【地下洞窟の賢者】
下手ですが哲学的な短いの書いてみました。読んでいただければ幸いです^^
私は世界でも五本の指に入ると言われている大賢者。
すなわち世界でも私ほど頭のいいものは他に四人しかいないのです。
私はその知性ゆえに、その自分の力を世の私利私欲に使われぬため、
世のざれごとから逃れるように、世界から身をひそめました。
その場所は人間のいる地上から数千メートル地下。
魔物のいる魔の世界からは数千メートル地上。
地上と魔界の中間地点であり分岐点。
私はそこで地下の草やきのこを主食に、
たまには術で作り出した木の実
などを食べて生活しています。
落ち着いた私好みの暮らしです。
さて、ここでひとつ言っておきたいのですが私は
一人暮らしではないということ。
今もベッドに一人ずつ男女が寝ているのです。
そう、それは二度と起きないような深い眠り。
私がこの男女を術で深い眠りにつかせました。
そうしなければいけなかった……。
世界の秩序を保つために。
それはこんないきさつでした。
――ある日、魔の世界から女性がひとりやってきました。
なにやら謎めいた女性でした。
その女性は「惚れた男の人がいるから、けれどその人は
絶対に私に惚れないだろうからあなた様に惚れ薬を作って欲しい」
と言ってきました。
その女性から魔力を感じた私は「自分で作ったらどうですか?」
とたずねました。
すると女性は「立場上それはできない。あってはならないこと。
使うのだってこっそりと誰にも気づかれないように……」と言いました。
私は「あなたのような魅惑的な女性ならきっと惚れ薬など使わなくても
男性はイチコロですよ」と言いました。
そうすると女性は「あなたのような賢きものが言うならば信じられますわ」
と喜んで帰っていきました。
それから数日後、今度は男性がやってきました。
その男性は正直者で、「自分は地上の勇ましき人間。
今から魔界の魔王を討伐に行くところです。あなた様は世界屈指の大賢者。
どうか仲間になって欲しい」
と言ってきました。
私は「あなたのような勇ましい人間には精気のない私は
きっと足でまといになる」と言いました。
すると残念がりながらも、その後すぐに笑顔になり
「きっと魔王の亡きがらを、魔界から地上に戻る時にあなたに見せに来ます」
と言いました。
その男の言葉からは精気がみなぎり、
なにか本当にやってくれそうだな、と思いました。
それから数日後のことです。
私の耳に人間が魔王を討伐したという知らせが届きました。
あの男がやってくれたのだなと思いました。
それからまた数日後、あの話通り正直に
確かにその男は魔王を連れてきました。
しかしそれは生きたまま。
さらに驚くことは、なんとその魔王はずいぶん前に私に、
惚れ薬を作って欲しいと言ってきた女性だったのです。
二人は神妙な面持ちでした。
訳を聞くとこの勇ましき男は、魔王が女だと知り
ショックを受けたが世界平和のためと戦いを挑んだ。
しかし、戦いの中でなぜかその魔王の女を好きになってしまい
とどめをさせなかったと、なんとも正直に言います。
私は魔王の女性が惚れ薬をこの男に使ったのだなとすぐに気づきました。
女性は「私は自分の立場として魔界の鏡で勇者を観察していた。
おかしなことですが、勇者が人間に悪さをしている魔物を倒し、人間から
感謝されている姿を見ていて、この男を好きになってしまったのです」
と言います。
私は魔王も人のような心を持っているのだなと感心しました。
その後、二人は魔界から見つからぬように逃げてきたので疲れた、
どうか一晩泊めてほしいと言ってきたので泊めることにしました。
しかしここで、二人が眠りにつくと私は不意に思った。
このままこの二人を地上に行かせていいものなのかと。
二人共地上に行けば世界は混沌とするだけなのではないかと。
そこで私は考えました。
例えば片方だけ眠りにつかせて、もう片方だけ起こすのはどうだろう?と。
もし起こすそれが勇者ならば、おそらく私の理由を聞けば納得するだろう。
しかし正直者のこの男は、必ず魔王の女性と恋に落ち、
殺さずに生かしてしまったことを世界に告げるだろう。
そうなれば世界は混沌とすることになる。
ならば逆に魔王の女性だけを起こすのはどうだろうと考えた。
それはすぐにまずいと思った。惚れ薬などを使ってまで
勇者に心酔している女性が、自分だけが目覚めて、
ただで納得するはずがない。
必ず男を起こそうとするだろう。下手をすれば私の命にも関わる。
……結局私が出した結論は、本当の結論になってはいないが、
術をかけ二人をここにとどまらせることだった。
世のざれごとから逃れるように住んだこの地下洞窟で、
私は眠れる男女を見ながら、今日も悩んでいる。
【END】
読んでいただきありがとうございました^^