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またどこかで3-家族-  作者: かさ


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第四章 写真

講義が終わったあと。


私はキャンパスの中庭へ向かった。


昼休みの時間で、学生たちの声があちこちから聞こえてくる。


ベンチには、サークルの友達が座っていた。


美咲と遥だ。


私は手を振る。


「お疲れー」


二人は同時にこちらを見る。


でも。


ほんの一瞬だけ、空気が止まった気がした。


遥が小さく首をかしげる。


「……えっと」


美咲が言う。


「誰?」


私は笑った。


冗談だと思った。


「やだな、零だよ」


二人は顔を見合わせる。


遥が困った顔をした。


「ごめん」


少し申し訳なさそうに笑う。


「同じ学科?」


私は言葉を失った。


美咲も首をかしげている。


「初めて見た気がする」


私は無理やり笑う。


「昨日もサークルで会ったじゃん」


二人はまた顔を見合わせる。


遥が小さく首を振った。


「……ごめん、覚えてない」


その瞬間。


胸の奥がゆっくり冷たくなった。


でも。


私は笑った。


「……ごめん」


二人がこちらを見る。


私は少しだけ笑う。


「人違いだったかも」


そう言って、その場を離れた。


背中に二人の視線を感じる。


でも、振り返らなかった。


私は中庭を出る。


キャンパスの道に出る。


学生の数が少ない場所だった。


風が少し吹いている。


私は足を止めた。


胸が苦しい。


「……そんなわけない」


小さく呟く。


ポケットからスマホを取り出す。


画面を開く。


写真フォルダ。


サークルの集合写真。


先月の合宿で撮ったものだ。


私はその写真を開く。


そこには。


美咲。


遥。


翔太。


サークルのみんな。


楽しそうに笑っている。


でも。


私は息を止めた。


写真の中央。


私が立っていた場所。


そこだけ。


不自然に空いていた。


まるで。


最初から誰もいなかったみたいに。


私は画面を見つめる。


指が少し震える。


「……嘘」


小さく呟く。


でも。


何度見ても同じだった。


そこにいるはずの私は――


どこにも写っていない。


その時。


スマホの画面が、ほんの一瞬暗くなった。


黒い画面。


そこに自分の顔が映る。


そして。


その背後。


ぼんやりと。


人の影が立っていた。


一つじゃない。


二つ。


三つ。


いくつも。


私はゆっくり振り返る。


誰もいない。


静かなキャンパスの道。


もう一度スマホを見る。


黒い画面。


その中央に、小さな文字が浮かんでいた。


「ひとり」


私は何も言えなかった。


ただ。


胸の奥の違和感が、少しずつ


恐怖に変わり始めていた。


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