表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹の根に転生した俺、 気づいたら世界を支えてた  作者: 天城ハルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/29

第5話 新機能追加のお知らせ(再)

その日は、異常が少なかった。


珍しい、と思った。

ここに来てから、こんな“静かな時間”はほとんどなかったからだ。


世界の流れは安定している。

魔力循環も、数値上は理想的に近い。

地盤の歪みも、水脈の乱れも、今のところ問題ない。


「……やっと一息、か」


もちろん、休めるわけじゃない。

でも、“今すぐ死ぬ案件”がないだけで、随分と楽に感じてしまう。


この感覚に慣れたら終わりだ。

分かっているのに、

それでも少しだけ、気を抜いた。


――その瞬間だった。


上から、“お知らせ”が降ってきた。


〈新規仕様追加のお知らせ〉


嫌な予感が、先に来た。


〈世界活性化を目的とし、

 一部地域に高密度魔力帯を試験導入します〉


「……は?」


一瞬、理解できなかった。


高密度魔力帯。

それが何を意味するか、俺はもう知っている。


魔法効率が上がる。

戦闘力が上がる。

文明は加速する。


そして――

負荷が、爆発的に増える。


〈世界樹による自動調整を前提とします〉

〈試験導入のため、事前告知は行いません〉


「前提、前提って……」


言葉にならない苛立ちが、胸の奥に溜まる。


試験?

誰の身体で?


当然、俺だ。


根の先から、異常が立ち上がり始めるのが分かる。

まだ小さい。

でも、確実に増えていくタイプだ。


高密度魔力帯が形成されると、

周囲の生態系が耐えられない。

地盤は歪み、空間は不安定になる。


しかも――今回は“一部地域”じゃない。


複数箇所。

同時。

しかも、人の多い場所ばかり。


「……最初から、分かってただろ」


これがどうなるか。

俺がどうなるか。


分かっていて、やっている。


根を伸ばす。

補正をかける。

暴走しかけた魔力を、無理やり循環に押し込む。


痛みが、今までとは質が違った。


鋭い、というより――重い。

内側から、じわじわ潰される感じ。


「……っ、くそ」


思考が鈍る。

優先順位が、うまく整理できない。


さっきまで安定していた世界が、

また一気に“危険圏”へ引き戻される。


それでも、止められない。


止めたら、街が吹き飛ぶ。

止めたら、人が死ぬ。


〈想定通りの反応〉

〈世界樹の適応能力は高い〉


通達が、追い打ちをかけてきた。


「……適応、ね」


適応しているのは、世界樹じゃない。

俺だ。


俺が、削れて、耐えて、無理やり合わせているだけだ。


それを、“能力が高い”で済ませる。


前の職場で、よく聞いた言葉が頭をよぎる。


「君はできるから」

「君なら大丈夫だから」

「任せても問題ないから」


その全部が、

逃げるための言葉だった。


「……一回くらい、聞いてくれよ」


誰に向けた願いでもない。

届かないと分かっているから、声にもならない。


魔力帯の形成は、どうにか抑え込んだ。

最低限の被害で済んでいる。


地上では、きっとこう言われるだろう。


「新たな魔力地帯の誕生だ」

「神の加護が濃い土地だ」

「冒険者にとっての楽園だ」


その裏で、俺は。


「……まだ、持つ」


自分に言い聞かせるように、そう思った。


でも、はっきり分かったことがある。


俺がどれだけ頑張っても、

この世界は“余裕がある”と判断される。


余裕があるから、次が来る。

耐えたから、もっと来る。


――これは、終わらない。


その認識が、

静かに、確実に、心を削っていった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ