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第三話 大和撫子


「……これから学校だから」

「学校なんてサボっちゃおうぜ? 俺たちがもっと面白いところ連れて行ってやるからさ」


「……はあ……なんで私ばっかり――――」


 女の子のつぶやきが聞こえた。疲れたようななにかを諦めたような表情が気になって仕方がない。


 助けなきゃ――――両手を掴まれてカバンもガッチリ押さえられてるから、あれじゃあ逃げようにも逃げられない。


「あの、彼女嫌がってるんで放してもらっても良いですか?」

「あ”あ”? なんだテメーは――――うおっ!?」


 なんだ……何もしていないのに三人組が怯んで手が離れた? でも――――今がチャンスだ!!


 女の子の手を掴んで――――


「――――少し走るよ」


「ま、待てよ、お前――――その子の何なんだよ?」 

「彼氏だよ、わかったら二度と声かけないでくださいね、遅刻しそうなんで」 


 近くの自販機まで走った。


「大丈夫? 朝からあんな連中に絡まれるなんてついてなかったね」

「慣れてるから。でも、あんまりしつこいようなら痛い目に遭わせるつもりだったけどね」


 そう言って素早く拳を繰り出す彼女。


「へえ、避けないんだ……」

「寸止めするってわかってたから」

「そっか、キミ強いんだね」


 初めて見せた笑顔――――必死だったんでよく見ていなかったけど――――めちゃくちゃ可愛い。


 大きくて切れ長の目、長い黒髪が清楚な雰囲気に良く似合っていて、いわゆる大和撫子って感じの女の子だ。


「ごめん、もしかして余計なお世話だったかな」

「いいえ、さすがに三人相手は面倒だったから助かった。ところでその制服――――同じ学校だよね?」

「ああ、実は病気で休んでいたから今日が初めての登校なんだ」


「そう……。ところで――――そろそろ手を放してもらっても?」

「え? あ、あああ、ゴメン!!」


 手――――繋いだままだった――――恥ずかしい。



大和撫子(だいわ なでしこ)――――助けてもらって名を名乗らないのも失礼だから」

「なんか――――色々と惜しいね」

「……よく言われる。だから――――あまり好きな名前じゃない」  


 なるほど……たしかに毎回ツッコまれるのも疲れるだろうな……


 でも――――


「似合ってる――――()はその名前――――好きだよ」


 あ、あれ……? なんでオレ!? 


『同化によって私の性格が大河に影響を及ぼしているのだろう――――』


 マズい、ラキルの声が聞こえてしまったら――――


「そう……アナタ、わりと恥ずかしいこと――――真顔で言うんだね」


 あれ? ラキルの声は撫子さんには聞こえていないのか。ちょっと焦ったじゃないか。


「好きだと思うことを恥ずかしいなんて思っていないから――――俺は――――天野大河、よろしく撫子」

「……初対面で名前呼び――――?」

「嫌ならやめるけど――――」

「……別に構わないけど。なら私も大河って呼ぶね」

「ああ、もちろん好きにしてくれ」


 おかしい――――俺はこんなキャラじゃないんだけどな――――これもラキルと同化した影響……? よくわからない――――


「そういえば、あの三人組、なんで俺を見て怯んだんだろうな? まあおかげで騒ぎにならなくて助かったけど」

「自覚無いみたいだけど……大河の見た目が目立つからじゃない? 背高いし見た目もモデルみたいに整っているから驚いたんだよ」

「そうなのか? 撫子も驚いた?」

「……ちょっとね」

「えへへへ」

「……何照れてんのよ?」

「別に……なんか嬉しかっただけ」

「……変な奴ね」


 ヤバい……楽しい。こんな風に登校しながら話せる日がくるなんて夢にも思っていなかったから。


「それより――――学校初めてなんだよね、案内しようか?」

「良いのか? 助かるよ」


「気にしないで――――貴方を一人で行かせると色々大変そうだと思っただけだから――――」



『おい、見ろよアレ……なんで大和さんが男と歩いているんだよ……』

『本当だ!? 嘘だろ……彼氏いないっていってたのに……』

『畜生……一体誰なんだよアイツ、爆発しろ!!』


 うわあ……男子生徒の怨嗟の声がすごい。耳が無駄に良いから全部聴きとってしまう。ラキルの話だと慣れれば好きなレベルに調整できるらしいけど、今はまだ無理だ。


「ごめんなさい――――かえって悪目立ちしてしまったみたい」

「気にすんな、俺は撫子と一緒に登校出来て嬉しい」

「大河……メンタル強いね」


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