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『小説を書こう』を初めて三週間。僕は変な人から感想をもらうようになった。
でも「書き手」として活動している以上、色々と体験することがある。
活動初期の話で、唯一僕に感想を書いてくれる人だった。
ここでは「百合」という仮名にしておこう。
百合さん。いつも作品に対しての感想じゃなくて、その人の私生活について書く人だった。「感想自体が一つの作品か?」と思うくらい、ドロドロとした感じの病んだポエムみたいなものを書く時も多かった。
どんどん重い感想になってきて、度を越えているような気がして「新手の荒らしか?」と思ったけど、どうしたらいいのか分からない。
でも、その時、僕自身が少し精神がおかしくなっていたから、よく病んだような作品を書いていた。百合さんは僕の作品に対して作品で返しているのかな、と思い、削除するのも悪かった。百合さんがどういう意図で感想を書いているのか、全く分からなかったから。
でも、ココが少し奇妙なところで、ポエムじゃない時。私生活について書いている時は、決して言葉遣いも荒いわけではないし、むしろどちらかというと「上品な女性」という印象を受けた。でも、淡々と説明するような文章で、怖い印象もあった。
なんで僕が「女性」というのかというと、「本当の年齢であるという保証」はできないが、感想を送るときに「年代情報」と「性別」を公開できるチェックボックスがあるだろう? そこに「30~40歳」と書かれていたから。
もちろん辞めてほしいと思っていた。でも、「書こう」に来たばかりで、どんな距離感で断ればいいのか分からないから、黙っていた。
そして、いつも通り作品を投稿した次の日、また感想が届いていた。
「どうやって返信しようか」と悩んでいた。ポエムなら、僕が「いいですね」みたいな感想を書けばいいけど、私生活だよ。どうして返答したらいいんだよ。
気分は乗らないが、返信はしないといけない。
「とりあえず、見ろ!」
そう言って、赤文字をクリックした。
「6P6V6,6V606KK.2P5K6K.V6(_)WM3V5」
アラビア数字とアルファベット。その下には「あと、2」と書かれている。
「んー? シーザー暗号……数字は『Leet』か?」
シーザー暗号は、決められた字数分ずらして復号する方法。「Leet」は検索避けや、強固なパスワード、暗号などに使われるインターネット特有のアルファベットの表記方法だ。「A」は「4」に、「E」は「3」に、という具合に。
「あと、2」は数字の「0~9」とアルファベットの「A~Z」までを二文字分ずらせということだろう。
メモに起こして、「Leet」の変換表をググって調べる。
「えっと……アナタ……アタマイイ。オネガイ。タスケテ」
僕は固まった。百合さんに何かあったのか?
でも、普段から少し変な人だ。これで僕が痛い目を見るかもしれない。
そう思って、ユーザページを更新すると、また感想が届いていた。
クリックすると、百合さんからだった。
あなた誰?
んー、って口をふさいでる。
ごう慢な人。
うるさい、うるさい。
わたしどこ?
すれた音、聞こえる。
レンジの音。チン!
て。あなたの手。
あたたかい。
な前も全部。消して。
ただの他人。
あさが来る。
ブラシで髪をとく。
なにも無かった。
いやだった。
「ああ、いつもの百合さんだ」
僕はいつも通り、執筆に取り掛かった。そういえば、二つ目の感想ってなんか変だな。なんで「傲慢」を「ごう慢」に。「名前」を「な前」にわざわざ変えているんだろう? 変換なら普通、全て漢字を使うものじゃないかな。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
P.S.
「シーザー暗号」の他に、もう一つベタなメッセージを隠しておきました。
もしその「メッセージ」を見つけた方。
怖かったでしょうか?