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だいすきっ!! 『はつたいけんっ!?』

作者: 犬兎

 今日のお散歩コースはちょっと短めのBコース。でもゆあは楽しいです。なぜならここは公園を通るのです。


「ここはデミヒューマの放し飼いが全面的に許可されてる特別指定公園だからな。ほら、ゆあ。好きなとこ行って遊んで来い」


「わーいっ!!」


 お兄の説明口調になんかかまってる暇はありません。さあ、いっぱい遊ぶぞーっ!!



だいすきっ!!



 だいさんわ 『はつたいけんっ!?』



 デミヒューマはほとんど人間と一緒です。だから基本的には放し飼いです。でも、一部のデミヒューマが苦手な人たちのために凶暴な子は、お散歩の時にリードをつけるのがマナーです。でも、この公園は特別な公園で、デミヒューマ同士を好きに遊ばせるための公園なのです。ゆあは公園が大好きです。今日もいろんな子とたくさん遊びます。


「こんにちはっ!」


 元気にご挨拶。ここには野良のデミヒューマもたくさん住んでいます。そんな野良組のリーダー、しおんくんです。しおんくんは『ねこ』ですが、この辺に住んでる野良で一番偉いのです。


「ゆあじゃないかっ! 久しぶりだな」


 しおんくんには昔、お世話になったことがあります。野良時代のゆあを助けてくれたのがしおんくんなのです。恩人です。


「しおんくん、元気?」


「ああ、まあな。―――ゆあはどうだい? ともと一緒に引き取られたんだろ?」


「うん、今ね、しあわせいっぱいなの」


 そりゃよかった、としおんくんは笑顔です。

 すると、横から顔を出す謎の『ねこ』。ゆあを見て何その『いぬ』は、としおんくんを睨みます。しおんくんはとたんに慌てだします。


「いや、これは・・・そう、昔の友達だよ!」


「友達? ホントかしら?」


 あんたは別のデミヒューマにも手出すから信用できないわ、と『ねこ』の人は言います。


「ホントだって。なあ、ゆあ」


「えっ? うん、ゆあとしおんくんは友達だよ」


「ふぅん・・・」


 この人はどなたですか、とゆあが尋ねると、よくぞ聞いてくれた、としおんくんは自慢げに答える。


「俺の嫁さん。―――結婚したんだよ、俺」


「しおんくんが? ―――すごい! よかったねっ!!」


 しおんくんはニコニコ笑ってありがとな、と言ってお嫁さんのおなかに触ります。


「もうすぐ産まれるんだよ。待ちに待った俺の子供」


「わ。―――すごいな。しおんくん、パパになるの!?」


「そうだぜ~。今まで色々あったけど、ようやく俺も身を固めてマジメに生きなきゃならなくなったってワケだ」


 今まではマジメじゃなかったもんね、とゆあが言うと確かにな、としおんくんは笑い飛ばします。


「あ、っと。そろそろ時間だ。―――お兄が待ってるから帰るね」


「お、そうかい。―――じゃあ、ともによろしくな」


 しおんくんに手を振ってゆあはお兄のところに帰ります。久しぶりにしおんくんに会えてよかった。嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねて走っていると、突然後ろから何かが襲ってきたのです。


「な、なにっ!?」


「―――大人しくしてろ」


「え? いや・・・ちょっと、何するの・・・きゃあああ!」


 その頃、お兄は偶然会ったクラスメイトの千尋さんとお話中。どうやら千尋さんも『いぬ』を飼っているそうです。


「それでね、もう最近さかりが付いて困っちゃって・・・どこからかたくさん子供連れて帰ってきたときなんかびっくりしたよ」


「雄『いぬ』は大変だな。ま、その点うちのは雌だから大丈夫か」


「そうでもないよ。こんな特別区域に放し飼いにしてたらどこかの雄『いぬ』に子種撒かれて帰ってくるかもしれないんだから」


 気をつけなよ、と千尋さんは苦笑いする。そうです、今まさにその状況なんです! 助けてください! 早くしないとゆあのみさおの危機ですよ!!


「―――って、たろってば、またいなくなってるし・・・どこ行ったのかしら・・・」


「―――きゃああああ!!」


「叫び声? ―――今の声、ゆあか!?」


「あっちの方から聞こえたよ!!」


 ようやく気付いてくれた! 千尋さんとお兄がこちらにやってきます。ゆあはもう怖くて動けません。早く助けてください!!

 茂みの中にいるゆあを発見して千尋さんはあちゃあ、と顔に手を当てて呆れています。


「ごめん、その子、うちの『いぬ』・・・」


「じゃあ、こいつが「たろ」か?」


「まったく・・・先週去勢手術したばっかりだからまださかりが抜けてないのかしら? たろ~、もうそんなことしても無駄よ~。もうキンタマ取っちゃったんだからねぇ」


 千尋さんはたろを摘み上げて怒りマークの付いた笑顔で彼を睨んでいます。お兄は地面に倒れたまま動けないゆあを見て大丈夫か? と聞いてきます。


「お、お兄・・・。な、なんか、変なのが、お股にぐりぐりって・・・」


「大丈夫だから気にするな。―――ホラ、帰るぞ」


「ごめんね、ゆあちゃん。たろは私が叱っておくから」


「は、はいぃ・・・」


 散々な目に会いました。一体何なのでしょうかあの雄『いぬ』は。一体何をするつもりだったのでしょうか、とお兄に聞いても、いずれ分かるだろ、としか答えてくれません。せっかくしおんくんに子供が出来るという話を聞いて楽しかったのにすっかり台無しです。


「お兄、ゆあもそのうち子供できるかな?」


「なっ・・・突然何を言い出すんだお前は」


「―――なんでもないですよう」


 でも今はまだいいです。ゆあはお兄と一緒にいられれば、それが一番幸せなのです。


「―――そんなわけで、ともくん。しおんくんはパパになるそうです」


「―――」


「ともくんはいつパパになるの?」


「―――」


「ね、ゆあもそのうちママになれるかな?」


 ともくんは答えてくれません。けど、やっぱりともくんは親友なのです。今はゆあの相手をしてくれませんけど、きっといつか昔みたいに仲良くしてくれるのです。その日をずっと待ってますよ! おしまい。






次回予告


「ゆあ、うちの新しい警備員だ」


「あ、あれは・・・『あめりかばいそん』っ!!」



 嘘です。そんな次回はないです。

 デミヒューマに法律は無いです。野性の本能の赴くままに好きに生きるべきであるという国の判断らしいです。でも、そのせいであちこち社会問題が起きたり起きなかったり・・・。

 次回『だいすきっ!!』は、



『おふろタイムっ!!』



 ゆあとお兄のお風呂の時間!

 でも、今日はいつもと違うようです。




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