テガミ
拝啓
この手紙を読んでいると言うことは、私の結末が気になったのかと思います。
結論から申しましょう、知りたければ勝手にご自身で調べて下さいませ。
貴方様が軽蔑していた私に戻ったなら、お分かりでしょう?
私が貴方様の為に何かをするなんてあり得ない、と。
ああ、婚約破棄に必要な書類は私の種が喜んで用意するでしょう。
そして新たな婚約者を、一時貴方様の気持ちが向いていた私と種を同じとする、私より年下の存在とするならば、きっと喜んで新しい書類を用意すると思いますよ。
その存在も貴方様をお好きな様ですから、過去を思い出せば、良い関係が結べると思いますよ。
例え最近の私とキスをし、心を交わそうが。
貴方様方が優しいと仰るあの存在ならば、多少の浮気も許すのではないでしょうか。
貴方様のお家としても、それを望んでおられるかもしれませんね。
心底どうでもいいですが。
さて、一つ面白い話をして差し上げましょうか。
私は昔から最近迄、たまに書いていた日記帳があるのです。
その日記帳は、半分同じ血で出来た人間の住む屋敷に捨てましたので、彼等が捨てていなければご覧になれるのではと思います。
見られて困る事は一切御座いませんので、もしかしたら貴方様が愚かにも愛したと言う、最近の私の事が分かるかもしれませんよ。
ただこれは、貴方様が軽蔑している私が言う事ですから、信じるか信じないかはお任せします。
まあ、信じないと思いますが。
そうそう、昔、周りの人間に何と言われようとどうだって構わないと申しましたでしょう?
あれ、実は嘘なのです。
だって軽蔑されたかったのですもの、貴方様がした様に。
たくさんの人間にされればされる程、あの屋敷の人間は肩身が狭くなるでしょう?
関わる人間が愚かだと思われるでしょう?
私、馬鹿が大嫌いなのです。
私を産んだが故に死んだ母も、愛を取った男も、その愛を受けた女も、その愛の結晶達も、孫を残して死んだ娘に固執する祖父母も、そして愚かな婚約者である貴方様も、皆んな馬鹿ばかりなんですもの。
こんな小娘一人何とも出来ない様な馬鹿共と、同等に思われたくなかったのです。
息苦しいったらありゃしない。
私、無能じゃありませんもの。
馬鹿じゃありませんもの。
だから、清々していたのです。
最後に、ここ最近頂いたプレゼント達は、全てお返しします。
手紙と共に届いた筈です。
そんな贈り物を手元に残しておくのは、今の私には気持ちが悪く、吐き気がしますので。
過去記憶にある頂いた物は、日持ちのしない花や菓子だった気がしますので、それらは同封したお金で足りますよね?
足りなければあの屋敷から私に与えられた物を、どれでも構わないので売り捌いて頂いて、賄って頂ければ。
今後二度と会う事は御座いませんでしょうから、煩わしく思う事もございませんでしょう。
それでは、御機嫌よう。
敬具