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落書き0031-0035

0031

私は人魚。


人なのか魚なのか。


海の底に住んでいる。


泡沫うたかたに消えてゆく。


私は人魚。



0032

目の見えてない君は何が見えている

耳が聴こえない君は何を聴いている

味が分からない君は何を感じている

匂いを感じない君は何を感じている

体が麻痺してる君は何を感じている



0033

誰だって独りだ。


私は貴方の考えていることが分からない。

貴方も私の考えていることは分からない。


いくら解かり合えたと思っても。

いくら解かり合えたと思っても。


本当の処は誰も判らない。


私は独りだ。


それでいい。


絶対に解かり合えないと分っているから。


だから私は貴方と一緒に居ることにする。


解からないから。


聞いてみる。


触ってみる。


愛してみる。


貴方を解かろうとしてみる。



0034

俺が偽物だとしても。

俺が本物だとしても。


それが、俺である理由にはならない――。



0035

久しぶりに兄さんに会いに行った。

僕らの顔は全然似ていないけれど、それでも双子なんだと云う。


勝手に玄関を開けて中に入ると、居間で兄さんがテレビを見ていた。


「久しぶりだね、兄さん。元気にしてた?」

「ああ、おまえか」


最近会っていなかったと云うのに、兄さんの返事は少ない。

こういう会話の端々にも、僕ら双子の性格が表れているらしい。


兄さんは淡泊だ。それは僕が子供の頃から変わっていない。

物事に対する執着心が、人よりも少ないのだと僕は思っている。


「何を見てるの?」


兄さんの視線の先には、二人の赤ん坊が映っていた。

病院のベッドの上で二人して遊んでいる。不思議と初めて見た気がしない。


「これは僕達の……?」

「俺はもう覚えていないがな」


どうやら画面の中で遊んでいる赤ん坊は僕達のようだ。

でも映っている赤ん坊は、どちらも同じ顔をしていて見分けがつかない。


「撮っているのは母さん?」

「…………」


兄さんはじっと黙ってビデオに見入っている。

僕の質問に兄さんは答えてくれなかった。

それは答えを知らないからなのか、ビデオに集中しているからなのか。


僕も黙ってそれを見ていると、やがてビデオも終わりに近づく。

二人の赤ん坊の内、奥に映っていた方がこちらに気付いて手を止める。


画面はその赤ん坊のアップになった。

真黒で純真な瞳が大きく見開かれて、画面の一点が映える。


――プツ、っとそこでビデオが途切れた。


場面は砂嵐に変わり、スピーカーからは不協和音が奏でられる。


「どうして見てたの?」


そんな疑問が口に出たのは、当然のことだったと思う。

ただその時僕は薄ら寒い予感に捉われていた。

だから、本当は聞くべきではなかったのかもしれない。


「――死んだんだよ」


――えっ?


その意味が分からず兄さんを見やる。この時初めて、僕と兄さんの目が合った。



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