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夢の異世界  作者: 黄田 望
8/14

涙の記憶

この度も読みに来てくださりありがとうございます。

サブタイトルは上手く決められずこのようなタイトルとなりました。

もし続きを書いていていいサブタイトルが浮かべば編集するつもりなのでご了承ください。



 この不思議な世界で目を覚まして2週間と6日が過ぎようとしていた。 この世界で最初に出会った少女カイリと動物のバグによく似た蒼色の毛を生やした獣、チビと共に楽園の夢国という場所を目的として旅をしている。


 そして明日、目前にある山を1つ超えれば到着する所まで来ていた。

 ここまで来るまで色々な経験をしてきた。 初めての野宿に狩り、そして魔法。 現実では決してありえない摩訶不思議な体験をしてきたが、僕がその中でも一番頭に離れない記憶がある。


 「スゥー。 スゥー。 スゥー。」

 「・・・」

 

 僕は学校でも世間的にも年が近い女の子と会話をするなんて事が少なかった。 いや、なかったと言える。 そんな僕が今、夜の星空の下、カイリの寝息を聞きながら一緒の毛布に包まって寝ていた。

 いつもなら、カイリはチビを抱えながら焚火を中心にして僕の前側へ横になって眠ていたのだ。

 しかしカイリは1度、水を飲む為に起きて先ほどまで寝ていた場所に戻ろうとしたのだが、そのまま寝ぼけて僕が横になって使っている毛布に入り込んできたのだ。

 そして実はこの時が初めてではない。 カイリと旅を始めて僕は3回目となる経験なのだ。

 1度目は緊張のあまり眠る事が出来ず朝を迎え、2回目はソッとカイリを起こさないようにその場から離れて少し離れた場所で眠った。

 そして今回の3回目。

 2回目同様僕はカイリを起こさないようにその場から離れようとした・・・が、今回はそれが出来なかった。 その理由は僕の手と彼女の手だ。 寝ぼけた彼女は毛布に入って来た際に僕の右手を力一杯に握りしめて離さないでいたのだ。

 先ほども言ったが僕は女の子と接する事が誰よりも少なかった凡人だ。 そんな凡人が目の前の美少女に手を握られ横で寝られるという先代未聞の人生経験にどう対処したらいいのか分からないでいた。 

 ―――で、カイリが僕の毛布に入り込み手を握りしめて約30分が経過しようとしていた。

 僕はただ無心に夜空が輝く星空をジッと見つめている。


 「スゥー。 スゥー。 スゥー。」

 「・・・」

 「スゥー。 スゥー。 ――ン。」

 「 ! 」


 カイリが少し寝相を取り僕の方に顔が向いた。 すると普段から見えそうな服装の胸元がさらにイヤらしく見えるポジションに着崩れた。


 (無心無心無心無心無心無心)


 僕は心の中でひたすらに無心になる事を考えた。 しかし、僕も男であると自覚した。 目が自然と彼女の胸元に行ってしまうのだ。

 見てはいけない。 折角仲良くしてくれた優しい人をみつけたんだ。 彼女が嫌がるような事はしたくない。 

 心の中でそう思うが、男である僕の体は欲望に忠実なのか、見つめた先の視線から離せないでいた。

 

 そんな自分の欲望と戦っている時だ。 カイリの目から一滴の涙が流れた。


 「・・・お姉ちゃん。」

 「・・・・。」

 

 その一言を聞いて僕は彼女が握った手を軽く握り返して星空を見た。


 彼女と出会ったその日から不思議に思っていたことがある。 それは何故、カイリは1人でこんな森の中を旅しているのか。

 確かに漫画やアニメなんかでは美少女が1人で旅をして色々な経験をする物語は沢山ある。 しかしそういった物語には何か理由がある。


 それは世界の危機を救う役割。 それは世界を知る冒険の理由。 それは世界を楽しむ物語。


 だけど彼女にはそのどれにも当てはまらない。 そう言った人物の旅をする理由があるとすれば【希望】か【復讐】をテーマとした物語だ。

 自分かその周りを助けてくれる人物を探す【希望】の物語。

 もしくは憎い相手を倒す為の【復讐】の物語。


 しかし、僕の目の前にいる彼女には一体どういった理由があるのかわからない。 そんな事は当たり前だ。 僕はあくまでその物語の中にいる人物と同様だ。 読者には序章と幕間で彼女に関するヒントが描かれている場面があるのだろうが、今は現実だ。 夢物語を見ているわけではない。


 「・・・もしもこれが夢だったら、カイリに起きた出来事を知る事ができたらいいのに。」


 僕はそこで無駄な詮索は止めて目を瞑り眠る事にした。

 


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