エルフの森の、バシリスク
おそくなりましたすいません。
誤字などがあれば申し訳ありません。
とてもとても、遠い日の思い出。
夏も陰り、少し涼しくなってきた夕方。
縁側で、祖父が膝に乗せたニワトリを撫でている。
「なあ、アケノ」
庭で、無邪気にアリの行進を踏みつぶしている俺に話しかける祖父。
「このニワトリはな、日本一のニワトリだったんだ」
「にほんいち?」
ところどころ羽根を失い、目に見えて衰えたニワトリを撫でている。
頭から首にかけて灰色の羽を生やし、黒い羽根が身体を覆っている。
その姿は、喪服に身を包んだ白髪の老人。
まるで、自分の死期を待ちわびているかのような弱弱しい姿を見て呆れる。
「うそだよ、じいちゃん。こんなのがにほんいちなわけないよ」
「人はいつか衰えて死ぬ。だが、コイツは死を恐れていない。自分が王であることを諦めてはいないんだ」
祖父の膝から飛び立ち、塀の上に乗る鶏。
ヨロヨロと少し歩くと、不気味な声を上げる。
「そうだ、お前の奏鳴曲をいつまでも聞かせてくれよ」
年老いたニワトリの必死の鳴き声。
生にしがみ付こうとする、もがきのような声。
そんな声を上げるニワトリを見つめる祖父は、どこか満足気だった。
お前が小学校に行けば、コイツの名前を見ることになるよ。
コイツは、その男にソックリなんだ。
結局、そのニワトリが何という名前だったかは今は思い出せない。
今となっては、霞のようにボンヤリとした、遠い日のニワトリとの初めての記憶。
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「すげぇ…こんな巨大な樹木初めて見た…」
ずっと、上を見上げたまま歩き続けている。
森に差し込む光は次第に薄らいでいき、葉の隙間から時々光がスポットライトのように差し込む。
1本1本の木々が、まるで都会のビル群のように太く高く聳え立っている。
根の隙間に張り巡らされた人工的な道を歩いていく。
時々、荷物を抱えた人、空の荷台を引く牛車にすれ違うのはこの先に都市があるのだろう。
「はぁー…乗り物でも借りてくればよかったですわ…」
疲れたというよりは、歩くことに辟易しているルインがため息をつく。
かれこれ半日以上、この森を歩き続けている。
早朝に、オークや村人に見送られてからずいぶんと時間が経った。
早めの朝食と、昼食と、謎のオヤツ休憩をはさんだので大分時間を押しているらしい。
「それにしても、都市に続く道にしては簡素な作りだな」
土を踏み固めただけの路。
辛うじて、舗装したのか所々に看板や柵がある。
「それはそうです、エルフは外界との交流をあまり好みませんの」
「…それにしては、人の往来もあるしギルドもあるんだよな?」
「それは、エルフの都市では幻石が採掘できるからですの」
―――――幻石。
この世界のインフラを支えている、ざっくり言えば便利な石だ。
蛇口にもなり、カセットコンロにもなり、懐中電灯にもなり、扇風機にもなる。
そんなファンタジーにありがちな不思議な石。
「ここ数年、エルフ側が人間との交流を控えてきてますわ。それも急激に」
「国交断絶ってやつか…?…何か良くないことが?」
「さぁ?エルフって寿命がすごく長いんです。突然5年前に話したことを掘り返して来たり、10年前の出来事を昨日のように懐かしんだり。結構めんどうくさいんですの」
「寿命が長いのか…どれぐらい?」
「主に子供に区分されるのが100歳まで、100歳から先が大人で、そのあと平均で200年ほど生きるから…長命になると300年ぐらいですわね」
300年前…日本でいえば、徳川幕府の時代から生きているってか。
ふと、道の先に派手なマントを羽織った男が見える。
数人のいわゆる冒険者を従え、道の真ん中で何か話をしている。
気になるのは、その男の髪の色だ。
ルインの白銀の髪が珍しいのはともかく。
この世界において、髪色はベージュやオレンジ、黄土色、赤…緑髪や青も見たな。
そんな異世界において、異形といわれる黒色の髪。
「もしかして…転生者じゃないか?」
「…あ、本当ですわね!…珍獣が2人も」
「その珍獣扱いを止めてくれ」
徐々にその一団に近づいていくと、黒髪の少年が振り返る。
―――相当に若、13…いや15歳…ぐらいか?
あどけない顔つき、少し丸い顔が成長過程なのを物語る。
気になるのはその見た目だ。
銀と赤色の派手な装飾の鎧に、身体よりも長い剣を背中に背負っている。
まるで王冠のような、頭の装飾。
黒髪を、ワックスでガチガチに固めたかのようなツンツンヘアー。
真っ赤なマントをはためかせる姿は、古のロールプレイングゲームの主人公のようだ。
「おーい、もしかして転生者か?」
手を振り少年に近づく。
突然、少年が背中の大剣を片手で軽々と構えると、剣先をこちらの鼻先に突きつける。
「うおっ!何するんだ!」
「黙れ」
冷たく一言。
「コンピューターが、どうして勝手に喋っているんだ」
「こんぴゅたー?てなんですの?」
「…俺の世界でいうところの、その他って扱いの人物だよ」
かなり古い言い回しなのが気になるが。
少年が剣を背中に戻し、マントを翻すとアケノに詰め寄る。
「貴様は何者だ、この僕に何の用だ」
「あ、いや…同郷のよしみというか…」
一回りも小さい彼に少し気圧される。
「同郷?…僕は、イザナギとイザナミという神の作り出した伝説の国から現れた勇者!貴様のようなNPCと一緒に扱わないでほしい!」
「要するに日本だろ?」
「………僕の名前は女神の祝福を受けた伝説の勇者!風と稲妻を携え舞い降りた漆黒の薄明光線!」
「漆黒なのに光が差し込むのか?」
「………人は僕のことを天地切り裂き稲妻と風の勇者ダイスケ(コントラストリバースリユニオン)と呼ぶ!」
「何回反対って言ってんだ?」
「うるさい!黙れ黙れ黙れ!!」
腕をブンブンと振り回す彼。
彼の周りをふと見ると、冒険者を携えている。
背中に弓を背負った、背丈のひょろ長い青髪の男。
その影に隠れるように、ベージュ色の髪をした1人の女性。
大きな魔法使いのような帽子に、背丈ほどの杖、そして何故か露出の多い服装をしている。
いわゆるビキニアーマーのような姿に、多少の抵抗なのか長い靴下と長い手袋。
彼と同じぐらいの年齢だが顔を伏せ、その顔はどこか浮かない。
「いい趣味してんなダイスケ」
「ダイスケって呼ぶな!この村人A野郎!」
声変わりが完全に終わっていない、少し高い声で彼が叫ぶ。
「なあ、俺もここ最近この世界に落ちてきたんだ。君もかい?」
ふんとそっぽを向くダイスケ。
「驚くなよ、2日前に降りてきてもう何匹もモンスターを倒しているんだ」
「ほー、俺は4日ぐらい前だ。アケノっていうんだよろしくな」
手を差し伸べるが、握手に応じないダイスケ。
「オジサンさぁ」
「オジサンじゃなくてアケノ」
「オジサンは、どんな裏技が使えるの?」
「裏技?」
チート能力って言いたいのか?
「オジサンも女神にお願いして裏技手に入れたんでしょ?」
「あー…俺は…」
「そうなんです!アケノさんはすごいんですよ!」
と、ルインが会話に割って入ってくる。
あまりの身長差に思わず身を引いてしまうダイスケ。
「へ、へえー!どんな裏技なの?」
「ニワトリがたくさん出せますわ!」
エッヘンと自信満々に答えるルイン。
一瞬静寂が訪れると、ダイスケと取り巻きが大声で笑いだす。
「ニワトリって…!なんの取り柄にもならないじゃん!オジサン本当に?」
それは、俺自身もそう思ってます。
と言いたいがぐっとこらえる。
「僕はね、雷と風の魔法が使えて、音速で剣が振り回せて、相手の動きがスローに見える目を持っていて、すべての状態異常にかからなくて、無限の体力と無限の魔力を手に入れたんだ!」
自分の身長と同じぐらいの長さの剣を、軽々と片手で持ち上げる。
「どう、おまけにレベルもカンストしているんだよ」
なるほど、あどけない見た目にそぐわず剣を簡単に構えられるのはそのためか。
「あの気難しい女神から、よくそんなに頂戴したな」
「気難しい?とんでもない、女神様は最高の人だよ!」
相当機嫌がよかったんだろうな…。
「ところでさ、そこの大きいお姉ちゃん」
ルインを指さす。
「はい、何でしょうか?」
「お姉ちゃんも僕の恋人になってよ」
「……………………………はい?」
笑顔のまま固まるルイン。
「僕はね、今からエルフの森に行って美人に囲まれて暮らす予定なんだ!」
薄着の少女の腕を乱暴に引っ張る。
「コイツも、他のパーティから引き抜いたんだ!」
「なんですって?」「なんだと?」
顔を伏せる少女。
「だって、コイツのパーティが俺を見て笑うんだもん。ボコボコにしたら、コイツ『私を好きにしていいですから』って泣いてきやがってさ!ご希望通り、好きにしているんだよ」
少女の身体を撫でまわすダイスケ。
どうやら、自分の意志でそんな恰好をしているわけではないのは確かなようだ。
「お姉さんもさ、そんなクタクタのオジサンと一緒に居ないで僕と一緒に行こうよ」
「オジサンですって…?」
ミシッと空気が張り詰める音がする。
「…おい、ルイン止せよ?俺はいいからさ」
ギロリとアケノを睨みつける。
「今僕はさ、お姉ちゃんと話してるんだよ…少し黙ってろよ」
ムスッとした顔で、仕方なく2人を眺める。
「お姉ちゃん、名前は?」
「私ですか?私は、ルインといいます。冒険者ギルドの傭兵団に所属していて」
「肩書はいいよ、スリーサイズは?彼氏はいるの?」
額にビキイッと血管が浮きながらも、営業スマイルを崩さないルイン。
「あのね僕、お姉さんはね先を急いでいるの。貴方に構っていられないの」
「お姉ちゃんオッパイ大きいよね!触ってみたいなあ!」
周辺の木々から鳥が一斉に飛び立つ。
張りつめすぎた空気でバキッと、木が割れる音がする。
「お、おい!あんまりコイツを茶化すなよ…!」
周囲の空気が重くなっているのを感じる。
これは間違いない。
ルインが、怒っている。
「いいじゃん、僕強いよ!絶対この世界の”伝説の勇者”として崇められるようになるからさあ」
ルインの足をなれなれしく触っている。
「ねえ、姉ちゃんはこのオジサンの何なの?恋人?」
「えっ?!!!」
怒りの糸が切れたルインがビクンと跳ねる。
「ち、違いますよ!私はアケノさんの付き添い!彼に依頼されて一緒に旅をしているの!」
顔を真っ赤にしてブンブンと手を振って必死に否定するルイン。
まあ、これだけ年齢差があれば変な感情は芽生えないわな。
「じゃあいいじゃん、オジサンと一緒なんてやめて僕と一緒に行こうよ」
手持無沙汰のように、女の子の肩をなれなれしく触るダイスケ。
目を伏せ、身体を小さく震わせる少女。
頭にカッと血が上る。
ダイスケに近寄ると、その手を強く叩く。
「…よせよ!お前みたいな奴が転生者の評価を落としているんだろ」
「………なにすんだよオジサン」
取り巻きの青髪の男が、すぐさまアケノの前に立ちふさがる。
腕の中のニワトリに緊張が伝わったのか、忙しく辺りを見回し始める。
「オジサンさあ、聞いてなかったの?僕最強だよ?勝てる?そんなニワトリで」
「……その女の子を奪ったように、この場で俺を倒してルインを奪うか?」
「そうするって言ったらどうする?」
無邪気に笑うダイスケ。
どうやら、大人のきついお仕置きが必要なようだな。
「大人を怒らせると怖いことを思い知らせてやるよ」
「いいのかなオジサン、この世界では『死は覆せない』んだよ~」
ニヤニヤと笑うダイスケ。
「僕知ってるんだ、テレビゲームと違ってこの世界には蘇生手段が無いんだよ?オジサン大丈夫?僕の剣で刺されたら死んじゃうんだよ~?」
「やってみるか?ただで済まねえぞ?」
ルインのほうをチラリと見る。
薄着の少女を庇いながら、こちらを心配そうに見ている。
「とにかくこれだけは言ってやる。ルインは俺のパートナーだ、渡さねえぞ」
ダイスケの背中から剣が抜かれる。
「お腹刺されて痛いよーって、泣いても知らないよオジサン。ここでバッドエンドだねえ!」
取り巻きと一緒にヘラヘラと笑い始める。
ドッドッドッドッ
…草の奥から、何かが大地を蹴る音がする。
『ゴエーッ!』というバグパイプのような太い鳴き声。
次の瞬間、一触即発の2人の前に巨大な鳥が現れた。
「「「ウワーッ!?バシリスクだあああーーーーーッ!!!」」」
ルインと、青髪の男と、薄着の少女がとてつもない声で一斉に叫ぶ。
転生者組のダイスケと、アケノはその場に固まる。
ボリスブラウン…いわゆる卵を産む用の茶色いニワトリの身体。
ただし、その体高はあまりにも大きい。
頭の高さで比較すれば、ダチョウほどの大きさがある。
茶色の体毛に覆われているが不思議なのはその下半身だ。
まるで恐竜図鑑に載っているティラノサウルスそのものだ。
首から下、腕から下は緑色のトカゲの身体で、尾も太く長い。
鶏冠が小さい、もしニワトリと一緒ならコイツはメスか?
「えっ!ニワトリ居るじゃん!?」
ルインに振り返ると、今まで見たことのない形相で駆け寄ってくる。
首根っこを掴むと、ルインはすさまじいスピードでバシリスクと呼ばれた鳥から距離を離す。
「首が締まる!首が締まるって!」
「アケノさんあれはマズいです!本当に!!」
振り返りもせず凄まじいスピードで距離を離すルイン。
「はははは、オジサン逃げるの?情けないなぁー」
ダイスケが振り返ると、青髪の男と薄着の少女も必死の形相で逃げ始める。
「おいおいおい、何を慌ててるんだよこんな鳥一匹」
『ゴエーーッ!』と不気味な雄たけびを上げるバシリスク。
「やれやれ…また低レベルモンスターだよ。僕を満足させるモンスターは居ないのかねぇ」
背中の剣を構えるダイスケ。
―――――一瞬、稲妻が迸った。
次の瞬間、切り落とされたバシリスクの首が宙を舞っていた。
マントを靡かせ、その場で剣をグルグルと回す。
叫ぶ間もなく、バシリスクの身体が地面にドサリと横たわった。
「…すげぇ」
女神の加護があると、これほどまでに強くなれるのか。
ほかの冒険者が太刀打ちできなかったのも、女の子が泣いて懇願したのもわかる。
この少年の強さは本物だ。
アケノのほうを見て、ニヤリと笑う。
「わかった?オジサン。僕に歯向かうとこうなっちゃうんだよ?」
剣を振り回しながら、アケノに近づいてくる。
「今なら、謝ったら許すよ?そこに土下座してよオジサン」
「……ちょっと待った」
「何?命乞い?」
ケタケタと笑い始めるダイスケ。
「なあ、今のモンスターがもしニワトリモチーフならコイツらは群れで動くんじゃないのか?」
ルインや青髪の男に振り替える。
現地民の3人は、顔を縦に振っている。
「そうです、今の咆哮がもし周りに聞かれていたら…!」
ルインがハッとした顔で辺りを見回す。
―――草が、揺れている。
ドス…ドス…と鈍い足音が聞こえてくる。
「アケノさん…、すぐに逃げましょう」
ルインが声のトーンを落とし、警戒した面持ちでつぶやく。
「そんなに強いモンスターなのか?バシリスクって」
静かに頷くルイン。
「アイツらは、『眼を見た相手を石化』させるんです」
「……眼…石化?」
「はい、かなり接近を許さなければ大丈夫なのですが、およそ1m以内に近づかれると全身を石化させられるんです」
…RPGにあまり詳しくない俺でもわかる。
いわゆるメデューサのような特性を持ったモンスターなのだろう。
「あはははっあはははは」
と、無邪気な笑い声が響き渡る。
「何を怯えているんだい?僕は女神さまから『どんな状態異常にもかからない』加護を受けているんだよ!石化がなんだよ」
「大声を出さないでください!とにかくこの場から逃げたほうが…!」
「はいはい、全部僕が倒せばいいんだろ?」
ワックスで固められたようなトゲトゲ頭をサッと手で掻く。
「お姉ちゃんはそこで見てなよ、僕の強さを。きっと僕にメロメロになっちゃうよ」
だって、今からこの作品のタイトルは
【☨異世界転生無双☨雷鳴轟く大剣士は、1000人の美女に求愛されながら世界を救う勇者になる】
に変わるんだから。
草の陰から再びバシリスクが現れる。
再び身体を紫色に帯電させると、剣を構える。
「何匹襲い掛かってきても無駄無駄」
ガサッとさらにもう1匹現れる。
趾を大きく広げ、翼を羽ばたかせながら飛び掛かっていく。
残念でした、僕の目にはすべてがスローに見えているよ。
飛びかかってきた1匹をあっという間に切り捨てる。
と、最初の一匹がすでにダイスケの傍まで駆け寄っていた。
周囲が真っ白く発光する。
「アケノさん、目を閉じて!」
数十メートルは離れているにも関わらず、まるで写真のストロボを炊いたかのような凄まじい閃光。
ハッと顔を上げると、そこには『大剣を構えた石像』が立っていた。
「えっ…?!…なあ、あれって!?」
ルインを見ると、悲しげに目を伏せる。
「あれが…石化ですわ。石化は残念ながら状態異常ではなく『死の概念』なのです…」
そういえば、彼自身が言っていた。
この世界では『死は覆せない』
「……何がチート能力だあの女神の野郎…!」
女神に対する怒りが、また湧き上がる。
それにしても先ほどまでいがみ合っていたいた相手とはいえ、一瞬で石化してしまった無残な姿に胸が痛む。
「アケノさん、とにかく逃げましょう」
「あ…ああ!でもどこに!」
「とにかく今来た道を戻りましょう!バシリスクは縄張りを持っていて、その圏外から出れば追ってきません!」
「きゃあっ」と小さい悲鳴が聞こえる。
薄着の女の子が、バシリスクに狙われ距離を詰められ始めている。
「ルイン!あの子が!」
「でも…!近づいたら私たちまで!」
何か、こちらに引き寄せられれば…!
と、オークに設えてもらった皮の袋を開く。
長いロープが1本。
咄嗟に思いつき、自分の履いていた靴を脱ぎ、靴紐とロープを結び付ける。
「ルイン!この靴を、思いっきりあの子に投げつけろ!」
「わかりましたわ!」
まるでプロ野球選手のボールのように、放物線を描かず真っすぐに飛んでいく靴。
女の子の身体に当たると、ロープがうまく身体に巻き付く。
ルインがそのままグッと引っ張ると、女の子は数メートル上に飛び上がりながらこちらに飛んでくる。
すかさずルインがキャッチすると、2人で元来た道を必死に走る。
「おおい!俺もたすけてくれよぉ!」と青髪の男の情けない声がする。
…許せ、俺をダイスケと一緒に嘲笑したお前に罪がある。
申し訳なさように目を伏せ、靴下のまま道を走る。
まるで、ショーケースのマネキンのようにルインに抱きかかえられる少女と目があう。
「大丈夫か!」
自分の身に起きたことが信じられないような表情で、首をひたすら縦に振る。
「バシリスクは…!?」
振り返る。
青髪の男には目もくれず、1匹のバシリスクがコチラに走ってきていた。
「「なんで?!」」
ルインと一緒に驚きの声を上げる。
青髪の男も「なんで俺は襲われなかったんだ?」と言った表情で見ている。
「と、とにかく縄張りから脱出しますわよ!」
「お、おう!」
―――――――――――――――つづく




