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目的の変容

空が引き受けた「密猟者排除」の任務は、表面上、雪月流の武の誇りを損なわない、極めて正当な任務に見えた。



空は、無能力者というFランクの制約から解き放たれ、夜間の闇の中で脇差一本で活動を開始した。



空は、黎明の月のネットワークが提供する精度の高い情報(密猟者グループの正確な位置、人数、能力レベル)に基づき、雪月流の戦術を効率的に最適化していった。



彼の「気」の制御は、純粋な武の探求のためではなく、「SSランクのシステムに検知されないための秘匿技術」として、そして「闇の任務を遂行するための暴力」として、機能的に最適化され始めていた。



戦闘の効率を極限まで高め、密猟者グループの構成員を一撃で無力化し、制圧していった。



雪月流の教えには「無益な殺生は避ける」という厳格な戒律があったが、「負債完済のため」、「秩序の維持のため」という大義名分を自分自身に与え、密猟者たちを「制圧」し、時には回復が困難なほどの致命傷を負わせることもあった。



彼の「気」の集中は、もはや己の武の完成を目的とするものではなく、「いかに早く、確実に、次の担保となる素材を確保するか」という経済的な目的に奉仕し始めていた。



戦闘の度に自分の武術が、流派の教えから少しずつ逸脱していることに薄々気づいていたが、流派の負債という現実の重圧が、彼の内なる葛藤を抑圧し続けていた。



(俺は、正しいことをしているはずだ。彼らはダンジョンの生態系を破壊する悪党だ。この武は、流派を救うための正当な手段だ——)



そう自分に言い聞かせたが、戦闘後の脇差に残る血の感触は、武の純粋さが現実の泥に塗れていることを示していた。



流派の誇りを守るために選んだ道が、皮肉にも流派の武を汚しているという、抜き差しならない矛盾が空の心に生じ始めていた。

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