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夢の異世界  作者: 黄田 望
3/14

嬉しい会話


 それは普段と変わらない日常だった。

 学校に行き、勉強して学校が終わり、家に帰って晩御飯を食べて、そして漫画か小説を見てから寝る。

 いつもと変わらないつまらない現実の中で僕は眠ったその日、不思議な事が起きた。


 ベッドに横になり目を瞑る。 そして何となく目を開けたその時、僕が見た光景は見た事もない景色が広がっていた。


 「なんだ・・ここは!!」


 空には紅い太陽と蒼い太陽が2つ並び、雲はまるで大きな龍のような動きをしながら漂っている。

 さらに凄いは島だ。 島が浮いて風に乗って移動している。 その島々には沢山の生き物がチラホラ見えてまるで島1つ分の大きな動物園のようだ。

 そしてそこで気が付いた。 空飛ぶ島を上から眺め沢山の生き物を眺めている事で自分が今どの立ち位置にいるのか。

 それは空を飛んでいるというロマンがある言いまわしではなく、言葉通り空から落ちているのだ。


 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 空から落ちるなど変凡な日常を送っていた僕には体験したことがない日常で、落下しているスピードで態勢は整えられず、体全体がグルグルと周りながら落下しているのが分かる。

 その間にも色々な見た事もない物が沢山視界に映り、一番驚いたのは僕のすぐ横に大きなドラゴンが飛んで行った。

 あまりにも大きくて迫力ある景色を見て落下している事を一瞬忘れてしまった僕は、次に視界が地上に向いた時、更に驚いた。

 地上は地平線の彼方まで続く陸があり、そこには無数に広がる森があった。 そして地平の彼方まで広がる森よりもさらに大きく、空を突き破り、地上を覆うような木が立っていた。

 その景色はあまりにも圧巻で、僕の人生で一番気持ちが高揚した瞬間だった。

 しかしあまりにも現実離れした光景で頭が付いてこなかった事もあり、僕はそのまま地上の森の中に落下していった。


 そして夢はここで終わる。

 僕はいつも現実に目を覚まして後悔するのだ。 もしもあのまま不思議な景色が広がる夢の異世界で人生を過ごせればどれだけ楽しくて幸せな日常になるのだろうと。



 ◆◆◆


 意識がハッキリとしてきた頃、「あぁ・・また現実か」と目を開ける前に心の中で溜息を吐いた。

 またつまらない1日の日常が始まる。 そう考えた時、いつもなら聞こえてくる目覚まし時計の音が全く聞こえてこない。 

 その代わり、聴いた事もない動物のような鳴き声がすぐ耳元から聞こえてくる。

 片目だけゆっくりと目を開けると、僕の顔をまるで覗き込むような形でその動物が立っていた。


 「バウッ!」


 その生き物はそう鳴いた。

 

 「なんだ? 君は・・」

 「バウッ! バウバゥ!」


 まるで僕の言葉が理解出来ているようで、動きの表現が自己紹介しているようだ。 しかし困った事に言葉は通じず俺は頭を捻らしていた。

 その動物の見た目は四足歩行で全身蒼い毛並みをしておる。 そして一番特徴的だったのは鼻だ。 体型は四肢が短く尾も短いが鼻が上唇と一緒に伸びており象の鼻のように動く。

 毛色以外で上手く例えるなら【バグ】という動物に似ていると思う。


 「チビー! チビ助ー!!」


 すぐ近くから女性の声が聞こえて来た。 誰かを呼んでいるようだったが、女性の声が聞こえた途端、バグに似た生き物は大きな声で「バーゥ!」と泣いた。


 「あっ! こらチビ! 勝手に離れたらダメじゃ・・あら?」


 まるでジャングルの様な森林から出てきたのは見た事もない服装をして綺麗な紅い髪をした女性だった。

年齢は恐らく僕と同じ年か少し年上の様な感じだ。


 「貴方・・こんな所でどうしたの?」

 「えっ・・あのその・・僕は・・」


 僕は普段から人と話さないし歳が近い女の子と話す事など滅多にない。 そのせいでいつも他人と会話すると言葉に詰まり上手く話せないのだ。

 そのせいで僕は学校でよくイジメの標的にされる事が多い。 同じクラスの女子からもよく暗くて気持ち悪いと小声で話している所を聞いてしまった事がある。


 「ん~? どうしたの?」


 だから今目の前にいるこの子も気味悪がってこのまま離れるのだと思っていた。 だけど彼女は気味悪がるどころか顔を近づかせて僕が上手く話すまで耳を傾けて待ってくれたのだ。

 

 「ん? あれ? ど、どうしたの! どこか痛いの? 怪我してるの?!」


 たったそれだけの行動なのに、僕にとってそれはとても嬉しい気持ちになって自然と目から涙が零れ落ちた。


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