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この記憶の片隅に  作者: さんしあ
9/22

2-5

「ちょっと待ってよ… これ… 」


彩音が震えた声でそう言った。


「はっ… 馬鹿馬鹿しい… 」


茶髪の男はそういうと、椅子から立ち上がる。


「おい、どこいくんだ、トイレか?」


先ほどの女性が声を掛けた。


「これ以上付き合ってられねーよ」


そういうと、茶髪の男は会議室から出て行ってしまった。


「… これって… 」


そんな彼を横目に、僕はもう一度空中に浮かび上がったルールを確認する。

間違いない。

これからここで、殺人事件が起こると書いている。


「… 」


誰しもが沈黙していた。頭が混乱しているというのもあるだろうが、それ以上に、やはり

現実が受け入れられないようだった。


空中に浮かび上がった文字が消え、また新たな文字が表示される。


『それではゲームを開始します』


会議室に静寂が戻る。みんな、緊張感に満ちた表情でお互いに目を合わせた。


「と… とりあえず、何が何やらわからないけど… 一旦自己紹介する?誰がなんて名前から

すらわからないようじゃ、今後なにかあったときに困るからね… 」


の制服を着用した、黒いワンピースを着た女性が恐る恐る声を上げた。


「必要ない」


けれど、一番奥に座っていた男が断る。彼は、僕たちが会議室に入ってきたとき、真っ先

に口を開いた男だった。


「どうして?」


僕は咄嗟にそういってしまった。ギロリと睨まれる。ごめんなさい。


「… こんな人数、とてもじゃないが一気に覚えきれない。それに、どうせ生活していくう

ちに、自然と覚えるさ。すまないが、俺も失礼させてもらうよ」


そういうと、彼は立ち上がり、会議室から出て行った。


確かに彼の言うことも一理ある。とてもじゃないけど、いきなりこんなに顔と名前を覚え

るなんて出来っこない。


でも、僕が引っかかったのはそこじゃない。


なんだろう… 僕は違和感を覚える。


あの男の人… どこかで会ったことあるような… 。


彼が出て行ったことで、会議室は途端に静かになったかと思うと、彼が出ていくのを皮切

りに、一人、また一人と会議室を後にした。


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