プロローグ
男は探していた。強い人間を、ある目的のために。夜の街、電信柱の上にその男はいた。
「ここら辺はどうかな。」
そう呟きながら男はじっと辺りを見渡していた。動かず、何かを感じ取るように。しばらくすると遠くから、男の怒鳴る声が聞こえてきた。男が急いで声のした方へ向かうと、学校の校庭で一人の学ランを着た少年が数人に囲まれていた。
「タツ、鳳仙高校の一年は俺が頭ってことでいいよな。」
「俺はお前らの下にはつかない。頭張る気もねえよ。」
タツと呼ばれた囲まれた少年と周りのリーダーの様な少年が会話している。その雰囲気は穏やかではなく、見ている男は会話を聞かなくてもこれから喧嘩が始まることが分かっていた。
「ぶっ殺してやる。」
リーダー格の少年は叫ぶと同時に、タツと呼ばれた少年に向かって一斉に襲い掛かる。しかし、タツと呼ばれた少年は表情一つ変えずに攻撃を捌いていく。フットワークを使い、襲ってくる少年たちの腹に、顔に拳を当てていく。殴られた者からどんどんと地に倒れていく。全てが終わるのに数分も掛からなかった。
「俺にもう突っかかってくるなよ。」
少年はそう言い残し、その場を去っていった。
上から全てを見ていた男は嬉しそうに笑って、呟いた。あいつにしようと。