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内なる炎

深夜の低層ダンジョンを、自己の限界を引き出す修練場へと変えた。



通路の奥で、ロック・バットの群れを相手に、「気」の完全な拡散と収束の訓練を行った。



まず、全身の「気」を拡散させて周囲の魔力と完全に同化し、魔物はおろか、魔力感知に長けた能力者の感知範囲からも自らの存在を完全に消す。



この極限の隠密性を達成した後、魔物が最も警戒を解いた極限の瞬間に、一気に「気」を収束して「月光一刀」を放つ。

この訓練は、能力者パーティの幾重にも張り巡らされた複雑な防御網を、「無」の状態から「有」の一撃で突破するための、絶対的な「一点突破」の戦術を確立するためのものだった。




己の肉体が激しい痛みに悲鳴を上げ、喉が血の味を訴えても、この絶対的な速度と精度の追求を止めなかった。

彼は、自分の武術家としての本能と、論理的な分析の融合に、抑えきれない興奮を感じていた。



上級生たちの完璧な連携は、もはや彼に不安をもたらすものではなく、武術家としての最大の挑戦、乗り越えるべき巨大な標的を与えてくれたのだ。



この巨大な能力者社会のシステムを、たった一人の武術で破壊し、雪月流の価値を世界に認めさせる。

その反骨の炎が、空の心の中で激情となって燃え上がっていた。



空にとって、この極限への挑戦こそが、黎明の月の甘言に屈せず、雪月流の誇りを守る唯一の道だった。



彼は、自身の肉体と技術の限界を知り、それを超えることが、「能力」という不平等を打ち破る鍵だと確信していた。

彼は、数日間の暗躍を経て、自身が求める「証明」に必要な強敵を、低層ダンジョンで探し始めていた。

それは、能力者の領域に踏み込み、組織力では決して到達できない個の絶対的な力を示す機会への、武術家としての切望だった。



能力者社会への反逆ではなく、武の証明という形で、自らの月光を世界に刻み込む決意を固めていた。

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