新たな闇の舞台
カードの向こう側の男は、一瞬の、しかし重い沈黙の後、歓喜と畏怖が混じった声で答えた。
その声は、空の提案の規格外の価値と、空の要求する対等な関係を受け入れることを示唆していた。
「…ハハッ!素晴らしい。あなたの能力と判断力、そしてその切迫した目的は、我々にとって非常に魅力的な変数だ。ご提案、了承しましょう。あなたの流派の負債は、トロールの魔石の売却益と、あなたの今後の働きを担保として、我々が速やかに肩代わりする。ただし、あなたの言う通り、青柳雫という非論理的な変数の存在を考慮すれば、このままFランクとして活動するのは危険すぎる。あなたの力は、学園の表舞台ではなく、我々の管理下で、より巧妙に運用される必要がある。次の任務は、学園の監視の目を嘲笑い、あなたの力を最大限に活かす、新たな領域での活動となるでしょう」
カードの光が消えるのを確認し、深く息を吐いた。
彼の心には、流派の負債という重荷が現実的に軽減されたことへの安堵と、闇の組織との危険な協力関係が成立したことへの新たな重圧が同時にのしかかっていた。
能力者の秩序と、闇の組織という二つの巨大な力に対し、個の武術という第三の道を切り開き、彼は次の戦場を静かに見定めていた。
負債の解消という至上の目的のため、彼は最も危険な「テコ」を手に入れたのだ。
空は、雪月流の秘匿と流派の再興という唯一の光を求めて、闇の舞台へと足を踏み入れたのだった。




