隠された秘密の暴露
（何者だ…？なぜ、雪月流を…！この男は、俺をどこまで知っている？祖父を狙う連中か、それとも…！）
空の戦闘的な緊張が最高潮に達し、彼の右手が脇差の柄を深く握り込んだ。
彼は、全身をわずかに傾け、いつでも即座に抜刀できる体勢を取ったが、男の不気味な静寂がそれを躊躇させた。
「あなたは……どちら様ですか」空の声は、抑えきれない警戒心と、内面的な動揺を隠すために、低く響いた。
「私は、『黎明の月』という組織の者だ。挨拶はそこまででいい。我々は、能力者社会の不平等な階級構造を根本から破壊することを目指している」
男は、空のFランクの腕章と、雑務で汚れた作業服を、まるで証拠品でも調べるかのように、再び冷酷に一瞥した。
「君は、この世界から徹底的に価値を否定された存在だ。他の生徒が放つ能力や魔法という名の太陽の光が強すぎて、君の存在は影にされてしまった。彼らは君の努力の上に立ち、君の報酬の数千倍を稼ぐ。この不公平なシステムを、君は心底から受け入れているのか？」
男の言葉は、空が日々感じている屈辱と怒りを、最も不愉快な形で突きつけた。空の心臓がドクンと鳴る。
彼は、この男の言葉が真実であることに、強い嫌悪感を覚えた。
（この男に、俺の屈辱を安易に利用されることが、何よりも不愉快だ）
「我々は知っている。君の流派、雪月流が持つ『無魔の体術』の真価を。その力は、能力者協会の計測機器では捉えられない。それは、能力者の力を打ち消す。この世界にとって、それは究極の異物だ」
男は、ゆっくりと空に近づいた。
その一歩一歩が、空のテリトリーを侵犯する不快な音のように感じられた。
彼は、空の脇差の柄から手を離させるために、一枚の黒いカードを差し出した。
カードの表面には、月と逆向きの三日月のような紋様が刻まれている。
そのデザインは、能力者社会の「光」に対する、「闇」からの挑戦状のようだった。
