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if.  作者: トミネ
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ニッキチョウ

 きょうはわたくしのたんじょう日。

 お母さまがなくなったのは、わたくしが生まれたせいだとおばあさまに教えられた。

 わたくしのたんじょう日は、お母さまのめい日。

 だからおいわいはないの。

 わたくしはこの日をお母さまにおわびし、かんしゃしながら生き、お前をうむきっかけとなった血の半分、タネであるお父さまと、のうのうと生きるゴミどもを苦しめなければならないのをあらためてじっかんしなければならないのだって。

 それがわたくしが、生きることでお母さまにできるゆいいつのおんがえしなのですって。

 むずかしいけど、がんばらなくては。






 おばあさまたちの言うとおり、お父さまたちはわたくしの言うことをだいたいきく。

 これならかんたんだ。

 これで苦しむのかは分からないけれど、こまっているようだったから、このままとりあえず続けようとおもう。






 こんやくしゃがきまった。

 おばあさまたちがきめたあいて。

 家どうしのきめたせいりゃくけっこんというやつ。

 わたくしより二つ上の人。

 わたくしがわがままなのをきらっているけれど、わたくしがこれを止めるわけにはいかない。

 だって、これを止めたら、わたくしがお母さまの命とひきかえに産まれたいみがなくなってしまうから。






 かれが言った。

 お前なんかとではなく、妹の方とけっこんしたい、って。

 家どうしのつながりがひつようなら、お前みたいなわがままでうるさいやつなんかより、かわいらしくやさしい妹がいい、と。

 わたくしにはどうすることもできないのだから、じぶんの親やおじいさまやおばあさまに言えばいいのに。

 あたまがわるいのかしら。






 兄が言った。

 お前はなにがしたいんだ、わがままばかりでうるさいのは、きぞくとしてさいていだ、って。

 妹が言った。

 やさしいあの方を苦しめるのはやめてさしあげて、って。

 お父さまが言った。

 お前がわたしたちをゆるせないのは分かっているが、ひとにめいわくをかけるのはやめなさい、って。

 ははおやが言った。

 おねがいだから、もう少しまわりをみてちょうだい、って。

 おばあさまが言った。

 もっとお前のお母さまのために生きなさい、って。

 おじいさまが言った。

 もっとわたしたちのために生きなさい、って。

 ちゃんとできているのか分からない。

 できているといいな。






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 私が世間でどんな風に言われているか知ってるのか、ですって。

 そんなの分かりきったこと、どうだっていいのに。

 何度も言ってくるなんて、本当に兄は馬鹿なようだ。

 彼にも言われた事があったけど、彼は一度きり。

 彼の方が賢い、学ぶ力があるもの。

 私はこの家がなんて言われてるのか知っている。

 煩い我儘癇癪持ち娘を持て余す、哀れな家。

 彼の家も、そんな婚約者を持つ、気の毒な家。

 同情は彼の家の方があるし、彼は賢いから、多分大丈夫。

 でも我が家はもっと貶めなければ。

 兄は馬鹿だから、多分この家は兄の代で潰れる気がする。

 でもそれを確実にしなければ。

 だって、お母さまを殺した私を、この世に誕生させた家だもの。






 今日は誕生日。

 そろそろ彼に婚約破棄をしてもらいに行こう。

 これはお祖母様達にも話してないけれど、もういい加減頃合いだと思う。

 そして、家同士、滅び行く家でも繋がりが欲しいのなら、妹と結婚すれば良い。

 どうやらお互い悪い気はしていないみたいだし、少なくとも妹は憎からず思っているみたいだし。

 感情的には何とも思わないけれど、血は争えないのだなと思った。

 お祖母様達が嫌うわけよね。

 朝からお祖母様とお祖父様と一緒にお母様のお墓に手を合わせに来たけれど、帰り際苦言を呈していったけれど、私ではなく妹に直接言えばいいのに、と呆れてしまった。

 まあ、話したくない程嫌いなのだからしょうがないのだろうけれど。






 明日、彼に例の事を告げよう。






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 あり得ない!

 まさか私が悪役令嬢に生まれ変わるなんて!

 これが物語の粗筋で、このままだと私は死んでしまう未来しか無い悪役令嬢。

 だから未来を変える、変えてみせる。私は死にたく無い。

 せっかく思い出したのだから、今からだって遅くは無いはず。

 生い立ちは確かに可哀想だけど、だからって我儘や癇癪は駄目だわ、私。

 人の弱味に付け込んでる事を私は思い出したのだし、婚約者と結婚解消してでも良いから、せめて生き残る術を見つけなきゃ。






 このままじゃ私の死ぬ運命は変わらない。

 仲良くしなきゃ。

 お兄さんや妹ちゃんに罪は無いもの。

 お父さんとお母さんだって…人の気持ちは誰にも止められないし、私の産みの母だって絶対許してたはずだし、私がこんな風になる事を望んで無い筈だもん。

 娘をぞんざいに扱われたおじいさんやおばあさんは確かに許せないかもしれないけど…だからって孫にさせる事ないじゃない!

 せっかく思い出したのに死ぬなんて嫌!

 今からだった絶対遅くないはず!

 絶対運命を変えてみせる!!






 婚約者の彼に、物凄く嫌々謝られた。

 気にしなくていいって言ったら滅茶苦茶驚いてたし、そもそもその前に侍女さんとかもありがとうとかごめんなさいとか言ったら、目玉が飛び出るんじゃないかってくらい目を見開いたり、顎外れるんじゃないかってくらい口を開けてた。

 私どれだけ傲慢だったの…

 その後家族にも今迄の事謝ったし、心を入れ替えて仲良くなろうと頑張る決意も新たに出来た。

 うん、やっぱり普通に周りはみんな良い人だ。

 私の過去が悪い。

 頭を打った衝撃で人格が変わったのだろうってお医者さんも言ってくれて、皆んな半信半疑状態だけど、信用ゼロどころかマイナスからのスタートなんだからしょうがない。

 少しでも良い方に向けて頑張ろう。

 未来は未だある!

 死ぬ運命には未だ数年あるのだ!!






 あれから七日経過。

 多少仲良くなってきた…筈。






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 誕生日が来た。

 あれからもうすぐ一年になる。

 皆んな昔に戻るのではとハラハラしてたみたいだけど、戻るわけない。

 だって私は死ぬ未来を思い出したに過ぎないんだから。

 あれから家族との関係はプラマイゼロになった、と思う。

 多少信用してもらっていると言った感じ。

 落ちた評判を元に戻すのは、本当に大変だ。

 昔の私よ、どうしてくれる!

 因みに彼とも婚約を破棄せずにいる。

 彼との関係もプラマイゼロ。

 もし妹に婚約者を変えるなら、それでも良いとはとは思っているけど、今のところ様子見だってさ。

 後、産みの母への墓参りは一人で行った。

 祖父母と一緒に行くと絶対何か言ってくると思ったから。

 あれから極力関係を持たないようにしてる。

 二人も過去ではなく未来を見るべきだ。

 家族から誕生日のお祝いをしてもらった。

 プレゼントも、貰った。

 家族と、そして彼から。






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 また一年が経った。

 流石に昔に戻るとは思わなくなってくれたらしい。

 関係はプラスだ、良かった!!

 頑張った甲斐がある!!

 最近祖父母は私に何かを言う事を諦めたらしい。

 流石屑の血が流れてるだけあるわ!とか、母親を殺したくせに、とか言われたけど…

 流石に辛かったけど、母が命を賭したからこそ人として恥じぬ生き方をするんだ!っていったらこうなった。

 そして家族にはよく言った!って言われて褒められたから良かったなって思う。

 彼にも感心された。

 相変わらず婚約関係にある。

 最近は私もちょっと心が傾き掛けている。

 彼を好きなんだって思っている。

 でも未だだ。

 私はそんな事を彼に言ってはいけない。

 散々迷惑を掛けたんだから、もう少しまともな淑女になってから、想いは告げようと思う。

 家族から祝われた誕生日、そして貰ったプレゼント。

 特別な彼から貰ったプレゼント。

 来年はもっと彼等の自慢になれますように。






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 誕生日が来た。

 彼から正式にプロポーズされ、私は受け入れた。

 キスをして、幸せだって微笑みあった。

 妹が彼を好きだったことは知ってるし、彼も妹に気持ちが向いていたのを知っていたけれど、妹も今のお姉様なら彼が選ぶのは当然だと祝福してくれたし、彼自身も気持ちが私に向いてくれた。

 私が知る死の結末は、私が我儘な悪役令嬢のまま、彼と妹が一緒になる事で起きる。

 つまり、私は死なない未来を掴むことができたのだ!

 私がまともになってさえいれば、彼と妹が一緒になっても死なないかな、なんて思ってたけどやっぱり不安ではあったし。

 三年後の冬、私は死ぬ運命だった。

 病死なんかじゃないし、処刑でも無い。

 でも、堪り兼ねた父と兄、彼によって私は家を出され、貧民街へと落とされる。

 そこで産みの母の形見を盗まれ、取り返そうとしてそのまま返り討ちにされるのだ。

 当たり前だ、お嬢様が飢えた人間に勝てるわけがない。

 それを避けるため、関係を改善して未来を変えたんだ。

 産んでくれた母の分まで幸せになるんだ!!


 産んでくれてありがとう、お母様!!






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