41:幼馴染との帰り道①
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バイトを終えた六花と英太。
いつもの帰り道です。
バイトが終わり、洗顔と歯磨きをして花月の裏口から外に出る。
今日のバイトは中々に重労働だった。
久しぶりに厨房に立ったと言うこともあるだろうが、今日のお客は良く注文してくれた様な気がする。
明日が土曜日で休みだという客が多いのが原因であろうが、それでもいつもの金曜日よりも働いた気がした。
英太と六花が上がる時間になっても客足は途絶えることは無く、咲などはフロアに出なきゃわかんないだろなどとブラックな物言いをして英太ら高校生を深夜帯まで働かせようとしていた。
まぁ根は真面目な彼女の事であるから冗談であるのだが、そんな軽口を言いたくなるような客の入りだった。
「んー……」
身体を逸らして伸びをする。
夜の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、未だ仕事モードの身体を冷ましてくれているようで心地良かった。
「英太クン、お待たせ」
「ん、六花。おつかれ」
吸った空気を吐き出して振り向くと青葉高校の制服に着替えた六花だった。
栗色の明るい髪を手櫛で直し、いつものヘアピンでそれを飾っている。
繁華街の色とりどりの光りが琥珀色の瞳に映って輝いていた。
「英太クンもね。はぁ、今日は大変だったね。久しぶりだったからかなぁ?」
細身の身体には大きく感じるスクールバッグを肩にかけて、トテトテと小走りで駆け寄り、英太の隣に並ぶと二人同時に歩き始める。
バイト終わりの六花を家まで送るこの時間が六花は何より好きだった。
今日みたいに晴れた日は空に星が輝いて、雨の日は二人傘を並べて水溜りを飛び越えあるく。
1日のうちのほんの数分。
数分だからなのか、それは分からないが何よりこの時間が尊いものに感じていた。
そんな六花の心のうちなど知る由もない英太が輝く星を眺めながら言う。
「それもあるかも知れないけど、今日のお客さんはオーダー多かったよな。何でだろうな」
「うーん。……あ、給料日だったとか」
星を見る英太の横顔をしっかり目に焼き付けながら、六花もそんな事を言う。
「おう、それだ。給料日か。そういえば俺たちの給料日ももうすぐだな。六花は何に使いたいんだ?」
「うーん。実はあまり考えてないんだ。とりあえずは貯金してそれから考えようかなって」
「そうなのか。六花らしいな」
そういうと英太は笑った。
そもそも六花がバイトをしようと思った理由が英太といる時間を確保するためであり、もし英太が花月でアルバイトをしないのであれば六花も働いてはいなかったかもしれない。
まさかそんな事を言う訳にもいかず、適当な答えを漏らしてしまった。
このまま適当に話を作るのも気が引けたので、今度は六花が英太に聞き返す。
「英太クンはどうするの、お給料入ったら」
「俺も貯金だ、ははっ」
「あははっ、私と同じだね」
「あ、でもな、買いたいものはもう決まってるんだよ」
「ふーん、なんだろう……うーん」
人差し指を顎に当てて斜め上を見る。
物事を考える時や思い出す時にやる六花の癖だった。
そのまま数秒考えてから頭を振った。
「バイク、とか?」
「……マジかよ。なんで分かったんだ」
まさか言い当てられるとは思っていなかった英太は目を丸くした。
思い返しても六花にそんな話はしたことがないような気がする。
同じクラスのヤツにも話した事はないし、話題になった事もない。
英太自身も物欲が強い性格ではない為、とりあえずもらった給料は貯金しておこうと考えていた。
しかし時折、父の孫六と咲が話しているバイクの話を聞いていて英太も少しだけ興味が湧いてきたところだった。
言い当てた六花は少し得意げに鼻を鳴らした。
「ふふん、さすが幼馴染でしょ?」
「幼馴染はみんな読心術持ってんのか? 怖いな」
「あははっ、別にテレパシーじゃないよ。英太クン、この前の休憩時間にバイクの雑誌を読んでたから。けど、どうしていきなりバイク?」
「今読んでるラノベでさ、道具をバイクに積んでキャンプに行く話を読んでるんだけど。これが楽しそうでな」
もともとアウトドアに興味があったが、キャンプ道具などはとても高価な物が多いらしいし、そもそも道具を持って行くのには車が必要だし無理だと諦めていた英太。
しかしこのライトノベルを読み進んでいく内に、道具は比較的安い物もあるということや、主人公たちが自分とほぼ同い年なのだと言う事を知る。
つまり、もう少しで自分がバイクの免許を取れる年齢だと気づいたのだ。
バイクがあれば日本全国どこへでも行ける。
青葉市からあまり出たことのない英太にとってそれは夢のような事である。
「キャンプかぁ……いいなぁ。私キャンプしてみたい」
「そういえば六花ってそういうの好きだよな」
「うん、大好き。この間のバーベキューとか楽しかったし」
琥珀色の瞳をキラキラと輝かせている所を見れば、冗談や社交辞令などではなく本心からそう言っているのが窺い知れた。
つい先日行われたバーベキューの事を思い出す。
六花となんだかんだ話しながら準備をしたり、肉を焼いたり。
そんな些細な事が確かに楽しかった。
「バーベキューはな。けどテントとかで寝るんだぞ。風呂とかも適当になっちゃったり」
「お風呂は英太クンが近くの温泉にバイクで連れて行ってくれるんだよね?」
「お、おう……?」
「テントを張ってから夕方くらいに温泉に行って、沈む夕日を見ながら火を起こして」
六花は少しだけ遠くを見てそんな事を話す。
視線の先には二人の未来が見えているのか。
「二人でラジオ聴きながら夕ご飯の準備して。いろんなお話しながらご飯を食べる。すごくいいね、ふふっ」
「……そう、だな」
六花が話す未来のこと。
今までの一度も考えたことがなかった事。
六花と二人きりで行くキャンプ。
焚き火を二人で見つめて、なんてことのない会話をする。
時々訪れる無言の時間もなにも苦にならない、そんな時間。
パチパチと爆ぜる薪をただ眺める。
六花が話すそんな事を容易に想像出来てしまった。
何をするでもないそんな時間を過ごす。
キラキラとした瞳で楽しそうに未来の話をする六花はとても輝いてみえた。
けれど何故か儚げで、何かの拍子に壊れてしまいそうで。
「私も、きっと連れて行ってね」
「……」
何故か英太は頷く事が出来なかった。
幼馴染の六花をキャンプに連れて行くなんて大したことではない。
『おう、一緒に行こうな』と言って終えばそれだけのはず。
しかしそこで凛子の顔がチラつく。
幼馴染とはいえ相手は女の子だ。
……そう、六花は女の子なのだ。
女の子と同じテントで寝たらダメだろ。
もしその事を凛子が知ったらどう思うんだろうと、そんな事を考えてしまう。
ただの幼馴染だろ?
そう自分に言い聞かせるが、やはり六花に返事をするには至らなかった。
答えが返って来なくても六花は微笑む事をやめない。
答えは言わなくても良い……そう言っているかのように、ただ優しく英太を包み込む。
今までもそうしてきたように。
ご覧頂き、ありがとうございました。
少し六花に寄せたお話に致しました。
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次回も六花回。お楽しみに^ ^
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