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01. 本人不在の生徒会室で

あれ?

悪役令嬢ポジ·ヒロイン紹介にしようと思ったのに、逆に印象薄くなった……。

今回はその他の人々紹介になりました(*゜∀゜)ゞ


王都・学園

全国から王公貴族や大富豪の子息令嬢を

原則十六歳から受け入れているエリート校。

教養、学問を教えるのは勿論、

魔力制御を身に付けさせる事を主目的とした国立校。


その生徒会室で、盛大な溜め息が漏れた。


「……メリテ、何かあったのか?」

「カイル殿下……」


この国の第二王子ナーシサス・カイル・クラボトスの声に、溜め息の発信源である令嬢が顔を上げた。

セレネイア・メリテ・レイコトネ。月の女神のような銀髪に白い月のような水色の瞳。生徒会室の紅一点たる彼女は、書類整理を終えてお茶の支度をしているところであった。


「……少し…学園の雰囲気が暗くなりがちであるような気が致しまして」

「あゝ、特待生に対する(いじ)めの件ですか?」


セレネイアに応えたのは、この場に居るもう一人の青年カドケノス・オウル・パルヌス。こちらは新緑のごとき薄い緑色--緑青色(ろくしょういろ)が大変印象に残る頭髪を、一纏めにして左の肩から垂らしている。


「あの生意気な女が虐めを働いていると?」


蜂蜜色の髪に赤い目のカイルの意地悪そうな顔に、残る二人は再度溜め息を吐く。カイルの真逆の解釈は、わざとだろうと悟って。


「優秀な特待生を指して()()()()()()()などと、口さがのうございませんこと?」

「しかも二つも年下の女の子に対して、王族が取る態度ではないですね」

「そも、この件に関しては、カイル殿下をお怨み申し上げますわ」

「僕も一言申し上げるだけでは足りませんね。彼女への虐めに関しては、殿下の言動が大きな原因の一つになっていると思われますのでね」


セレネイアとカドケノスの苦情に、途端にカイルがタジタジとして憎まれ口を取り下げた。


「先程の言葉は取り消す。それで……そんなに虐めは酷いのか?」

答えるはカドケノス。

「……彼女は色々と鳴り物入りでの入学でしたからね。成績に問題は無いようですが--あゝ逆の意味では問題があり過ぎるそうですけど」

「どういう意味だ?」


カイルが疑問を挙げる声を聞きながら、セレネイアが無言のまま各人の前にティーカップを置いていく。


「既に必修教科を幾つか終業しています」

「は?」


単純な驚きの声だろう、カイルの頓狂な反応に、カドケノスが仕入れた情報を開示していく。


「魔法学、神話学、歴史、美術の四教科は大変優秀な成績で問題無く履修を終えたそうです」

「……なに? 入学してまだ三ヶ月だぞ?!」


大変優秀と誇張された表現その物に突っ込みを入れる余裕も無くなる内容。カイルが驚きに目をかっ開いた。


「数学と他国語が苦手らしいですが、数学は図形が苦手であるくらいで肝心の計算は恐ろしく正確で速いそうです」

カドケノスが内ポケットから取り出したメモ帳を確認しながら報告を上げる。

「他国語は、まあ庶民ですから仕方がないですね。地理は地図を見るのが若干苦手なのだろうとの事--」

「地図はわたくしも苦手でしてよ」

「えゝ、女性は苦手となさる方が多いですよね。ですのでこれは特筆する程の事ではないかと。地名や特産品、風土に関する物事はスラスラ憶えてしまうそうですよ」

「ぐぬぬぬ……そうだ! マナーとダンスはどうなっている? 庶民なんだ、この二つは無理だろう!」

「殿下……男が小そうございますわ……」

「僕もレイナ様に同感です。因みにその二教科は、庶民なので初めから免除です。一応申し上げておきますが、武術の授業も免除されていますね」

「………」

「選択科目は生物を選んでいますね」

「光魔法ではなく?」


カイルの確認にカドケノスも難しい顔でメモ帳をペラペラと捲りながら疑問顔だ。


「……魔法学は必修項目だけですね。おかしいな……。ただ選択の生物では、既に何かして来たとありますね」

()()()()?」

「はい。……ベラスゴス平野とカルタゴの丘で実験して来たとあります」

(かつ)ての戦争で、どちらも荒野になっていますわね」

「あゝ……だが共通点はそれくらいだろう? 場所も気候も全然違う」

「違いを利用しての実験なのでは? 詳細は分かりませんが、実験の結果如何(いかん)で研究室を持つ事になるそうです」

「はあゝ?!」

「それが虐めの原因の一つかもしれないな……」

「お帰りなさい、ギア」


新たに加わった声。身体の大きな青年が部屋に入って来ながらの意見。

セレネイアが彼の分のお茶を用意しながら心配そうに訊ねる。


「彼女は?」

「相変わらずだんまりだったな。一応、校門まで送って来たが……」


大きめな身体の青年--アイギスが何かを思い出したように黙り込むと同時に微かに笑った。


「何か良い事でもあったのかい、ギア?」


カドケノスもつられるように微笑みながら訊ねる。アイギスが小さく、けれどもしっかり頷き返した。


「初めて、ありがとうと言われた」

「今迄感謝の言葉一つ無かったのか……!」


水を差すのは、もはや役割になりつつあるカイルのものだ。呆れたらしいカドケノスが名を呼んで注意するが、カイルは忌々しそうに言い返す。


「大切な仲間が軽んじられたのだ! 不愉快に想うのは当然だろう!」

「激昂するな。今迄だって言葉は無くとも感謝の意は伝えてくれていた」

「口を利かずにどうやってだ?」

「いつも丁寧に頭を下げてくれていた」


カドケノスが苦笑を隠そうともせず口を開く。


「カイル殿下は王子ですから、頭を下げるという発想が無いですからね。それよりも、どうでしたか、ギア?」


「それよりもとは随分じゃないか……」

「? それよりも、とは?」


カイルとアイギスの声がほぼ被ったが、カドケノスはアイギスの疑問を拾った。面白そうに訊ねる形での確信の言葉。


「可愛らしい声だったでしょう?」


アイギスがニコリと微笑んだ。


〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉


「とにかく殿下--」


お茶を飲み終わった頃合いで、カドケノスが厳しい目をカイルへ向けた。


「何で私を名指しなんだ」

「あなたのダナイ嬢に対する態度があまりにも目に余るからです。今この場に居る人間で彼女に敵愾心(てきがいしん)を抱いて居るのはあなただけですからね」


カイルは不貞腐れた顔を隠そうともせず反論した。


「初めに喧嘩を売ってきたのはアイツたぞ」

「いいえ、初めに喧嘩をお売りになったのは殿下です。誰だって自分の母親を娼婦呼ばわりされれば怒るでしょう」

「何だって!?」


声を荒げたのはアイギスであった。


「あゝ、あの時ギアはその場に居ませんでしたね」

「お前が失念してるとか嘘っぽい。今のわざとだろう」

「殿下、何か仰いましたか?」

「ただの独り言だ」


カイルはカドケノスからというよりはアイギスから顔を背けて一人言ちている。


「とにかく、ダナイ嬢の我々に対する感情は最悪を保ったままであろうと推察します」


我々というのが、何処から何処迄なのだろうという疑問は、取り敢えず棚上げで。


「神殿に彼女を取られるわけにはいかないんです。殿下は彼女に対する態度を改めてください。できないのなら引き続き近寄らないで、陰口の類いは一切禁止です!」

「おい! 私は陰口など叩いていないぞ!」

「殿下の彼女に対する嫌忌(けんき)が周囲に伝わっているんです! ですから僕達は再三にわたって()()を改めてくださいと申し上げ続けているのではありませんか!」

「分かった! 私が悪かった! 以後気を付ける!」


カドケノスはまだ何か言いたげな顔をしていたが、一つ大きく息を吐き出して最後の一言を付け加えた。


「ふうぅぅ……どうぞ宜しくお願いします」






ギアの髪色と瞳の色、何色にしようかなぁ……。

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