異世界転生して、初めて戦う盗賊の話~盗賊に盗賊はどこだ?と聞いた転生者の結末
「何をするって、盗賊を討伐するんだ。盗賊の居場所、知りませんか?」
「・・・そうか。それは、暇、いや、大変なこって」
・・・何だ。こいつは、俺はフランキー、盗賊だ。縄張りで、変な奴がウロウロしていると通報を受けたから来たが、
ヤバいなこいつ。見たことのない服装に、魔法杖か?変なものを持っている。
「20式小銃って言うんだ」
「その隣にいる子は?珍しいな。エルフの子供じゃないか?」
ビクン!
「主様~」
背中に隠れている。人見知りか?エルフの奴隷か?
「実は、僕は転生者でさ。森を歩いていたら、この子が泣いていたんだ。盗賊に両親がさらわれて、討伐に行くんだ」
「へえ、隠れ場所の検討は付いているのですか?」
「それはだいたい・・」
ツンツンとエルフは転生者の服を引っ張る。
「主様、関係のない人を巻き込んでは・・・ダメ」
「アハハハハ、まあ、悪い奴が隠れている所は、だいたい決まっているよ。じゃあ」
二人組は、去って行った。
・・・おかしい。
俺は一家の邸に戻って、すぐに、配下に確認した。
「お前ら、エルフを襲った奴はいないか?」
「え、今は季節じゃないでしょう?」
「盗賊をやるとしても近場ではやりませんよ」
「何故、貧乏エルフを?」
そうだ。収穫後、もう、麦を積んだ馬車は王都についたころだ。
収穫後、税を納める馬車を襲うことがあるが、それは、飢饉とかそういった時だ。
しかも、遠くの領地でやる。
うちの領主とは関係のない所でやる。
強盗?
するか。それは、盗賊ではなく、ただの犯罪者だ。
地元で悪さをする盗賊なんていねえよ。
盗賊は、民の中を泳ぐ魚、そんなことをしたら、密告されて領主に捕まるぜ。
もし、身内で犯罪者が出たら、速やかに、衛兵隊に引き渡すわ。
衛兵隊には全面協力、
ギリギリの所で成り立っているのが、俺ら盗賊稼業だ。
うちらの普段の主なしのぎは、
「頭目、そろそろ。農作業が終わったみたいです。賭場を開きますぜ。お客様から聞けばいいでしょう」
普段は、賭場の上がりで、暮らしている。
盗賊よりもこっちが楽だ。いっそのこと、こっちにしようと思っている。
「「「「いらっしゃいませ!!!」」」
「さあ、さあ、奥にどうぞ。お寒い中、農作業ご苦労様です!あつ~い紅茶をご用意しています」
「助かる~」
「土起こし疲れたぜ」
「丁半!」
「半!」「丁!」
「さあ、こっちは、ルーレットだよ。どの数に掛ける?!もしかして、あるかもよ!」
「エールいかがですか?エールは無料ですよ!」
集まって来たので、客に声を掛けてみた。
「なあ、あんた。エルフをつれている。けったいな奴知らないか?」
「あ、それは知らないけど、今日エルフを見たな。森で、エルフの集団がよ」
☆回想
ヒソヒソヒソ~
里の者が入る浅い森だ。エルフが集まって、ヒソヒソ話をしているのさ。
それで、珍しいなと思って、俺がジィとみたら、
弓を構えるのさ。
「毛無し猿、さっさと行け!」
「うわ。何だよ。いったい!」
・・・・・
「ってなことがあった」
「ほお、そこは、どこだ?」
「ほら、ゲジゲジ洞窟だよ。子供のころ。一緒に遊んだだろう」
「まさかぁ!」
俺は気がついた。
あいつは、エルフの生け贄に何かされる。
鬱屈とした森に住んでいるエルフは、人族を見下して、悪さをするって聞いたことがある。
「行くぞ!あの奇妙な奴は、騙されているかもしれねえ」
「待て、関係ないだろう」
「ほっとけよ。他所者なんだから」
「じゃかあしい。俺らの縄張りで、人族が騙されているんだ。エルフごときによ」
「でもよ。魔法を使うって聞いたよ。うちらは、剣と弓しかないよ」
ザワザワ~~
騒ぎに客も交じってきた。
南方出身か?褐色の肌、年の頃、20代後半、店内でもフードを被っている女魔道士リリーが、口を挟む。
「待ちな。そいつは、転生者よ。「じゅう」という武器を持っているかもしれないわね。ヒクッ。エルフは、それを狙っているのさ」
「お前は、酔っ払いのリリー!また、エールをただ飲みに来て」
「しかも、飲み物かわりのエールで、酔っ払うなよ」
「やめんか。ここに来た奴にはエールを振る舞う。それが、決まりだぜ。リリー話を聞きたい」
何でも、転生者、転移者って輩は、異世界からやってきて、不思議な能力を持っている。
彼らは、盗賊は洞窟にいるとの刷り込みがある?何故?意味不明だ。
洞窟は汚いだろう。
「こんなことがあったんじゃない?ヒック」
とリリーは、憶測を交えて話してくれた。
☆
『グスン、グスン、グスン、ウワ~~~ン』
『どうしたの?君は?』
『お父さん。お母さんたち。村人が人族の盗賊に連れ去られたの。奴隷としてエルフは価値があるの』
『許せない。僕が助けるよ』
『なら、貴方は私の主様です!場所は、洞窟です。いつも、奴らはそこを拠点にしています』
・・・・
馬鹿な転生者って
森で、エルフにあっても、無条件で助けようとする!
「馬鹿な。森のエルフは危険だ!」
「奴ら知らないのさ。だって、異世界から来たんだもの」
当っていると思う。リリーはこう見えても王都の学会にいたことがある。
どうする。この推理が当たっていたら、あの洞窟におびき寄せられた転生者は、道具を取られるだけならいい。今頃、生きたまま解剖されてたり。おもちゃにされているぞ!
「領主様館は、2日の距離・・・往復4日」
「村に駐屯している兵は、お爺ちゃんだし」
「しかも、『じゅう』は厄介だよ。見えない速さで、鉄の礫を飛ばすって、王都の学会であったよ。ヒクゥ、その転生者は、黒い杖みたいな物はもってたかい?ヒック!エルフに渡ったら、手がつけられないよ」
「見た!見た!」
どうする。万事休すだ。
「でも~、じゅうの攻略法は、確立されているのよ。ヒィク~、ウゲ~」
「うわ、はくな」
「リリー、頼むぜ!」
「猟師のヨブ爺さんも必要だよ」
「おう、呼んでくるぜ!」
☆☆☆洞窟
「ウゲ、ゲホ、もう、無理だよ。召喚できないよ!」
「毛無猿!お前の生命力を削って、もっとじゅうとやらを出せ」
「そんな。僕のパートナーになってくれるんじゃ。ゲホッ」
「王女フランチェスカ様、さすがに、毛無猿、限界です。もう少し、おいてから、召喚させましょう。
「じゅう」が10丁、玉、一万発です。これで、当座はしのげます」
「ふん。これで、数が多いだけの毛無猿を駆逐できるわ。まずは、この先の里の村を襲撃するわ」
「全くです。毛無猿は、見るだけで不快です。王女様、こいつと半日いたんでしょう?村に帰ったら、湯浴みの用意をさせましょう」
「全くね。その毛無猿には、ゲジゲジを食わせて、体力を復活させておけ」
「「「はい!」」」
その時、切り裂くような悲鳴が、洞窟まで響いた。
【ギャアアアアアーーーーーー】
「悲鳴?」
「見張りの悲鳴だ」
「襲撃だ。弓、いや、じゅうを出すぞ」
暗闇から悲鳴が聞こえる。姿は見えない。
木々の間から、黒い何かが叫びながらやってくる。
「グギャ、ギャアアーーー」
「ウゴ、ウゴ」
「撃て!」
バン!バン!バン!・・・・・
しかし、銃を撃っても、一向に止まる気配はない。
エルフたちは、逃げる機会を逸した。洞窟に立てこもる。
「何?何が起きている!じゅうとやらが全然効かない!」
「あれは、死霊です!冥界から召喚させる最上級の死霊術、ダークエルフがよく使う魔法です」
「痛みを感じない。アーミゴブリンや、一角グリスリーに、うううぅ、エルフの死霊も使ってます!全面にエルフの死霊を並べていますよ」
「何、何て陰湿な奴らだ!」
【あ~、転移者を速やかに渡しなさい。ヒィック。でないと、殺しちゃう、ウゲー】
「うわ。リリーよ。それ台無しだぜ」
「ヒィック、もう、既に無理矢理武器を召喚させている。ヒィック~転生者の救出は、時間が勝負さね。ヨブ爺さん。頼むよ」
「ほい、きた!」
爺さんは煙玉を洞窟に投げ込む。獲物が穴に入ったら、追い出す方法だ。
「「「「ヒィ」」」」
「おい、転生者を出せ。盾にする」
「もう、死んでる!」
「洞窟を出るぞ!」
エルフたちは全員、自らの先祖の死霊たちにかみつかれ、出血多量で亡くなった。
「今だ。布を口に当て、中に入るぞ!」
「「「「オオオオオオーーーー」」」
・・・・
チュン、チュン
「・・・助けられなかった」
「そうさね。ヒールを掛けたけど、生命力が枯渇している。奴ら、限界まで、召喚させたのよね。あんたのせいじゃないさね」
「フン・・・まだ、こいつ若いぜ」
「難儀だね。でさ、フランキーのおっさん。独り身じゃん。ヒィック、あたしゃ、惚れたよ。一日中邸にいて、エールを見張ってやるさね。どうだい」
「へん。そんなことしないでもエールはやるよ。借りが出来たからな・・・」
風が吹いた。フードが取れ。リリーの耳が見えた。エルフほどではないが、とがっている。
「おめえ、ダー・・・いや、どうでもいいわ。仲間だよ。王都の学会、嫌でここに来たんだろ?いつまでもここにいていいよ」
「エルフって、難儀ださね。半分だけさね。さあ、転生者の死霊を送ったら、飲み直しするさね!」
「おお、付き合うわ」
軍事チート能力者の多くは、異世界転生の初戦、盗賊と戦うが、もしかして、命を落とした者も多くいるかもしれない。
最後までお読み頂き有難うございました。
江戸時代の日本と、馬賊を参考にしました。