が痛くないのだ。
プロレス技の痛みが引いたのか、はたまた祖父が帰ったからなのか、不思議なこともあるもんだなと思い軽トラックに乗り込んだ。
帰り道、急に雨が降った。
荷台に乗っていた俺は車が止まるたびに濡れてしまった。