表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/164

序章

 漆黒の夜闇を一筋の眩い光が走った。垂直に。一秒にも満たない一瞬の間。

 耳鳴りでも聴こえてきそうなほどに静寂な夜の森でその光を見たのは、たった二人だけだった。ーーいや、正確に言うとたった今三人になったか。


 二体一身の塊がその一閃を受けて真っ二つになっていた。重力によって通り雨で濡れた地面へ落下した二つの塊は、人気の無い森に地響きにも似た衝撃をもたらす。


「……な、何が起きたんだよっ!!」


 ややあって、三人のうち倒れていない一人が恐怖とも驚愕とも取れる叫び声を上げた。夜目でもわかるがっしりとした体つき。身長は高く180cm前後はあるだろうか。声はまだ若々しく大人というよりは少年の印象を思わせる。


 ところが、少年の前に転がっている二つの塊はそんな少年の身長を優に超えるほどの大きさの巨大な塊だった。


「何で? いきなりどうしたって言うんだよ! ……な!?」


 ようやく少年はもっと重大な事実に気が付いたようだった。現実離れしているが間違いなく今このときに起こっている事実。すなわち、自分が実際に見たこともなければ触ったこともないはずの月のように輝く凶器が、自分の両の手にしっかりと握られていたのだ。


 少年は震える手でその凶器を頭上高く掲げた。凶器と言えば確かに凶器。それ以外に本来の用途は見当たらない物である。だがそれはただの凶器ではなかった。


 月の無い夜に自ら光るその刀身は鋭く長く、耳を澄ませば今にもかん高い金属音が聞こえてきそうだった。


「……か、刀?」


 なぜ自分がその刀を握っているのか問う暇は、しかし少年にはなかった。


「オォォォ……オォォォ……」


 倒れた二つの塊が、背中に悪寒すら走らせる低い唸り声を発しながらゆっくりと起き上がった。


 少年は我を忘れて元来た道を駆け戻るしか選択肢がなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ