グッド・フォー・ナッシング_2
「あんた! ちょっと出なさいな、私洗濯で手が離せないんだから!」
「ふぅぁん……はいよー……」
彼は欠伸混じりに母親に返事を返すと食べかけの朝食を後に、起きかけの体を引きずり、玄関に向かった。
「ニート様でお間違いないですか? お届け物です! サインお願いします!!!」
「あいよ」
開けたドアの先に屈託のない笑顔。
自分とは正反対の目をした、よく見れば、僅かながら獣の特徴を残した配達の男に嫌気がさしつつも、彼は短く返事をして受理証明書にサインした。
「ありがとうございます!!!」
そう言うと亜人の配達人は元気よく走り去って行った。
「亜人か、久し振りに見たなーーいや……」
片田舎に亜人がいるのも珍しいが、人と話すこと自体が久し振りだった気がして彼は鼻を鳴らした。
受け取った小包の中身はよくわからないがそれほど重くなかった。
しかし、宛名には『ニート・ジーク様』と俺の名前が書いてあった。
「俺宛?……誰が?」
ニートは長い間、人と関わりを持たず、それでいて自由に自然の中で過ごし、この村で育った。
故にそれほど顔の広いわけでは無い彼に誰が荷物などを送るのだろうか、送り主の正体が分からないという事もあり彼は少々不安を覚えた。
だがニートは今、それどころではない。
彼は朝食のスープが冷める前にそそくさ居間に戻るのだった。
ニートはそうゆう男だった。