03.悪役令嬢? メリテの思案
当初、〈悪役令嬢ポジションでのヒロイン役〉という名の脇役だった人の視点。ややこしくてゴメン(;>_<;)
話が始まった今、ただの脇役です。
「御用が無いのでしたら、わたくしは帰らせていただきます」
安定の愛想の無さ。困ったダナイ嬢だこと。けれどもわたくしは知っている。この方は悪い女ではない。寧ろ優しい方。それなのに、矛盾するようにわたくしを破滅へと誘う方。
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前回のわたくしはダナイ嬢に貶められて殿下には婚約破棄され、家からは勘当され、挙げ句に国外追放処分を受けました。わたくしは何も恥ずべき事などしていませんでしたのに、何時のまにか犯罪者に仕立て上げられて……。更なる追い討ちは、罪人として護送される道中でわたくしは暗殺されるのです。その最期の最後、わたくしは漸く思い出しましたの。前世の記憶を。
前世のわたくしは、アジア圏とアジア圏の国際結婚で生まれたハーフ。国籍が何処であったのかは憶えていませんけれど、日本生まれの日本育ち。日本人から見たら完全外国人の血筋、しかもハーフなのに日本語しか喋れないという残念ハーフ。けれど友人は多かったように思うから、愛されてはいたのだろうと思いますの。
そんな前世のわたくしは、アニメと乙女ゲームに嵌まっていました。だから記憶が戻ると共に気付きましたの。ここは乙女ゲームの世界であると。アニメ化してほしいなと思っていた、あの乙女ゲーム!好きだったのに、題名が出てこない乙女ゲーム!
わたくしは前世に引き続き、今世も残念要素満載で生まれてきてしまいましたのね。でもまあ、殺される直前になって記憶を取り戻している時点で、今更ですわね……。
殺されるであろう現実と前世を思い出した衝撃とで、現実逃避できた事だけは良かったですわ。そんな風に頭の片隅で自分を見詰めていましたら、誰かが突然わたくしに覆い被さってきましたの。そしてわたくしの代わりに斬られてしまいました……!
その方が、わたくしを罠に嵌めた筈のダナイ嬢でした。
次に気付いた時、わたくしは現実を理解できずに半月も寝込んでしまいました。尤も、その内の五日程は過保護な家人に無理矢理寝かされての事ですけれど。
前回の死の瞬間は憶えていませんけれど、わたくしは一度死んだ筈。けれど目覚めた場所は自室のベッド。勘当された筈ですのに、皆が優しい。
漸く落ち着きを取り戻したわたくしは、現時点の日時を確認する事から始めました。その結果確認できたのが、時間の巻き戻り。……まるでアニメかゲームのようだと思いましたわ。とても現実とは思えませんもの、死ぬ前に見ている長い夢だと自分に言い聞かせようとした事までございます。けれど、その時は来てしまったのですの。
聖女と呼ばれるであろう少女との邂逅の日が。
前回は聖女が学園に入学するという話が聞こえてきて初めて彼女の存在を認識したのですわ。けれども今回はその前に聖女の存在が示唆されました。前回はこんな機会あったのかしら? 機会があったのにスルーしていただけ? 分かりませんわ。
分からないといえば、会ってどうするのかも分かりませんのに、どうしてわたくしは彼女に会おうとしたのでしょう? 実際に会ってみて、わたくしはこれといって何も話しませんでしたの。尤もそれは、殿下の失言もあっての事ですけれど……。実際あの後わたくし達は、揃ってお説教されたのですわ。あゝ、殿下のせいにしてはいけませんわね。殿下はわたくしの我儘をきいてくだされただけ。わたくしが口を開こうとしなかっただけですわ。
けれども少しだけ謎が解けましたわ。前回の最期の最後でのダナイ嬢の出現。何故彼女がわたくしを庇ってくださったのかは分からないままです。しかし、そこに居なかった筈の人が現れたカラクリ。それは魔法ですわ。あの部屋から飛び出して行った時の彼女は、危なっかしいものの風の力を操って空を飛んで脱走なされたのですもの。光の魔法以外にも使える魔法がございましたのね。
少し話は逸れますけれど、殿下の言質を取り付けての脱走。見事の一言ですわ。
ただやり直しの今回、少しの違和感がございますの。それはダナイ嬢の態度ですわ。
思えば前回のわたくしは、ダナイ嬢と然程接触せずに過ごしてしまいました。でもだからこそ冤罪を着せられて驚きもいたしましたけれど。
前回のダナイ嬢に関して憶えているのは、いつも悲しそうな顔をなされていた事。前回の皆様は、それはわたくしのせいだと仰いましたわ。ですからわたくしはダナイ嬢がわたくしを貶める為に嘘を、演技を徹底したのだと思っておりましたの。だってそれがゲームやアニメの定番ですもの。けれども最期の最後……ダナイ嬢はわたくしを庇ってわたくしよりも僅かですけど、早く殺されている。そして今回の彼女を見ていると、彼女は寧ろ殿下方を嫌っているようにも見えて……。ただ今回はその原因もはっきりしておりますし……。絶対に「あれ」ですわよね。ダナイ嬢のお母様を指して殿下が「娼婦」呼ばわりした一件ですわ。前回それは無かったのでしょう。今回と前回、出会いのタイミングが全く違ったのですもの。前回は殿下のやらかしは無かったものと見るべきですわ。
あゝいえ、ここで殿下のやらかしは考慮から外しても良いのではないかしら? もしも前回も今回と同じようにダナイ嬢御自身は殿下方 --ひいては攻略対象者に興味を抱いていなかったとしたなら?
憶測で物事を推測するべきではありませんわ。けれども前回の最期の最後を鑑みるに、彼女はわたくしと敵対はしていなかったし、わたくしを破滅させたのも彼女であるとは考え難いのですわ……。
けれども……それならば
--いったい何方がわたくしの名誉を傷付け、わたくしの命その物を奪おうとなさったのでしょうか?
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「惚れた!! 俺の嫁になれ!」
……あら? ギア?
ぼんやり考え事をしている内に、何やらとんでもない事態になっていませんこと?
漸く書けました、セレネイア·メリテ·レイコトネさん。
漸く前に出て来てくれましたよ~( ≧∀≦)ノ