誰かの声
この度も作品を見に来てくださりありがとうございます。
今回は少し人によっては【嫌な気持ち】なる方もいるかもしれませんがご了承いただくと幸いでございます。
ピピピッ。 ピピピッ。 ピピピッ。
一定のリズムで同じ音が何度も耳元で聞こえる。
それは聞きなれたいつもの朝の合図となる音の筈なのに、それがとても耳障りで吐き気さえ感じる。
僕はスマホのアラームを切り、再び布団を頭まで被った。
「・・・え!?」
そして飛び起きて周りを見た。
使い慣れたベッド。 見慣れて勉強机。 ハンガーにかけられた見たくもない制服。
ここは、どう見ても現実の僕の部屋だった。
トントンッと扉がノックされた音が聞こえ「はい」と答える。 そうして入ってきたのはすでにスーツに着替え終えた母だった。
「あんたまだ寝てたの? お母さんもう仕事にでるから家の戸締りお願いね。 あっ。 今月のお小遣いはリビングのテーブルの上に置いてあるから好きに使ってね。 それじゃ行ってきます。」
「あっ・・・いってらっしゃい。」
バタバタと忙しそうに母は駆け足で家を出て行った。
僕は母がでた後すぐに顔を洗いに洗面所に向かい、その途中にリビングに立ち寄った。 そこには母が言った通りテーブルにお札が五枚ほど置かれており、そのすぐ近くには焼かれたパンと目玉焼きが乗ったお皿が置かれていた。
いつもは点けないテレビの電源を入れると朝のテレビニュースが流れている。
見た事がある有名人のニュースや最近あった事件のニュースなどが色々と放送されている。
そんなテレビの音が広いリビングの部屋に響き渡ってようやく実感した。
「あぁ・・。 あれは夢だっだんだ。」
その時、僕の心の中で、何かが小さくなった感覚を感じた。
◆ ◇ ◆ ◇
いつも通り学校に通い昼休みとなり、僕は3人の同級生に囲まれながら屋上に連れていかれた。 この学校では生徒が無断で屋上に入る事は禁止されているのだが、何故かその3人組のリーダー各である茶髪で耳にピアスを開けてる生徒は屋上のカギを持っていた。
「オラ、さっさと行けよ。」
僕の後ろで逃げないようについて来ていた2人が屋上に足を踏み入れない僕の背中を押して無理矢理屋上に足を踏み入れさせた。
「さ~て、メガネ君。 ちょっと面白いゲームしようぜ。」
メガネ君とは僕の事だ。 僕は家以外では常に眼鏡をかけて生活している。
「げ、ゲーム?」
「あぁ、ゲームだ! 実は俺、最近何にも楽しく感じる事がなくてさぁ~。 退屈してんの人生に。」
茶髪の生徒はゆっくりと僕に近づくと肩に腕を回し寄せた。 僕はただそれだけで恐怖を感じてしまい肩が震えてしまう。
その様子を見て茶髪の生徒は何処か面白そうという表情を向けた。
「なぁ~に。 そんなに緊張すんなよ。 ものすご~く簡単なゲームだからさ。」
茶髪の生徒は耳元に小声でそういうと後ろにいた2人の生徒がクスクスと笑っているのが視界に入る。
「ほら、あれ。 見てみろよ。」
そう言って茶髪の生徒が指をさした場所には屋上のフェンスの外に何かが縄のような物が縛られているのが見える。 そしてその先には人の足か腕くらいの太さが入る輪っかが作られているのを見て僕は足を一歩後ろに下げた。
「おいおい。 何処に行くんだよメガネ君?」
逃げようとした。 だけど無理だった。 僕が逃げないように茶髪の生徒は体をしっかりと固定して、扉付近にはあの2人の生徒がニヤニヤと笑いながら立ち塞がっている。
「さぁー! ゲームの始まりだ! お題はそうだな~・・・【手作りスカイダイビングをやってみた!】でどうだ! 最近そういうの流行ってるらしいしな! ギャハハハハハ!!」
茶髪の生徒は高笑いに大声で笑い、それにつられるように2人も大声で笑う。
そんな中、僕はただ恐怖で身動きが取れなくなっていた。
フェンスに結ばれている縄はどう見てもただ肩結びしただけの状態だ。 しかも縄自体は古くて学校の倉庫か何処かで眠っていたのを盗んできたのか見た目だけで痛んでいるのが分かる。
もしもそんな状態の縄で学校の屋上から飛び降りれば確実に縄は千切れて落下してしまう。
逃げなきゃ・・逃げなきゃにげなきゃニゲナキャ逃げなきゃにげなきゃ逃げなきゃ!!!
だけど、僕の足はただ茶髪の生徒に押されるがまま屋上のフェンスまで進んでいた。
「そんなに心配すんなって! 一回俺が実践してるから大丈夫だって!」
―――そんな訳ない。 それなら君は無事でいる筈がないのだから。
「それに、もしここでお前が飛べば俺はお前の事見直すよ! いやホントだって!」
―――そんな訳ない。 どうせ飛び降りて無事だったとしても君は「つまらない」といってまた僕をイジメる。
茶髪の生徒が僕に対して他にも色々と言っていたような気がしたが、僕はもう頭が働かず何も聞こえなくなっていた。
「ほらこれで準備OK! それじゃ幸運を! けいれーい!」
何かの映画かドラマで見たのだろうか茶髪の生徒は笑顔で敬礼した。 すろと後ろの2人は腹を抱えながら笑っている。
いつの間にこんな所まで来ていたのか分からない。 でも僕はもう屋上のフェンスを越え、右足首には痛んだ縄が結ばれている。
「「「飛ーべ! 飛ーべ! 飛ーべ!」」」
後ろでは3人が手拍子で僕がここから飛ぶように声を上げる。
(イヤだ・・無理だ・・死にたくない・・)
だけど、僕はそれが口に出なかった。 足も震え一歩もその場から動けない。
校庭で昼休みにサッカーをしていた生徒やお昼を食べていた生徒達が僕に気が付いてザワザワと騒がしくなってきた。
茶髪の生徒も気が付いたのかさっきまでの笑顔は消えて苛立ってきている。
「オラッさっさと飛べよ弱虫がァ! お前みたいなグズ少しくらい退屈な俺の人生に刺激を与えるくらいしてみろやゴラァ!!?」
荒がる声がさらに僕に恐怖心が襲う。
(もういやだ・・何で僕がこんな目に・・なんで・・なんで・・・)
その時だった。 フッと視界が下に向いた時思い浮かんだ。
もしもこのまま飛び降りて死ねば、こんな人生を終えれるのではないかと。
(そうだ。 どうせこのまま生きてても良い事ないし・・それなら今・・)
すると自然と恐怖心は消え、逆に期待する気持ちが強くなった。
足も震えが止まり足が一歩前に出る。
(あぁ・・これでやっと終われる・・)
校庭から生徒達の叫び声が聞こえる。
体は徐々に前へ倒れていき肌に感じる風が強くなっていく。 そして僕はゆっくりと目を瞑った。
・・・僕の現実はこれで終わった。
「おいおい。 何やってんだよお前は。」
もう屋上から落ちたと思っていた僕の耳元に誰かの声が聞こえた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
自分でも書いていて今回の話はどうかと思う所もあったのですが次回の話に繋げようとして今回の様な【過激なイジメ】のような表現になってしまったかもしれません。
もし今回のお話に不評のような事があれば削除させて頂く事もあるかもしれませんがご了承ください。
それでは次回もどうかよろしくお願い致します。