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9:バレー部エースの食事事情を知る

 ご覧頂き、ありがとうございます♪



「よ、よう小清水、き、ぐ偶然だな」


 入口を入って突き当たりのパンコーナーで商品を選んでいた凛子に英太は自然を装ってそう話しかけた。

 入店前の咳払いは何だったのか。結局、緊張してしまい声が裏返ってしまい、どもってしまった。


 不意に名前を呼ばれた凛子はすぐに振り向いた。


「……? 英太?」


 凛子が振り向くと金色に輝く髪がサラリと流れた。

 7:3で分けられた前髪の少ない方、左側を耳にかけると可愛らしい耳が覗いた。


 高校指定のセーラー服姿。バレー部の刺繍が施されたスポーツバッグを肩からかけている。

 

 一瞬驚いた表情を作った凛子だったが、声の主が英太だと分かると緊張を解いて肩をすくめてみせた。


「確かに偶然だけど、なんでそんなに声うわずってんのよ?」


「は、ははっ、何でだろうな」


 その理由は言わずもがななのだが、わざわざ言う事では無いので黙っておく事にしたようだ。


 その中途半端な答えを聞いた凛子はアゴに手を当てて、少しだけオーバーに言う。


「ふーん? てかどうしたのよ、こんな所でこんな時間に…………って、まさか私をつけて……? ダメよ英太。私の事好きなのは分かるけど後をつけるような真似したら〝メ〟よ」


「いやいやまだフラれた事を自虐で笑い飛ばせるような時間じゃないから」


 まさかフラれた相手にフラれた事をいじられるとは思っていなかった英太は思わずツッコんだ。


 それに気を良くしたのか、凛子は続ける。


「気持ちは嬉しい。確かに学校帰り、こんな遅くまで部活をやっていた私を呼び止めるでも無く後をつけ続けて、家までついていこうかと思っていたけど、我慢出来ずにコンビニで声をかけてしまったのね。でもちょっと重いかしら」


「いや、〝ちょっと重い〟で済むか、それ? ってか、違うから。てか自虐で笑うにはまだ早いって!」


「ふふふっ、ごめんごめん。本当のところはどうしたの? ここで会うの初めてよね?」


「消しゴムを買いに来たんだよ」


「こんな時間に消しゴム? 勉強熱心ね。私ならこの時間に消しゴムが切れたら諦めるわよ。色々と」


「色々と諦めるなよ。俺のじゃなくて妹のな」


「妹さん居るんだ? 確かに英太、お兄ちゃんっぽいもんね、ふふっ」


 そうして凛子は、サファイア色の目を細めた。


 たったそれだけの仕草なのに英太は凛子の表情に釘付けになってしまった。


 お兄ちゃんっぽいって言うのは頼り甲斐があるとか、そんな意味なんだろうか……?


 凛子としてはそこまで深い意味で言ったわけでは無いだろうが、それでも英太はその言葉を必要以上に深読みしてしまう。しかも自分の都合の良いように。


 少しおめでたい気もするが、英太は思春期真っ只中の15歳。

 好きな女の子が発した言葉に一喜一憂するのは至極当然な事かもしれない。


 凛子の不意の一言にときめいてしまい瞬間的にトリップしてしまっていた事に気づく。


 紅潮しているのが自分でもわかってしまい、さらに顔が熱くなる。

 このままでは自爆する。そう思った英太は顔と、さらには話を逸らした。


「そ、それで小清水はこんな所でどうしたんだ?」


「ん? ああ。見ての通り夕ご飯よ。それと朝ご飯もついでにね」


 そう言って凛子は買い物かごを掲げて見せた。


 カゴの中を覗くとプロテインドリンクとサラダチキン、それと何個かの菓子パン。


 少々栄養素が偏っている様に思えてしまったが、言っても仕方ないし、たまたまこれが食べたかっただけで普段は栄養バランスに気をつけているかも知れない。


 小うるさくなるのも躊躇われたので英太は話を進めた。

 

「夕ご飯って、小清水は寮だよな? 飯出ないのか?」


「厳密には寮じゃないの。普通にアパート借りて一人暮らし」


 青葉高校は何処にでもある普通の高校。部活動もそこまで突出して強い部があるわけでは無い。

 

 しかし毎年何人かはスポーツ推薦で入学してきたり、通学に時間がかかる遠方からの入学者、やむない理由で寮に入寮する生徒がいるらしい。


 学校が運営する寮は無いので、周りにある民間が運営する寮に入るのが一般的らしいから、他にいい寮がありそうなものだ。


 ところが現在、それらの寮に女子生徒は1人もおらず、どの寮も男子の中に凛子1人が混じらないといけないらしかった。


 流石に学校も男子しかいない寮に女子を入れるのをためらったらしく、アパート代を学校が負担するという特例の措置をとったらしい。

 それも凛子のバレーの腕前あってこそ。そんな特例措置を学校ととらせるなんてそうそう出来るものでは無いだろう。


「……そうだったのか」


「そ。だからご飯買いに来てるってワケ」


 もう一度カゴを掲げる凛子。

 

「もしかして飯はいつもコンビニなのか? 自炊とか……」


「私が料理出来る様に見える?」


「それは分からんけども」


 少しおどけてみせる凛子であったが、英太の心は穏やかでは無かった。

 凛子がどこ出身なのか聞いた事は無いが、寮に入らなければならない程遠くから来たのだろう。


 この街に来て一人暮らしを始めて、こんな時間まで自主トレをして、家に帰って来たらコンビニ弁当を食べる。


 今でのコンビニ弁当は栄誉バランスが良いものもあるらしいが、今の時間、弁当はほとんど売れてしまって陳列棚は寂しいものだ。


 凛子は一流のバレーボーラーかもしれないが、それ以前に成長期真っ只中の高校一年生だ。

 スポーツ選手としての身体作りももちろんだが、大人の女性としての身体も作っていかなければならない。

 

 コンビニで買う食事を揶揄するわけではないが、やはり栄養は偏ってしまうことは避けられないだろう。


 そして英太は密かに決意した。


 それから二人は買い物を済ませ、それぞれの帰路に着く。


 聞けば凛子のアパートも近所らしく、時間も遅いので送って行く事になった。

 もちろん言い出したのは英太。


 もう少し凛子と一緒にいたかったから。


 二人は告白後の昼休みの時の様に会話を弾ませ帰っていった。




 最後までお読みいただきありがとうございました♪


 次回は明日更新予定です。お楽しみに(//∇//)!


 連日たくさんの方に読んで頂けて嬉しいです♪


 もし宜しければ、レビューや感想。それからブクマと下部の★★★★★の評価で応援して頂けると嬉しいです☆


 次回も凛子回!お楽しみにっ


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