2:何か刺激的な事を期待していたがそんな事はなく日常が過ぎ去った
そんなこんなで、赤ん坊から私達はやり直しになった。
気付いた時は孤児院の中に居たわね、後から孤児院の管理人をやって居るマリアさんという方に聞いたのだけれど、どうやら私達は孤児院の入り口に箱の中に入れられて捨てられていたらしい。
で、そこにはご丁寧にネームプレート付き。
そこにアレスと名前も書かれてたらしい。
流石神、用意がいいね。
ちなみにひとつだけだった。
......おい神、私の名前何処にやった。
それはこの世界の特徴、精霊と人間が一心同体という事に深く関わることもあって、少しは納得しているが、何故こうなったかは納得出来ていない。
とりあえずそれは置いといて、現在私達は12歳。
孤児院の事について話していこうかな。
「孤児院には3つのリンゴがあります!そこで、マリアさんが2つのリンゴを買ってきました!では、今孤児院には何個のリンゴがあるでしょう?」
まず、あそこで問題だしてるのが孤児院のお隣に存在する教会の神父さんの娘、エリンシア。
黄色の髪をポニーテールにしている子ね、胸はまだ育って居ないので測定不能。
孤児院の運営費は、とある商会から援助してもらっていて、その代わりに孤児院の子供が成長したら商会の仕事をするっていうサイクルになってる。
だからこの孤児院に居る子供達は将来は商人の仕事をする為に数学を少し学ばないといけない。
それを今までマリアさんが教えていたのだけど、後を継ぐようにエリンシアが教えているってわけ。
だからこの孤児院の子供達は就職が決まってるぶん結構良い環境だと思う。
「はい!13個です!」
「......どうしてその答えになったのかな?ルーク君」
「え?今孤児院には13個のリンゴが有るよ?」
「あれ?」
まぁでも教師やってるエリンシアは少し抜けてるとこもあってね。
「おい、エリン。それはお前の問題が悪いわ、あれを見てみろ」
と、アレスが指を指した方向には13個のリンゴが入った籠がある。
「ここに13個のりんごがあるんだからそのまま答えちゃうだろうが」
「あー!なるほどね、アレンありがとう!」
「いえいえ、どういたしまして。俺は木の剣振り回してるから何かあったら呼んでくれ」
そう言ってアレンは孤児院の庭に向かう。
まぁエリンシアはまだ14歳だし仕方ないと思うけどね。
それよりも......
『ねぇアレス。貴方まだ12歳なのに木の剣振り回すなんて早期の厨二病なのかしら?まだ症状も軽い方だし、早く矯正した方が身のためよ』
『だから俺は厨二病じゃねぇ!剣を振り回してるのはただの体作りだ!——ったく、この12年だいぶ慣れてきたが罵倒しか言わないんだな......』
アレスはそう言いながら、ため息をつく素振りをする。
『だって暇なんだもの、私が話せるの貴方しか居ないし、なんで貴方が表の存在なのかしらね〜』
『それは仕方が無いだろ、神に聞け。......まぁ俺もお前と同じ事になったら耐えられないと思うけどな。なるべくティアが表に出られるように行動するからそれで許してくれると嬉しい』
『それで許したらアレス。貴方、内心でこいつチョロいとか思うんでしょうが』
『......黙秘権を行使する』
こっちも伊達に12年間貴方と付き合ってません。
貴方の考えてる事なんかお見通しよ!
まぁそれは置いといて、とりあえずちゃんとこの事について説明しないとね。
この世界、アレスティアはあのロボットもどきの神が言っていたように、人間と精霊が一体化した世界。
一人の人間には必ず、精霊と呼ばれる存在が宿っており、その精霊が人間に力を貸して、魔法とかの補助をするらしい。
高位の精霊だと、宿主の人間とだけ会話ができたりもする。
と、なってるから私は精霊に転生をしたのかと思ったけど少し違った。
上の会話を見て察することが出来るかもしれないが、アレスの姿から、私の姿に切り替える事が出来る。
えーっと......説明しにくいわね、つまり二重人格の人間が人格が変わる時、変身するって感じかしらね?
今はアレスが表だから身体の性別は男だけど、私が表になったら身体の性別が女になるとも言えるかな。
まぁこれだけの説明で何と無く察する事が出来るでしょ、うん。
そんなこんなで、私の名前はアレスティアの残りのティアになったわけさ。
もっと可愛い名前にしても良かったと思うがわかりやすいんだから仕方ない。
ここが地球だったら地君と球ちゃんって所だ。
それだったら自分でも違和感結構あるわね...
そして、アレスが木の剣を振り続け一時間ぐらいが経過した時。
「たっだいまー!予想してたよりも結構時間がかかっちゃった、ゴメンねアレス!」
孤児院の主マリアさん帰還です。
その後ろに1人男の人が着いて来てる。
マリアさんはファンタジーでよく見るような修道服を着てて、とても優しい性格の人。
胸もその優しさを含んでいるのか、かなりの大きさだ。
あれはやばい。
何がやばいってあれに抱きつかれたらもう凄い。
「あ、マリアさんおかえりー、大丈夫大丈夫、剣の練習してたしそこまで気にしてなかったや......それで後ろの人が商人さんかな? 始めまして、アレスです」
と、こいつが一礼。
......雑に話してる奴が敬語を使うと本当に気持ち悪いわね。
病気にでもなったのかと心配を通り越して引く。
「ああ、君がマリアが言っていた アレス君か。私はベルツ。フェルギス商会で働いてる商人さ」
後ろにいた人が口を開ける。
マリアさんに似て優しそうな人だけど、商人というだけで警戒してしまう。
そもそも商人に良いイメージがないのよね、そう思っちゃう私も私だけど。
......なんで?って聞かれたらなんとなくって返すと思う。
まぁ、この人はアレスが12歳になってそろそろ孤児院から卒業、そして商人のお手伝いの仕事をするようにさせる為にアレスがどのくらいの仕事が出来るかの確認に来た人だ。
私が警戒しても意味ないしとりあえずは大丈夫か。
「ベルツさんですね、この度はよろしくお願いします」
「ああ、そう畏まらなくても大丈夫だよ。私もそこまで偉い立場じゃないしね」
そんなこと言われても困るのはこっちなんだけどねぇ、敬語に慣れてる元日本人って辛い。
「ああ、はい。 了解しました......それで、俺は何をすれば?」
「ああっと、そうだね。 正直その態度をみて何の問題もなさそうだなぁって思っちゃったけど、とりあえず簡単な試験をやってもらうよ」
「アレスなら大丈夫、頑張ってね〜」
と手を振りつつ、マリアさんは買ったものの整理をやり始める。
それで、簡単な試験ってのはどうやら筆記のようね。
ベルツさんは一枚の紙とペンをアレスに渡す。
「これを解けば良いんですか?」
「ああ、終わったら教えてくれ」
そう言われてアレスは問題を解き始めた。
『五番の問題計算ミスしてるわよ、全問正解ぐらいはしておきなさい』
『うぉっと、マジか。 ありがとティア』
『それで、この国の消費税は10%で高級品の場合は15%よ。 5%でも8%でもないから気をつけなさい』
『それは流石に覚えてるから大丈夫......ってあれ? 鏡って高級品か?』
『品質によるけど一応、高級品ね』
と、サポートをしてあげたりはするけど合格は確定でしょうね。
前世ではあまり勉強してなかったから辛いこともあったけど、これぐらいだったら問題ない。
——そして問題も時終わってアレスは提出し、見事満点を取れたのである。
......まぁ、私のおかげだけどね。