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世界樹の根に転生した俺、 気づいたら世界を支えてた  作者: 天城ハルト


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第4話 今日も世界は無事だった

異常は、ある日突然、まとめて来る。


それが、この世界の癖らしい。


昼なのか夜なのかも分からない時間帯。

根の奥に、いつもとは違う“重さ”が落ちてきた。


――多重障害。


しかも、連鎖型。


「……やっぱ来たか」


正直、驚きはなかった。

第2話で無茶な仕様を追加した時点で、こうなることは分かっていた。


都市部。

魔力供給炉の出力が不安定になり、周囲の地盤が軋み始めている。

このままいけば、地表が沈む。


同時に、少し離れた場所では水脈が乱れ、

さらにその影響で農地の土壌が崩れかけていた。


一箇所直せば、別の場所が悪化する。

典型的な“後回し案件”の集合体だ。


「優先順位……」


俺は一瞬、迷った。


全部、重要だ。

全部、今すぐ手を入れなければならない。


でも、俺は一人だ。


――いや、“一つ”だ。


「……都市を先にする」


理由は単純だった。

人が多い。

死者が出る可能性が高い。


俺は根を、深く、太く伸ばした。

魔力を集中させ、供給炉の周囲を補強する。


ズン、と、重い痛み。


歯を食いしばる感覚すらないのに、

耐えている、という実感だけがある。


「……持てよ」


誰に向けた言葉でもない。

世界に対してでも、自分に対してでもない。


ただ、耐えるための言葉。


補強が終わると同時に、地盤の軋みが収まった。

都市は、何事もなかったかのように立ち続けている。


次。


すぐに根を引き抜き、水脈へ向けて流れを調整する。

詰まりを解消し、圧を分散させる。


痛みが、遅れて追いかけてくる。


「……っ」


意識が、一瞬だけ遠のいた。


――危ない。


自覚した時には、すでに遅れかけていた。

この世界で、意識が途切れるのは致命的だ。


それでも、手を止めなかった。


農地の土壌が落ち着き、

作物の根が、再び水を吸い始める。


連鎖は、止まった。


世界は、静かになった。


「……終わった、か」


全身が軋む感覚。

疲労が、確実に積み上がっている。


でも――。


俺は、少しだけ、安堵した。


地上を“見る”。


都市では、誰かが無事に仕事を終え、

誰かが市場で笑い、

誰かが「今日は平和だな」と呟いている。


農地では、水を吸った作物が、何事もなかったかのように風に揺れている。


誰も知らない。

さっきまで、世界が崩れかけていたことを。


それでいい。


……いや。


それでもいい。


「今日も、世界は無事だった」


誰にも聞かれない言葉を、俺は確かに思った。


その直後、上から通達が来た。


〈局地的不安定要素、自然収束〉

〈世界樹の安定性、良好〉

〈特記事項なし〉


「……自然、ね」


笑う気力もなかった。


でも、怒りもなかった。


代わりに、

胸の奥に、奇妙な“満足感”があった。


俺がやった。

誰も褒めない。

誰も知らない。


それでも――俺は知っている。


今日、世界が壊れなかった理由を。


「……悪くない」


ほんの一瞬だけ、

自分を誇ってもいい気がした。


この感覚が、いつまで続くかは分からない。

むしろ、続かない気がしている。


でも、今は。


世界は回っている。

誰も死んでいない。

それで、十分だ。


――そう思えた自分が、

少しだけ、怖かった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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