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20/62

20:年頃の妹が無防備すぎる

 ご覧頂き、ありがとうございます♪


 アルバイトを終えた英太。

 六花を送ってから帰宅しました。

 

 妹登場です。



 いつもの様にバイト上がりの六花を家まで送り届けて帰宅すると時計の針は午後9時半を回ったところだった。

 

 今日も自主トレをしているであろう凛子の事が気がかりだったが、幸にして要らぬ心配だったようだ。


 なんでも今日はキャプテンの重山達と居残り練習をして、早めに切り上げたという旨のLAINでのメッセージが青木から送られてきたからだ。


 あの日、偶然を装って凛子を迎えに行った時。


 あの不気味さすら感じる夜の学校から出てくる寂しそうな凛子の姿を思い出すが、先輩達と一緒に切り上げられたならば心細くは無かっただろう。


 それにインターハイ予選まで二週間程度。


 バレー部のみんなには出来るだけ悔いの残らない結果を残して欲しいものだ。


 帰宅してすぐに風呂に入ろうと思ったが、脱衣場に先客の気配がしたので、そのままスルーしてリビングへ行く。


 両親は英太や六花とシフトを交代して下の居酒屋で咲と働いている。

 

 その為、脱衣場にいるのは妹の典子(のりこ)だろう。無理に入っていって変なCGを回収するのはゴメンだ。


 そう考えた英太は大人しくリビングへ向かう。


 ちょうどさっきお気に入りの作品の最新話が投稿された様だったので、それを読みながら待つことにした。



「おっかえりぃー」


「お、上がったか。ただいま」


 ソファーに座り、WEB小説を読んでいるところに風呂上がりの典子がバスタオルで滑らかな黒髪を丁寧に拭きながらやってきた。


 ……パンツ一丁で。


「……兄の気遣いを返せ」


「……? なんの話?」


 典子はクリクリとした黒眼で英太を見つめてコテンと首を傾げると、まだ湿っている髪を拭きながら冷凍庫を開けてグレープ味のアイスキャンディーを取り出した。


 胸の頭頂部がバスタオルとしっとりと濡れた長い黒髪で隠れているのがせめてもの救いか。


 同世代の異性が見たら間違いなくそういう(・・・・)対象になるであろう姿だが、もちろん英太にそんな趣味はない。


 妹の裸体を見てもなんとも思わないが、そんな格好の妹と敢えて同じ部屋に居たいとも思わない……というか精神衛生上良くない。


 例えそれが成長期がまだ来ていない〝絶壁〟だったとしても、だ。


 妹のとはいえ、一応異性の裸体である。


 視界に入らない様に気を配っていると、なんで俺が目線を逸らさないといけないんだというなんとも言えない敗北感に襲われる。


「……こっちの話だ。風呂入ってくるわ」


「うん。……あ、結局日曜日誰くんの?」


 半裸の妹と同じ空間にいるのが何とも苦痛になった英太は、どっこいしょと立ち上がり、早々に去ろうとするが典子に呼び止められる。


 日曜日というのは先程も話題になったバーベキューの事だ。視線を逸らしたまま告げる。


「えっとな、咲さんは来れない。俺と六花と典子とあと学校の友達だ」


「えー咲さん来れないんだ、残念。友達って男の人?」


「いや女子だよ」


「なら良し。ガッツリ肉食うぞぉー」


 男がいたらしおらしくしなければいけないとでも思ったのか、典子はあからさまにホッとした表情を浮かべた。


 男子が苦手なんて事はないだろうが、分厚いスペアリブを手掴みで噛みちぎる姿は男子には見せたくないという事なのだろうか。


 当然ながら典子の中で英太は男の子にはカウントされない。

 典子が英太の中の女の子にカウントされないのと同義である。


 そんな典子はアイスの個包装を破るとパクリと咥え込んだ。


「……あ」


「……ひぁ、く、くっふいふぁ!」


 多分「くっついた」と言っているのだろう。

 アイスが典子の柔らかい唇にくっついて、ゴムの様にビヨーンと伸びてしまっている。


「何やってんだ。……ほれ」


 ティッシュに水を含んで患部を撫でると、アイスが部分的に溶けて何とか唇から引き剥がせた。


「うぅ……ヒリヒリするぅ……赤くなってない?」


 典子はぷるんとした桜色の唇を英太に突き出して見せた。

 英太の身長は180cmと長身の分類であるが、同じ血を引くはずの典子は130cmをギリギリクリアする程の身長である。


 兄に患部を見てほしい典子は自然に爪先立ちになる。


 うー、と突き出された唇を確認してみると一部皮が捲れてしまっていた。


「あーあ、皮がめくれてるぞ。けど血は出てないみたいだ」


「うっそぉ……しばらくちゅー出来ないじゃん」 


「誰とするんだよ……相手がいないだろうが」


 一丁前にそんなことを口走る典子。


 容姿端麗の顔立ちであるから、中学3年生とも慣れば彼氏がいてもまぁおかしくはない年頃ではある。


 しかし実際典子には彼氏などいないし、そんな経験もない。

 妹に男っ気がない事は百も承知の英太は肩をすくめる。


「まさか、すずめ(・・・)ちゃんか?」


「すずめにはちゅーしないよ。大事だからね」


「何その逆説? キスは大事なやつだけにしとけ」


 典子は涙目で赤くなった唇を押さえて、今度は少し警戒しながらアイスを口に含んだ。


 結局食うのかよと英太は思った。


 すずめというのは典子の友達で、彼女の親友と言って良い間柄の女の子。

 最近は来ていないが、休みの日など良く遊びに来ていた。


 典子と大違いで大人しくて可愛らしい子だが、まさか本当にそんな事しているんじゃなかろうかと心配になってしまう。


 彼女の場合、例え嫌でも言い出せない可能性すらある。


 若干すずめの身を案じつつ、風呂へ入るべくリビングを出ようとすると再び典子に呼び止められる。


 「なんだよ」と振り向いてみれば、典子はドライヤーを英太にずいと差し出してきた。


「お兄ちゃん、乾かして」


「はぁ? 嫌だよ、お前の髪長いから全然乾かないじゃないか」


「だからだよ、お願いぃー」


「お願いします、お兄様。だろ」


「お願いします、お兄様」


「言っておいてなんだけどな、プライドを持てプライドを。お兄ちゃんは妹の将来がいろんな意味で心配だ」


 あっさりと服従の言葉を述べる典子。

 当然ながら完全な棒読みであり、一切の感情は込められていない。


 やれやれと言った様子で顔をしかめてから典子が差し出すドライヤーを受け取るあたり、やはり英太はお人好しの様である。


 タオルを身体に巻き、ソファーに腰掛けた典子の後ろに回り込み、彼女のしっとりと濡れた黒髪にドライヤーの温風を当ててやる。

 

「〜♪」


「……やれやれ」


 典子は鼻歌混じりにスマホをいじりアイスを頬ばった。


 英太はといえば仕方なくやっているとはいえ、徐々にツヤを帯びて行く妹の黒髪に手櫛を入れながら眉端を下げ、しかし目を細めるのであった。

 


 ご覧頂き、ありがとうございました。


 次回は短いエピソードをお送りします。



 その後はバーベキューのお話にする予定です。


 ほのぼのまったり回で、女性陣の魅力をお伝えできればなぁと思っています。 


 

 

 次回は明日更新予定です。


 宜しければ、ブクマと下部★の評価で応援よろしくお願いします。

 レビューや、感想なども是非ぜひお寄せください。


 次回もお楽しみに。


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