プロローグ…ースベテのハジマリー…
プロローグ
赤い。熟れた柘榴のように、とても濃い赤。
遠目でもハッキリ見えるような赤い華。
そんな華が咲き乱れる花畑に一人の女。
ここは、何処だろうか。僕は何故?
彼女は何故ここに?
口をあけ、大きく息を吸い、言葉を紡ごうとする。
「あっ、あの、すみません!」
こちらに気づいたかのように女は、ゆっくりとふりかえる。
腰ほどまでのびた黒髪。細い手足。キツネのような柄のベネチアンマスク。花魁のように何重にも重なる着崩れた着物。
その顔は鼻から上こそ見えないが、一目で美しい顔立ちとわかる。
「…珍しいねぇ。お兄さん、迷いこんだのかい?」
にこりと顔を綻ばせ笑う。
こういう笑みを人は、妖艶というのだろうか。
「久々だねぇ。人が来るなんて…とりあえず座りな。立ち話、なんてね?」
僕はコクリと頷く。
素直に差し出された座布団に座ると彼女は微笑む。
「素直な男は嫌いじゃないよ。」
「地面に座布団を敷くなんて初めてです。」
「ふふっ……そうかい?私は地べたに座りたくないからねぇ…」
彼女は、クスクスと笑う。
僕の肩の上にのった赤い花弁を見て、
「ん?…桜か……うむ。話すこともないし、面白いハナシでも……しようか。」
にやりと笑い、ひじ掛けに寄りかかる
「ゆっくり聞いていきな。」
「それは、どんなハナシ何ですか?」
「ん?まぁ、バカな男のハナシとでも言おうかね。」
「じゃ、題名は……?」
「面倒な男だねぇ、題名は……『咲かない桜』とでも?」
さあ、聞いていきな。バカな男のハナシさ。
昔々のハナシ………
にやりと笑いながら彼女は語り始めた。