異界のドラゴン 1
外は大きな壁に囲まれていた。
よく見ればその上には沢山の人、人、人。
何処を見ても人で、だれもが声を上げている。
何故こんなに人がいるのか、声を上げているのか。
視線を下げ地面を見ると一人の男が立っていた。
銀色のお飾りのような鎧をつけたそこそこイケメンなお兄さんだ。
イケメンは腰につけていた鞘から、キラッと光る剣のような物を右手で握って抜き取りこちらにむける。
意味が分からず首を傾げていると、イケメンは会場内に不思議に響き渡る声で何かを叫び、こちらを睨む。
嫌な予感しかしない。
イケメンは地面を蹴ってこちらに近づくと剣を振り上げ、固まっている私の身体に剣の切っ先を突き刺した。
「イギャアーーーー!!!」
剣は身体に綺麗に突き刺さり、その痛みで私は暴れ飛び回る。
痛い、痛い、痛い!!
痛くて痛くて死にそうだ。
生まれてこの方刺された事があるわけの無い私は、尋常じゃない痛みで死にそうだ。
イケメンもとい私を刺した野郎は身体に突き刺さったままの剣の柄に掴まって呑気に飛んでいる。
少し理性が戻った私はそれが気に食わず、涙目になりながらも剣が刺さって動いて1番痛い辺りを壁にぶつけてやった。
すると丁度剣のない、野郎がいる辺りだけをバンッとたたき付けることに成功した。
野郎は壁に少し減り込んでいたがずるずると滑り落ちていく。
よし!とガッツポーズをして野郎の次の動きを見る。
だが、一向に動く気配がない。
まさか、死んだ?
怖いけど少し近づいて見てみるが全く動かない。
生まれてこの方殺人などした事があるわけのない私は、パニックに陥る。
だがこれは先に相手が刺してきたから正当防衛になるはずだし、だけど殺しちゃったとか。
後からじわじわと人を潰した感覚が身体に残る。
気持ち悪い。
何だこれ。
私が何をした。
「ウガァァアーー!!」
いきなり身体が燃える様に熱くなり、というか身体が燃えていた。
幻覚じゃない、燃えている。
身体が炎に包まれているのだ。
何なんだと見上げれば沢山の槍が私に向かって降ってきて、固い鱗の隙間をぬって刺さっていく。
じわじわと何かが身体の中に広がって痺れるような感覚。
私、死ぬの?
理性なんて吹っ飛び、壁に身体をぶつけながら天高くへと逃げる。
攻撃は来ない、人が点に見るか見えないかというところまできたが、壁はもう無いのにぶつかる感覚が合った。
出られないのかと諦めきれず数回ぶつかれば、やっとの事で私は逃げる事に成功した。
身体はもうボロボロで、それでも意識が有る限り、動ける限り私は空を飛んだ。
私は今まで知らなかった世界に来て、空想の生き物だと思っていた、ドラゴンになった。