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122. ときめいて静かに
ときめいて静かに
それは真夏の夜のこと
低い天井の扇風機が緩く回っていて
生温い空気を浅く攪拌している
あなたは日焼けした素肌を晒したまま
私の小さく紅い唇をふさぎ
私は広いあなたの背中へと
白く細い指を這わせる
あなたはどこまでも深く私を求め
私はあなたと共に……
嗚呼、
あなたは私の愛しい人
誰よりもかけがえのない存在
なのに
私たちはどこまでも罪深く
決して神の赦しを得られないまま
この真夏の底へと落ちてゆく
それは真夏の夜のこと
ときめいて静かに……




