表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

第25話 濡れたバニーボーイズ


鉄のかごは3人を乗せてゆっくりと地上へ浮上していく。


「…」


「「…」」


1人と2人は向かい合ったまま無言で互いを見つめる。主に筋肉の塊が1人いるせいでエレベーターはぎゅうぎゅうだ。


密閉空間で2人の香水が混ざった香りがサンチョの鼻をくすぐった。


「…」


「「…」」


3人の沈黙はなおも続く。


状況的にはこの2人はサンチョにいつ襲いかかってきてもおかしくはない。


ひ弱なアッラ=モーダならまだしも、この筋肉の塊と化したティアーモにこの距離で襲われたらひとたまりもない。


不意に親切にされたせいでなんとなく同乗を許してしまったが、これは明らかにサンチョの判断ミスだ。


だが、不思議と2人からは殺気は感じられない。


「…」


「「…」」


「…なあ」


「「?」」


沈黙に耐えられなくなったサンチョが堪らず声をかけると2人の視線がしっかりとサンチョの顔に向く。


その表情はどこか虚ろでホラーテイストだ。常人であれば失禁もののシチュエーションと言えよう。


「…襲わないのか?」


「ンだ?」「ダンテ?」


2人はきょとん、とした顔で首を傾げる。


「だってほら、その…今、チャンスだろ。俺を襲うなら」


「エレベターで暴れルちゃぶないデス」「そう。きケんがアブナイ」


「…」


2人から「エレベーターで暴れるのは危ない」とごくごく真っ当な指摘を受け、サンチョは押し黙る。奇妙な格好をしている変態たちのクセに妙なところで常識がある。


「まあ襲わないでくれるならそれでいいんだが…」とサンチョは呟いた。




チーン…


しばらくして、エレベーターが地上への到着を告げる。


扉が開き、3人がエレベーターから出ると


ザァァァァァァァ…


頭の上から突然ぬるま湯が降り注いだ。


「「「!?」」」


サンチョだけでなく、ティアーモとアッラ=モーダも面食らったように上を仰ぎ見…


「ぶぁ!?クソったれ、なんだぁ!?」


ティアーモが突然、我に返ったように叫ぶ。


どういう仕組みなのかはわからないが、その姿はいつの間にか元の180cmの背丈に戻っている。


先程までの奇妙な格好もいつの間にか白いTシャツに黒いスェットというラフな部屋着に変わっていた。


「…」


自身の手を見つめるアッラ=モーダの顔にも知性が戻っており、うさ耳のカチューシャはやはりいつの間にか消えていた。


「なんだってんだ。なんで俺はこんなクソみたいな場所でボケッとつっ立ってやがる。…おい、アッラ=モーダ、ブロ(サンチョ)、なにがどうなってやがる」


ティアーモが事情の説明を求めて喚き散らす。


「…ここはプール、か?」


ここが本館の西側にあるプールのシャワールームであることに気づいたサンチョはティアーモに尋ねる。


「ンン?…ああ、そうらしいな。だが、なぜ俺たちがここにいる?それもこんな格好で。俺には野郎2人と服着てシャワーを浴びる趣味はねぇぞ?」


「?」


「覚えていないのか?」とサンチョが口を開こうとした時、


「すまない、パパ。俺たちにも一体なにが起こっているかわからないんだ」


サンチョの言葉を遮り、アッラ=モーダが喋る。


「少しサンチョと一緒に原因を探らせてくれ」


「…だが」


なおも口を開こうとしたサンチョに対し、「これ以上なにも喋るな」と言わんばかりにアッラ=モーダが目で合図を送る。


そしてびしょびしょに濡れた白いスーツのポケットから通信機を取り出す。


「…もしもし、俺だ。パパを本館まで送ってくれ。…そうだ。今、西のプールにいる。…ああ、急いでくれ。詳しい事情は後で話す」


恐らく、部下とやり取りしたのだろう。


行方不明となっていたファミリーのツートップとファジャーノを探していた部下たちはものの数分で集まってきて、ティアーモとアッラ=モーダを見て安堵(あんど)の声を漏らす。


「ああ~!!パパァ~心配しましたよ」


「アッラ=モーダの兄貴、今までどこに」


「ファジャーノの野郎は?」


「流石サンチョ=パッソだ…」


様々な声を上げる部下たちに返事はせず、「話は後だ。パパを部屋まで護衛しろ」とアッラ=モーダは命令する。


「…おい、アッラ=モーダ。てめぇ、俺になにを隠してやがる」


アッラ=モーダの強引な姿勢にティアーモが違和感を覚え、睨む。しかし、アッラ=モーダは首を振り「なにも」と応える。


「パパ、これからサンチョと調べて、わかったことがあったら明日報告する」


「今日だ!」とティアーモは声を張り上げる。


「今日。何時でも構わねぇ。寝てたら俺を叩き起こしてでも報告しに来い」


「寝てるのに起こしたらぶん殴るくせに」と一同は心の中でツッコミを入れる。皆、何度このパターンでぶん殴られたか。


だが、付き合いの長いアッラ=モーダは彼の扱いを心得ているのか、「わかった」と頷く。それを見てティアーモは「約束だぞ」と念を押し、渋々と護衛たちとともに自室へと引き上げていった。






「…それで?」


護衛たちの気配が完全に遠のいてから充分に間を置いて、サンチョが口を開く。


「どういうことか説明してくれ」


「ああ」


アッラ=モーダは覚悟を決めた顔で頷く。


「もう隠しても無駄だろう。…全て話そう。ヴィオレンザ=ファミリーになにが起きているのかを」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ