第14話 それでも、支える
異常は、重なっていた。
一つ一つは、致命的じゃない。
放っておけば、いつか壊れる。
でも、今すぐではない。
そういうものばかりだ。
「……全部は、無理だな」
根の奥で、はっきりとそう思った。
第13話で残った傷は、
まだ世界の深部に残っている。
あれを完全に消すには、
今まで以上の負荷を受け入れる必要がある。
――その余裕は、もうない。
俺は、初めて
“優先順位”を意識的に書き換えた。
人がいる場所。
今すぐ死者が出る場所。
連鎖崩壊の起点になり得る場所。
それ以外は、
最低限の補強だけに留める。
完全修復はしない。
先送りにする。
「……ごめんな」
誰に向けた言葉かは、分からない。
世界にか。
それとも、
今まで“全部を守ろうとしていた”自分にか。
異常が、また一つ起きる。
遠隔地。
人のほとんどいない地域だ。
以前なら、
迷わず根を伸ばしていた。
でも、今回は違う。
「……後回しだ」
心臓が、少しだけ強く脈打つ感覚があった。
拒否。
それは、今まで許されていなかった選択だ。
だが、世界は――
すぐには壊れなかった。
異常は、緩やかに進行している。
だが、今すぐ破滅には向かわない。
「……いける、か」
この選択が、
正しいかどうかは分からない。
でも、
全部を抱え込んで壊れるよりは、
まだ、マシだ。
上から、通達が来る。
〈一部地域で、
補正値が基準を下回っています〉
「……そうだろうな」
〈調整を推奨〉
推奨。
命令じゃない。
でも、
従う前提の言葉だ。
俺は、返答しなかった。
初めて、
“即応”をやめた。
数値が、じわじわと下がる。
だが、世界は持ちこたえている。
〈……?〉
上の反応に、
わずかな“間”が生まれる。
「……これでいい」
俺は、根を張り続ける。
支えることは、やめていない。
ただ、
全部を支えるのをやめただけだ。
この選択が、
どんな結果を招くかは分からない。
責められるかもしれない。
失敗と判断されるかもしれない。
それでも――
俺は、これ以上
“壊れる前提”では動かない。
世界は、今日も回っている。
完璧じゃない。
歪みを抱えたまま。
それでも、
今までと同じように見える。
「……これが、俺のやり方だ」
誰に聞かせるでもなく、
そう決めた。
世界のために、
自分を切り捨てるつもりはない。
それでも、
支えることは、やめない。
――ただし、
俺が消えない形で。
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