待ち伏せ
今日は、学校も早く終わったから、彼の学校の門の前で待っていた。
まだ、出てきてないよね。
半信半疑で、彼が出てくるのを待っていた。
どんな顔をするかな?
驚いた顔?
喜ぶ顔?
それとも・・・。
生徒が、徐々に門を通っていく。
時々、私を振り返ってくる人も居る。
まだかなぁ・・・。
そんな時、彼が校舎から出てきた。
あっ・・・。
私は、嬉しくて徐々に顔が綻んでいく。
けど・・・。
彼は、面倒臭そうな顔をした。
そして、声もかけられずに、そのまま目の前を素通りしていく。
エッ・・・。
う・・・そ・・・。
信じられなくて、過ぎ去っていく彼の背中を見つめた。
気付いているはずなのに・・・。
知らない顔で、通りすぎていった彼。
勝手に学校に来たから、迷惑だったのかなぁ・・・。
私は、視線を落とした。
待ってる間は、あんなにも幸せを感じたのに・・・。
今は、胸がズキズキ痛む。
ここに居ても仕方がない。
帰ろ・・・。
私は、来た道を重い足取りで戻った。
彼にとっては、私は、邪魔・・・だったのかなぁ・・・。
自然と落ち込んでいく。
だったら、何で付き合ってくれたんだろう?
彼と知り合ったのは、親友の彼氏の友達だって紹介。
お互い、フリーだったし、友達付き合いをしてた。
そして、いつの間にか、彼に対する想いが恋に変わっていた。
私から、告白して晴れてカレカノになったのに・・・。
これじゃ、私一人が浮かれてただけだよね。
バカみたい。
自然と頬を伝う雫。
とめどなく溢れ出す。
こんなにも想いが、溢れてくる。彼が好きだって想いが・・・。
なのに、結局、私一人が好きになってただけなんだね。
ドン!
前を見て歩いていなかったから、人とぶつかってしまった。
「ごめんなさい・・・」
俯いたまま謝る。
そして、その人を避けて、歩き出した。
・・・が、腕を捕まれて、気付いたら抱き締められていた。
エッ・・・。
何?
私は、ゆっくりと顔をあげた。
そこに居たのは、彼だった。
それも、苦痛な顔をした・・・。
「・・・ごめんね。ヒィック・・・私、勝手なことして・・・。もう、しないから・・・ヒックッ・・・」
私は、しゃくりながらそう言って、離れようとした。
けど、彼の腕は緩むことはなかった。
「オレこそ、ゴメン」
って、謝ってきた。
何で、謝るの?
「玲奈が、門で待っててくれたの凄く嬉しかった。と、同時に恥ずかしかったんだよ」
って・・・。
エッ・・・。
恥ずかしい・・・。
それって、私が普通の女の子だから?違う、ブスだから?
確かに莉季君は、茶髪でもきれいな顔立ちをしてて、女の子が何度も振り返るような美形だよ。
それに対して、平凡より下な私となんか釣り合うわけないよね。
「ごめんね。・・・私が、可愛くないか・・・ら・・・。声・・・かけ・・・づらいよ・・・ね」
自分でも、自覚してるから・・・。
猫ッ毛に丸顔。
何の特徴もない顔立ち。
そんな私と莉季くんが一緒にいたら、笑い者になるだけだよね。
ごめんね。
もう、来ないから……。
って、思ってたら。
「違う!玲奈は、可愛いよ。オレにとって、お前が一番可愛い。だから、そんな風に自分の事を言うな!」
莉季くんが、困ったような顔をして静かにでも、語尾を強く言う。
「オレが、恥ずかしいって言ったのは、友達にからかわれるのが、嫌だったんだよ」
って、照れた顔をする。
でもね。
今、この生徒の往来があるところで、抱き合ってるのって、恥ずかしくないの?
「莉季くん。・・・私・・・の事、好き?」
恐る恐る聞いてみた。
莉季くんと付き合うようになってから、一回も言ってくれなかったから・・・。
「好きだよ、玲奈」
莉季くんの言葉を聞いて、安心して、また涙が溢れる。
「泣き虫、玲奈」
莉季くんが、からかってくる。
「だって・・・」
「そんな、玲奈も好きだよ」
莉季くんが、私の頬を伝う涙を指で拭う。
「玲奈は?」
優しい声で聞いてきた。
「大好きだよ、莉季くん」
って、笑顔を見せた。