表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3:魔法が使える人は皆チートだと思う

 

 あれから暫く経っての事だ。


「アレスー、ちょっと話があるんだけど良い?」


「ん、大丈夫だけど、何かあったのか?」


「えっとね、商人さんのお手伝いの事なんだけど......」


 どうやらマリアさんと商人の偉い人が話し合った結果、アレスを更に成長させるべく、学園に入学させてみてはどうかという結論に至ったらしい。

 そのくらい、あの試験を全問正解したのは凄かったという事みたいね。

 特に私達には実感は感じられないけど、まぁそれは仕方ないでしょう。

 ついでに、アレスは剣の練習を毎日欠かさずやっていたので、その方面も鍛えておきたいとのことだ。

 自衛出来る商人は珍しいし使えるらしい。


『それにしても学園ねぇ〜』


『ん? 何かあるのか?』


『何か色々と上手くいってるなぁって思ったのよ。 学園なら寮生活になるだろうし私の自由時間も増えるかしらね』


『もしかして......それがテストを満点にさせる本当の目的だったのか......ッ!?』


『んなわけないでしょうが、たまたまよ』


 こんなバカとの会話は置いておいておくとして、学園っていってもどんな所なのかしら? 日本で言う寮生活の学校だとして、何を学ぶんでしょうね。 商人って事だから数学や政治メインとか?

 なるほど、ここで政令が......いや、ありえないありえない。


「しかし俺が学校か......その分借金とかも出てくるだろうし責任重大だな」


「そうね、これは私達孤児院と商人さん達の結構な賭けになって来たりするわ。 とりあえずアレスはそこまで気を張らなくても良いから、頑張ってみなさい」


「それを聞いて気を張らないような奴は居ないと思うんだけど......」


「それと、貴方の使える魔力の量を調べておきなさいって言われたから、これを触ってみて」


 そう言いながらマリアさんが取り出したのは球状の形をした透明な物体。

 占いに使う水晶玉みたいな物に似てるわね。

 それをアレスが警戒せずにぺたっと触るとほのかに光り出した。

 これは何か聞くとか少しは警戒して欲しいなぁ......

 恐らく明るく光れば光るほど魔力が多い、みたいなものなんだろう。


「うーん、これぐらいか。魔力は普通って所かな」


「普通かぁ......」


『そこまで貴方はチートでは無かったって事ね。 可哀想に......』


『魔法バンバン使いたかったんだけどなぁ、くっそ悔しい』


「まぁ、これは本人の魔力の量であって、相方の精霊の魔力とは関係ないから大丈夫よ。 私の場合は魔力は結構あるけど精霊の力がちょっと弱いから」


 そうマリアさんが言いながら水晶玉もどきに触るとアレスよりもかなり眩しい光を放つ。


「うぉっ!眩しっ! 精霊の力はまた別なんですか?」


「ええ、精霊の力はまだどのぐらいの力があるかというのははっきり調べることが出来ないのよね。 精霊を取り出せば別なんだろうけど......」


 ということはあれだ。

 私が表になって触ってみたら明るさも変わるのかしら?

 ......気になるわね。

 夜になって皆が寝たら確かめてみましょう。


「そういえばマリアさん。 魔力とか精霊とか存在だけでどう使うかとかは知らないんですが、ついでに教えて貰っても良いですか?」


 おし、よく聞いたアレス。

 私も自分の事は詳しく知っておきたいし魔法も放てるかどうか試してみたい。

 アレスの魔力は普通だけど私の魔力はチートな可能性があるのだ。

 チートは大事。


「あー......そういえば教えて無かったわね。 まさか使うようになるとは私も思って無かったし、ちょっと待ってねそんな感じの教本がここにもあったはず」


 そしてマリアさんが本棚を漁り一冊の本を取り出す。

 そしてアレスに渡した。

 えーっとタイトルは何々?


「『バカでもわかる日常生活に使う魔法教書』」


 うーん、ちょっと変なタイトルね......


「私も忙しいし、とりあえずはそれ読んで勉強してみなさいー。 わからないところがあったら私も教えるから」


「はーい」


 そう言ってマリアさんは孤児院の掃除を始める。

 そしてアレスが本に目を向け、それを開く。

 そこまで厚くないようだから簡単に読めそうね。


『さて、じゃあ読んでみるか』


『そうね、とりあえず勉強してみましょう』



 ◆


 とりあえず内容としては簡単で面白かったから纏めてみよう。


 1. 魔力とは何か


 魔力とは魔法を使う時に使うものである。

 魔力は活動を休止、つまり気絶や睡眠してると次第に回復するというものだ。

 ここはファンタジーでよく見るような設定ね、結構ありきたりだけど納得は出来る。


 2. 精霊とは何か


 精霊とは人の中に一体暮らしている別の生命体である。

 精霊の能力と人体の能力は全く関係なく、精霊の能力は計る事が現在出来ていない。

 だが、ある程度の能力差は存在している事は知られている。

 日常生活には特に使う事もない為か、解説はあまりなかった。

 詳しく知りたかった分ちょっと残念ね。



 3. 魔法をどうやって放つのか


 まず、魔法を使うには魔力、または魔石と呼ばれる魔力を含む石から魔力を取り出して発動という二つの方法がある。

 魔石の中にある魔力を全て使い切ると魔石は壊れてしまう。

 要するに使い捨てって事ね。


 それで、魔法を使うには術式、または詠唱が必要になるらしい。

 術式ってのは魔法陣やお札などの媒体を使うもの、この媒体は一度書いてしまえば何回かは繰り返しで使えるわね。

 詠唱はそのまま呪文を唱えること。

 術式の場合多くの魔力を使用しないで発動出来るみたいだけど、単純になってしまうみたい。

 例えば火の玉を発動するとしても大きさを変えたり速度を早くすることとかは出来ず、全て均等になっちゃうとか。

 だから設置型の罠だったり、簡単な治療術に使うみたい。

 それで詠唱は魔法を放つ際に魔力の移動をスムーズに行わせる為の補助として使う。

 だから有る程度コツを掴んでいくと徐々に短い詠唱でも発動出来るようになっていって、最終的に無詠唱で使えるようになるってわけだ。

 ただ、詠唱に頼りきってるとちゃんと詠唱を言わないと発動出来ない身体になってしまうらしい。

 その状態で戦闘をやる羽目になるのは致命的ね。



『ふーん、じゃあ一回魔法が使えるかどうかここに書いてある詠唱読んでみたら?』


『お、おう。 中々緊張するもんだな......』


 人差し指をたて、そこに具現出来るように呪文を唱える。


「汝が求む、大いなる火の加護において暗闇を照らせ、微かなる光よ具現せよ。 ティンダー」


 簡単に言おう。

 ......アレスの指がちょっと燃えた。


「あっつ! あっつうううう! え、これどうやって解除すんのあっつ!?」


 アレスの指からマッチの炎ぐらいの大きさの火が現れ、輝き続ける。

 正直バカとしか言いようがない。


『何やってんのよあんたは! 普通は水とかあんまり被害がないものからやるに決まってるでしょうが!!』


『いや、魔法って言ったらファイアーボールだろ』


『その概念をまずは捨てなさい!』


「ってかこれどうやったら消えるのさ! あっつ、あっつううう!」


 そのあと、ちゃんとマリアさんに助けて貰ってマリアさんの治療術で指も何とかなりました。

 彼女によると魔法を解除する為には冷静になって念じれば普通に解除出来るみたい、多分アレスが焦ってたから解除出来なかったんでしょう。

 水を出す魔法、とかだったら水を出して終わりだったのに簡易的な火を持続させて出す魔法のせいでとんだとばっちりを受けたわね......(マリアさんから更に聞いた話だと、ティンダーでも対象を指じゃなくて松明や別のものにすれば大丈夫らしい、でもそれをやってしまうと今頃孤児院が火事になってたわねって凄いアレスが怒られてた、いい気味だ)


 とりあえず魔法は普通に使えた。

 このあとで、アレスが自分の魔力総量がどれだけあるか確認すると言って水を結構出してそのまま眠ってしまった。

 魔力総量を増やすには筋肉を痛めつけて鍛える、みたいな感じとほぼ一緒らしい。

 だからその行動は間違って無かったみたいね。




 ◆


 そして私の時代がやってくる。

 アレスが気絶したように眠りだし、他の孤児院の皆も眠りだした頃にアレスから身体の使用権限を奪う。

 アレスの身体がほのかに光り、形状が変わっていく。

 鍛えて少し筋肉が付いていた身体は細くなり、黒い髪の毛は白くなって肩にかかるまで伸びる。

 ......そして私の身体になるのだ。


 昔、始めて見た時は本当にびっくりしたけどね。

 私は何で精霊で、自由に言葉を話したり出来ないんだろうなぁって思っていたら急にアレスの身体が変化して私の身体になったから本当に驚いた。

 要するに念じれば身体の使用権限を奪えるっぽい。


「ん〜、やっぱり自分の身体を操れるって良いわ」


 小さい声でそう呟き、孤児院から出て、井戸から水を汲んで濡れタオルを作り身体を拭く。

 私はお風呂が好きだった。

 だが、孤児院に風呂なんて有るはずもなく、気が向いたら皆を起こさないようにしながらこうやって身体を拭くので満足だ。

 そこまでこの身体が表に出てくる訳ではないが、やっぱり清潔にはしておきたい。


 と、まぁそれは置いておいて。

 まずは本題だ。

 マリアさんが隅にかたずけて有る水晶玉を取り出して触ってみないとね。

 アレスと同じぐらいの魔力だったらそれで良いし、かなり多かったらそれはそれで嬉しい。

 正直期待している。

 私も魔法は大好きだし。


「さーって、どうなるかな〜」


 箱を開け、水晶をくるんでいる布をどかし、手に触れる。

 すると水晶玉が光りだし......あ、ちょっと待ってこれヤバイ。


「——っ!ああああぁ......」


 急いで水晶玉から手を離して目を押さえて地面に転がる。

 目がっ!目があああああああ!

 明るかったら良かったけど夜で暗闇に慣れたこの目にその直射光線はヤバイ、痛い。

 三分間待ってくれる人の気持ちが私もよく分かったわこれ。


 普通の夜だった。

 そんな夜に孤児院が突如光り出す。

 幸い寝ている人は何も気付かなかったが、起きている人は少し不思議に思ったのであるってレベルの光よこれ......


 とりあえず私の魔力はかなり多かったということが発覚したって訳だ。



 チートがあるって分かって万々歳だね!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ